リストカットシンデレラ22
割引あり
何ていえばいい?
私は友達に恵まれている。優、五月ちゃん、楓ちゃん、鶴見、時枝にもカミングアウトした。
「別にいいんじゃん。だってさ、好きになっちゃったもんはどうにもできないしさ、何が悪いん?」
時枝はサッパリ。確かに人に話したら楽になった。自分がレズって事を隠してた時より、心の底にある錘が軽くなったような気がする。自傷の癖はいまだに抜けないけど。
家族は相変わらずゴタゴタしい。奈々は母に何も話さない。話せない。私のところに泊まるのでさえ、一苦労だ。
「お母さんに、泊まるって言ったの?」
「まだ」
「早く言わないと、また怒られるよ」
「なんて言えばいい?」
「泊まるって言えばいいじゃん」
「ダメって言われたらどうしよう」
「そしたら帰ればいいんでしょ」
「そうだよね。洗濯物は干したし、やることやったし。よし!電話するか!」
「大袈裟だな」
「もしもし、お母さん。カイちゃん家に泊まるから」
ーー。
「うん、うん、わかった」
ピッ。
「なんだって?」
奈々は半ベソをかいている。
「ダメだって」
「なんで?」
「なんか、さっき一緒にいる時になんで言わなかったのかって。あんたはいつもそうなんだからって。帰ってくるなって怒ってる」
「あーあ、面倒くさい。だからさっき言っちゃえばよかったんだよ」
「だって、なんか言いづらいんだもん」
いつもそう。私が奈々を迎えに行くと、奈々は母に泊まることを言ってなくて私の家に来てから言う。
母も母で奈々が泊まるのをわかってて、何も聞かずに奈々が言うのを待っている。常に試しているんだ。私にしてみれば実にくだらない。あぁダルイ。
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