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今日は◯◯酒#1 昭和レトロ酒(東武練馬/北町楽天地)

昨夜遅くに職場の後輩から

昭和の面影を残すレトロな酒場を見つけたよ!と

とあるブログのURLのリンクを添えてLINEが来た。

見てみると、そこはなんとバリバリの地元。

と言っても、社会人になってからはほぼ近寄らなくなってしまい、

どこか記憶の遠くにあるような

『思い出の街』

になってしまったのがここ東武練馬界隈で、

かれこれ20年ぶりになるだろうか。。。

久しぶりに訪れてみたくなった。


今日はたまたま非常勤のバイトの日で14時には終わる。

バイト先からちょっと回り道をすれば通り掛かる場所なので寄ってみると、

確かにそこには、20年前の『あの時』のままの姿を残していた。



当時はそこの固有名称がわからなかったけど、

正確には『北町楽天地』と呼ばれるらしい。

ネーミングセンスがもう完全に昭和だ。。。




路地の全てがセピア色で、

例えるならば

静岡おでんを2週間ぐらい煮詰めたら

鍋の底からこんな色の大根とはんぺんが出てくるんじゃなかろうか?

と言った色彩の路地。



路地の裏側




時刻はまだ14時半。

まだ陽が明るいので路地の全貌がつかめたものの、

どの店もまだ空いてない。

なんとなくスナック系のお店が多い雰囲気。。。

こうなってくると、

陽が暮れてからの雰囲気も見てみたい。

とりあえず一旦帰宅し、夕暮れを狙って再訪することにした。。。







日もとっぷりと暮れた夕方18時頃。

10軒ほど飲み屋が並ぶ路地だが、

どうやら開いてるのは2軒だけ。。。

暗闇の中、ほわーっと灯る看板の明かりだけがこの路地の街灯となる。





昼間とはまた違う表情に変わり

ここはもう完全に異世界。

振り返れば商店街の賑わいが聞こえてくるのに、

この路地だけは無音だ。

そのコントラストが凄まじく、

俗世間から突然切り離された感じがたまらない。

開いてる店を確認してみると、スナック系のお店しか見当たらない。




僕はこの手のお店にはあまりご縁が無く、

1人での潜入はどうしても尻込みしてしまうので、

この雰囲気だけでもとスマホで撮影しながらウロウロしてると、

これから店を開けようと扉の外にフラっと出てきたママさんと鉢合わせになる。。。

こう言った場合、スマホをかざしてウロウロしてる輩なんて

不審者とまでは言わなくても、あまりいい印象は持たれないので

必ずこちらから先に挨拶をして声をかけるようにしている。



『こんばんわー』

『ここの路地は雰囲気ありますねぇ〜』



『そうねぇ、、、ボロいだけよ。』



『いえいえ、そんなことないですよ!』

『今からお店開けるんですか?』



『う〜ん、開けると言えば開けるし、別にやらなくてもいいし、、、』



なんとなく警戒されている様子があるが、

ここは思い切って


『一杯飲めますか?』



と聞くと、



『いいわよ、、、お入んなさい』



と案内された。

まるで異世界の住人に認められたような不思議な感覚で、恐る恐る扉をくぐる。。。

暗い路地の寂しい看板灯ではわからなかったが、

店内でママさんを確認すると

おそらく70代で自分の母親と変わらない世代の方と見受ける。

なんとなく予想はしてたので驚きはしなかったが、

気になるのは『一杯のお値段』のほう。

普段から『安い・早い・ウマイ』をモットーとした

牛丼屋のキャッチコピーみたいな飲み歩き方しかしないので、

この手の業種形態は緊張が走る。

まぁ一杯ぐらいならそんな高くないだろうと思い、

ウーロンハイを頂きながら色々話を聞いてみる。




『この建物は50年間前に建てられたものでねぇ』


『25年前からココで店を始めて、その前はラーメン屋だったのよ』


などなど、この異世界の歴史を伺うことができた。

程なくして常連と思われる1組が入店し、

そちらの相手をとママさんが移動する。

ここでようやくフリーとなり、

なんとなく店内観察をしてみる。




2mぐらいしかない低い天井、

やたらとカラフルな壁紙、

昔ながらのカラオケセットに

赤い丸椅子と微妙に色調があってない赤い絨毯。

『ザ・場末のスナック』といった所だろうか。

キョロキョロとまわりを見回していると、

突然ママさんが店の外へと出て行ってしまう。

看板の電気でも点けに行ったのかな?

そう思ってたが

5分経っても戻って来ない。。。

そろそろ10分が経とうとしたとき、

ママさんがどこからか焼きギョウザを2枚持って帰ってきた。

1枚は常連さんのテーブルに、

そしてもう1枚が自分の目の前に置かれ、


『コレ、あちらの方からよ』

『アンタ、ラッキーね♪』


と微笑む。



初対面でまだロクに会話もしてない常連さんに

いきなりギョウザをご馳走になってしまったのだ。

恐縮しながらお礼をすると、


『お兄ちゃん、ここ初めてだろ?ゆっくりしてきなよ』


と、その温かいお言葉に感動すら覚える。

自分が思う常連さんというのは、


『おい、お兄ちゃん、そこはオレの席よ、どきな!』


みたいに新参者を嫌うもんだと思ってたが、

この常連さん、めちゃめちゃ優しいじゃないですか。。。





最初のウーロンハイがもう無くなったので、

ギョウザとの対戦相手にウイスキーのロックを注文すると、


『これもう残り少ないから全部あげるわよ』と、


おそらく通常の4倍量にもなりそうなウイスキーを

ロックグラスになみなみと注ぎ込む。




ママさん、めちゃめちゃテキトーじゃないですか。。。

ギョウザをつまみながら、常連さんの武勇伝的なのをありがたく聴いていると、

気分を良くしたのか


『ママ、このお兄ちゃんにもう一杯あげて〜!!』


と、まだまだ飲みかけのロックグラスがあるのに

その横にウーロンハイが並べられる。。。

この店の人たち、めちゃめちゃ飲ませてくるじゃないですか。。。

なんやかんやでさらにもう一杯ご馳走になり、

誰のご馳走なのかわからないが漬物までいただき、

時計の針が20時を示したタイミングで

ママさんにお会計を願う。

なんだかかなり飲んだけど、いったいおいくらなんだろうか、、、




気になるそのお会計は、、、






なんと2000円♪




やすっ!





細かなシステムはわからないけど、


・ウーロンハイ
・ウイスキーロック(メガ盛りw)
・お通しor席料


で2000円なら

その辺の居酒屋とそんなに変わらないんじゃないだろうか。

むしろ、常連さんやママさんの温かい人情がなによりのツマミで、プライスレス!
  

『お兄ちゃん、またこの店きてあげてよー!』


と、常連さんの言葉を背に受けながら店を出る。




すると今までの賑わいがうそのように

しんと静まりかえっている。








暗く寂しく、煮詰まったおでんのような景色。

そう言えば暗闇の中を看板の明かりだけを頼りに潜り込んで来たんだっけか。。。

その路地を背に、表通りに近づくにつれ

煌々と照らされた商店街の明かりの中から

自転車のブレーキ音や車のクラクションなど

聴き慣れたノイズが聞こえてくる。



異世界から現実に戻ってきた。。。



今から52年前に月面に着陸し、

長い時間をかけて地球に戻ってきたアームストロング船長と同じ熱量で

かつ、静かにこう言いたい。


 




『ただいま』と。





遠くに行くだけが旅じゃない。

新幹線に乗らなくても、

飛行機に乗らなくても、

宇宙旅行なみの『ただいま』が言えるような小さな旅が、こんな身近にあるもんだ。

時代から置き去りにされたような

こんな昭和の忘れ形見のような風景を

これからも心に焼き付けて行きたいと思う。
  








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