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ばあば、ハックルから手紙をもらって嬉しくてジャンプした、よね?


 うちで一番古い絵本は、Richard Scarryスキャリーおじさんの絵本のシリーズのなかの1冊である。猫やウサギたちが登場する、英語の絵本だ。

 スキャリーおじさんの絵本のシリーズは、日本でも翻訳版として何度か出版されている。もちろん今でもネット経由で気軽に洋書を購入することもできる。
 動物たちの暮らす、ビジータウンが舞台となり、図鑑的なものが有名だが、お話が添えられているものもある。

 覚えている絵が、郵便の流れを説明するページ。
 孫からの手紙をもらい、ジャンプして喜んでいる祖母ネコの絵。
しりもちをついているように見えたのだが、よく見るとジャンプして、浮かんでるみたい。影も描かれている。

 いつか自分も、嬉しくてジャンプをついたり、しりもちをつくくらい嬉しい手紙をもらうことがあるのかもしれないと思ったものだ。そんな時がきたら、この絵を思い出すのだろう。数十年経っても、まだそんな機会には恵まれていない。

 私の祖母は、たくさんいた孫からの手紙や絵を、茶箪笥のガラスに貼りつけて、よく見えるようにしていた。”ふぎゃ”と驚いたり、ジャンプをしたりしなかった。


BEST WORDBOOK EVER more than 1400 objects Goldenpress刊


 奥付の表記の仕方がはっきりしてなくて、詳細不明なのだが、コピーライトは1963年(に、初版? 私が持っているのはそこからの重版?)なんと、久しぶりにひらいて今日知ったのだが、Printed in Japanと書いてある!! 
 日本で印刷され(製本も日本なのかなあ。表紙のボール紙も剥がれないし、かがり糸も今もしっかりしている。すごいぞ日本の製本業、印刷業!)、アメリカから逆輸入されたものを、東京の洋書屋で販売していたようだ。
 気まぐれで父が洋書絵本を買ってくれたものの、一度ちょこっと読んでくれたあとは、読んでもらえなかった。今なら、英語を読むのが面倒くさかったのだ、とわかる。
 でも、本は一人で読むものなのだ、と思い込んでいた。しかしなんて書いてあるかわからないな、小学生の自分は誰にも聞けずに黙って絵を見ていた。

 スーパーマーケット、病院、学校…… 簡単な説明の文章と、そこで使う道具の絵と単語。事典のようなスタイルだった。ページを開いて、ちょっと昔の外国の様子はこんな具合なんだ、と想像した。当時すでにレトロな感じが醸し出されていた。
 いまも、キューバあたりに、こんな町があるかもしれない。あったら、読者みんなのふるさとだ。

 中高校生になって、英語の授業が始まり、語彙力を増やしたいときに何度か開いたが、英語が得意になる訳でもなく、まあまあきれいに残っていた。
そして、引っ越すたびに、必ず箱に入れ、新しい本棚に並べられた。きれいだったので。


CARS and TRUCKS and THINGS THAT GO Goldenpress刊

 スキャリーおじさんの世界との再会は、このシリーズの日本語版だった。
 当時、乗り物が好きだった子どもが図書館で見つけた。早速借りると、乗り物好きにはたまらない要素がつまっている。
 そして、”ああ、その本なら、うちにもあるよ、”と古いあの本を出すと、スキャリーおじさんの本は、読み聞かせ絵本軍へ即レギュラー入りした。そう、一緒に見よう、と持ってくるのだ。読んで、と言われて、自分は読もう、と決めた。日本語で適当に文にして、伝えていた。

 当時は、洋書の方が安いものもあり、アマゾンで何冊か足した。手に入れた黄色い背のGoldenbooksのシリーズ。スキャリーおじさんの本は、定番絵本シリーズとして残り、中国の印刷所で作られていた。
 そう、正直なところ、ちょっと前までは、日本語版より安いから、というだけの理由で洋書を買ったりした。物価を考えると、今はそうはいかないだろうなあと思う。

 この本は、ぶたのピクルス一家の引っ越しの日、新居までの長い道のりを追ったドキュメント。
 タイトルからご想像される通り、一家を載せたオープンカーの周りには、たくさんの乗り物が登場する。
 日常みかける働く車の他に、ありえない乗り物が次々に登場する。バナナ、ニンジン、サメ、へんてこな形の車も混ざっている。
 おじさんの絵本によく登場する小さなムシくんは小さな小さな車に。ねずみくんも小さな車。狼や、ゴリラ、マンドリルは大きな車に。
 横書きの本なので、みんな左から右へと進む。進む。進む。

 子連れの旅。途中でドライブインでトイレに行き、親戚の家でトウモロコシをごちそうになり、海に行ったりと、寄り道をする。
 同じ道路上で、ヒッチハイカーの旅、ねずみ一家の旅、たくさんのサイドストーリーが同時進行する。それそれの物語を追うと、興味深い。

 なかでも特にぶっ飛ばしている2人がいる。STOPの札を持ち、スカートを翻して自転車で追いかけるきつねの警官フロッシー(おまわりさん、片手運転ではありませんか?)。追うのはスピード違反のいぬのディンゴ。ちょいワルな顔をした赤い車に乗っている。自転車と車のチェイス。はい、ありえない。

 たくさんの物語をインプット?したあとは、再現したくなるのだろう。
子どもは、ミニカーに動物のぬいぐるみを載せて、カーチェイスをする遊びがとても好きだった。もちろん、ありえない部分も丁寧に再現していた。

BUSY, BUSY, TOWN Goldenpress刊


 扉で職場に向かう動物たちが横断歩道を渡ろうと並んでいる。お弁当を持っていたり、仕事道具を手にしていたり。ビジータウンで働く動物たちを紹介する絵本。
 見開き2ページごとに、テーマが変わる。生産者から、消費者に届くまでのダイジェスト。商店街の様子。学校の様子。忙しい家事についての解説もある。私が文章だけを必死に追っていると、絵を追う子どもたちは、あちこちにありえない小さな事件が潜んでいるのを見逃さない。

 実は情報量が多いけれども、構図がすっきりと整理されているので、目障りになるわけでなはい。飛ばして楽しんでもいいし、じっくりすきなページだけ眺めてああだ、こうだ適当なことを話しても楽しめる絵本だ。

 子どもにとっては、そこに描かれているものが全てで、文章が何語で書いてあるかなど関係ない。好きな本は、躊躇なく、これ読んでと持ってくる。
中身はまあ、子供の頃から覚えていた絵だし、単語もそこから覚えたものが多い。書いてあることをだいたい訳して語るしかない。

 ただし、これを流れをとめずに文章のようにして話すのは、ものすごく脳のトレーニングになった。今回のタイトルのように、文章の後ろに、~よね?。なんて付け足したりした。キャラクターに合わせた口調も考えた。

 読むのが遅くても、訳が適当でも、適当に文を言い続けていると、文章がなんとなく整ってくる。幸い、ここ違う!と指摘されることはなく、細かい絵を追っていてくれたので、拙い訳でも飽きないようだった。

 
寝る前の読み聞かせ……★★★☆☆読み手は途中からでもぐっすり眠ることができる。子供が先に寝ることはない。読み聞かせ時間として、1時間は覚悟を。



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