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電子は水底へ 3

オリジナルの長編SF小説です。

~あらすじ~
近未来の世界で庭師として生きるアンドロイドが、ある日、巨大で奇妙な白い繭を見つけ、大事件に巻き込まれていく。逃亡中に重大な秘密を知り、苦悩からヒトを開放する手段を見つけるため、旅に出るが……

※1週間に1~2回ほどの頻度で更新する予定です。
※少し残酷な描写がございます。苦手な方や、18歳以下の方の閲覧は推奨しません。
※14~17回ほどで完結する予定です。


電子は水底へ 1 】【電子は水底へ 2 】⇔【電子は水底へ 4 



カゴを置いて、棚橋の後を追う。岩に寄りかかった棚橋の横に立つと、かすかに音楽が聞こえてきた。発信源は棚橋の片耳に収まっている、紫色のイヤフォンだ。

「もう来てから一週間だっけか。結構お前適応力あるよな。多屋たやよりあるぜ。木偶でくなんて名前にして悪かった。名前、変えるか?」

「いえ……木偶でいいです」

「ははっ」

快活に笑う棚橋を見て、主の息子を思い出す。いつも真っ青な制服を着て、得意げにラクロスの道具を抱えていた。かつて私に馬の玩具を手渡してくれた、満たされた子供。今はもう、どこにもいない。

棚橋の黒い短髪に寝癖がついている。

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