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#32.ムードメーカー

娘夫婦との同居。これは本人が望んだものではなく、一人暮らしが不安だったからと娘の希望。
住み慣れた街を離れ、認知症も進んだ。

役割を失い、ただぼぉーっとテレビを見て寝てを繰り返す毎日。唯一の楽しみはひ孫とラインを楽しむこと。昔から機械いじりが趣味で新しいものにも目がないためライン操作もなんとか行えている。

しかし、ラインのやりすぎでひ孫にもけむたがられてしまい、メッセージを送って良い時間制限を設けられてしまった。

はぁ~~。95歳になり、いよいよ終い支度を始めようか。

そんな折に、ひ孫が遊びに来てくれると朗報が入る。家族揃っての食事も久しぶりだ。ひ孫はまだ小学生。ワーキャーいいながら遊びに夢中だ。そんな光景を眺めるのが私は大好きだ。もうこんな光景が見れるのも今年が最後かもしれない。

ふと、ひ孫がババ抜きに誘ってきた。久しぶりの対決。負けるわけにはいかない。必死にジョーカーを悟られないようにポーカーフェイスを繰り出すが、あっという間に最後の一枚。見事な完敗。
どうやら、相手から引いたカードをそのまま手元に追加するので、それを取ればジョーカーは引かないよと痛恨のミスまでさらけ出してしまった。

でも、その一戦に私が参加したことで、そこからは家族みんなの戦いが始まった。私の役割は、日常的には少なくなってしまったのかもしれない。でも、こうして自ら関わり合おうという気持ちと笑顔さえ持っていれば、最年長の私にしかできない雰囲気づくりができる。


まだもう少し。私がババ抜きでひ孫に勝つまでは。

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