坂道

話が長いのが苦手だ。というか多分、つまらないから早く話を終わらせたいのだと思う。間延びしている会話はじれったくて仕方がない。良かれ、と思って話を広げられるのも嫌だ。リズムよく必要なことを話して、次のステップを踏みたい。長い時間を共に過ごせば、みたいなことで生まれる一体感みたいなものは幻想だと思っている。余白は必要だけれど、それは誰かと共有しなくても良い。やりたいことは沢山あるのだ。人が集ったという余韻に浸っている時間はない。そう彼女は心の中で言い放って席を立った。話途中の場は少しざわめいたが、そんなことはどうでも良かった。やっと自分の意思で立ちあがったのだ。駅までの道のりを自転車で漕ぐ彼女は楽しそうで、「クソ長ぇんだよ!」と言いながら坂道を下っていった。

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