1年生同士で、朝の待ち合わせをさせない方がいい理由
ドアを開けて、4月の朝の空気を吸い込む。
防犯ブザーや鈴がランドセルにぶつかる音と、小学生の足音を聞くと、思い出すことがある。
* * *
十年以上前、うちの子が小学校に入学した。
最初から近所に友達がいた方が安心だ、1年生同志で待ち合わせをして、学校まで一緒に行ってもらおうと思った。
そこで近所の同い年の子の親御さんに声をかけて、7時45分に待ち合わせをしてもらうことにした。余裕を持って着くよう、少し早めの時間。
うちは保育園、相手は幼稚園出身で、それまでは子ども同士で話をしたことがなかった。
翌朝、待ち合わせして、大きいランドセルを背負って歩くふたりを見送った。
新しい世界に向かって、子どもたちは振り返らなかった。
真っ直ぐな道を歩くふたりは微妙に距離を空けて、無言のままのようだった。
できたら仲良くなってくれるといいけど、とすっかり遠ざかった背中を見ながら勝手に願う。
* * *
帰ってから、『どうだった?』と聞くと、相手がどんどん先に行ってしまったとのこと。曲がり角の先で追いつかなくなり、別々に学校に着いたようだ。
遅刻しないように、と慌てる気持ちはとてもわかる。学校でも時間を守るように指導されるはずだし、この先もとても大事なことだ。あまりよく知らない子のペースに合わせて最初から遅刻する訳にはいかない。
うちの子は早生まれで、大きな荷物で学校に行くのも精一杯。とにかく、歩くペースが合わないようで、数日して一緒に行かなくなってしまった。
最初の数日は、帰ってから疲れて昼寝をしていた。
それ以上に、小学1年生でもすでに、相性が合う、合わないがはっきりしてしているのだなと諦めた。
どんな子かよくわからないうちに、互いに悪い印象を残してしまったようだ。放課後も一緒に遊ぶ様子もない。その子の話題もない。
親が良かろうと先回りをして、余計なことをしたようだ。相手のお母さんとも話して、自分のペースでそれぞれで行ってもらうようにした。
* * *
ところが高学年になると、共通の友人を通して、あの子との距離が急に近くなった。クラスは違うのに。
わざわざ待ち合わせはしないけれど、途中で会えそうな時間になんとなく合わせて家を出るように変化した。時々、帰りに一緒に帰ってくるのを見かけるようになった。
このあたりの時期に、出会いなおしをしたようだ。
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中学時代は背が伸びて追い越したり、追い越されたり。時には一緒に先生に怒られたりしながら、難しい反抗期を過ごした。
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さらに数年後。
進路が違っても、今でも仲がよい。
たまに学校帰りに遠くの街で待ち合わせをして一緒にごはんを食べ、別々の経路で帰ってきたりするそうだ。
これは定期券のルートの都合で。
*lazy_planetさんの写真をお借りしました。ありがとうございました。
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