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ヌープ(32)目覚めたヌープ

◆(32)目覚めたヌープ

 

ソレッキは続けました。

「まだ、石板の解読できていない部分に、古代人が見つけたヌープへの対抗策が書いてあるのかもしれない。そもそも、多分、千年以上の間、あの遺跡の中で、この生物は休眠状態だった。何らかの方法で、古代人はこの生物を封じ込めたのだ。あの遺跡は、ヌープの檻だったのだと思う。

いや、檻というのは、正しい表現ではないかもしれない。閉じ込めていたのは確かだが、閉じ込めた上で、ヌープを眠らせる仕掛けがあったのだと思う。その鍵の石が、無数の化け物を眠らせる、遺跡の大きな仕掛けの重要な部品だったのではないだろうか。

だから、それを外されたから、ヌープが目を覚ましてしまった。ヌープを眠らせる子守歌は止まってしまったのだ。

そうだとすると、辻褄が合う事が、もう一つある。知人のヘリのパイロットが、言っていた。あの遺跡の異変を最初に見つけた人物で、私の父、ロバートが遺跡に行くのを手伝ってくれていた人なのだが、9月の半ば頃にヌル遺跡に少しだけ近づいたコースをヘリで飛んだ。いつもなら、通信機器からノイズが盛んに聞こえるそうだが、何も聞こえなかったそうだ。ヌープを眠らせる巨大な子守歌が、止んでいたんだと思う」

祖父は言いました。

「ひょっとして、この石を遺跡に戻したら、ヌープは再び眠りにつくんでしょうか?」

「わからない…… とにかく、わからない事だらけだが、やってみる価値はあると思う。すでにヌープの休眠が解けてしまっていて、遺跡の中は、危険極まりないと思うが……

石を戻すにしても、綿密な計画と準備を要すると思う。それから」

「まだ、何かあるんですか!?」

私は悲鳴を上げました。

目次

(33)遺跡の隠された場所

■第2部 子守歌 ~アイリス・ミラーの手紙

(31)ヌープの能力(32)目覚めたヌープ(33)遺跡の隠された場所 /(34)私の選択肢(35)運命


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