未来断捨離 / 毎週ショートショートnote

「捨てちゃお。」
未来断捨離の蓋を開けポイと投げ込む。
仕組みはよく分からないが、分子レベルに分解され再生工場へ転送されるらしい。収集日も時間も関係なく分別もしなくていい。企業はリサイクルの負担削減でコストを下げ、捨てる罪悪感が無くなった人々は購買意欲が上がり、ゴミ問題で悩んでいた時代が嘘みたいに好景気だ。
相変わらず暑すぎる天候も最新のクーラーに買い替えたらいい。去年のクーラーなんて未来断捨離にポイ、だ。

「自分達の過去へ転送されているとも知らず、どんどん捨てているな。」
白く長い耳を撫で、もう青くない地球を眺める。
「環境悪化が早まり間も無く地球は自滅する。その時こそ我々月が第三惑星として名乗りをあげるのだ。」

「ゴミじゃない！宇宙人の仕業だ！」
ゴミ屋敷で叫ぶ男を見ないように人々は通り過ぎてゆく。
「くそっ、誰も信じない。」
男は送られてきた未来の物質を解体し月転送装置を作り始める。
地球の未来は一人の男の手に委ねられた。

#未来断捨離
#毎週ショートショートnote