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#23.されどあるくこと
リハビリの現場ではよく外歩きが提案される。読んで字のごとく“ただ外を歩くだけ”の練習だ。
私は病院勤務時代はこの練習に否定的だった。ただ歩くだけなら誰でもできる。セラピストと患者が楽しそうに歩いている姿をリハビリ室から眺めながら自分にはもっと効果的な運動ができる、そう思っていた。
もちろん歩くことの身体への影響は図りしえない。多くの論文でもこのことは証明されているし、だからこそ健康寿命を伸ばすためには歩くことが推奨されている。
時は10年が経ち、今私は在宅リハビリというフィールドに立っている。ここでは、病院のように毎日セラピストがリハビリをしてくれる環境なんてものはない。生活の中で外に出ることができない方も沢山いる。もはや歩くことが特別なイベントになっているのだ。週一回の訪問に伺うと満面の笑みを浮かべながら
「今日は雨降ってないわよね。外に行きましょう!」
まるで、子供の頃の遠足を待ちわびていたかのようにハイトーンな声で話す。
今私は利用者と外を楽しみながら歩いている。
移りゆく四季をともに眺め、押し寄せる温度差をともに感じ、何気ない日常の一場面をともに意識することへの効果を感じながら。
※この物語はフィクションを含みます
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