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雪女はヤンデレか?

今日も私が住んでいる地域は、熱中症警戒アラートが出ています。
エアコンをつけているのにもかかわらず、生産的なことができなくて、寝たり起きたりの生活で、閉口しています。
でも、まあ、何もできないのは、悔し過ぎるので、企画を考え、ときどき起き上がっては、小泉八雲の「雪女」を要約したりして過ごしていました。

それで「雪女はヤンデレだろうか?」と、友人とアホな議論をしたときのことを思い出したのです。

なぜ、そんな話になったかというと、私は音声配信のシナリオを作っている都合上、シナリオとか、シチュエーションボイスに接するわけです。

そうすると、恋愛系のシチュエーションにもたくさん接します。ラブラブなのはいいとして、ヤンデレ作品が多いのに疑問を感じていました。

わからない方はいないとは思いますが、一応説明すると、ヤンデレというのは、女性が相手に対して異常な束縛をする恋愛シチュエーションです。

恋愛ゲームなんかでも、意外にヤンデレは人気があります。検索をかけると、非常にたくさんヒットする。

「ラブラブなのは理解できるけど、ヤンデレが需要があるのはわからないなあ。自分はヤンデレは、苦手だ」

と、私は答えていました。

でも、ふと考えると、私は、「雪女」の話が大好きなのを思いだしたのです。
病気で、いろんなものを心身が受け付けなくて、困っていたときがありました。
体が痛くなったり、頭が働かなくなる病に、私はかかっているということを以前お話ししたことがありますが、酷いときは、本当に凄まじい状態でした。

音も、映像も、物語も、全部、受け付けない。
受け付けない上に、がんがん、体が痛くて薬も効かないから、何かで紛らわすということができない。気が狂うかと思いました。

どの程度かというと、映像は「かわいい猫の動画」でも、ダメでした。

悪循環してたので、どこからか、この包囲を破るしかなくて、いろんなことをやりました。

音も、音楽どころか、水のせせらぎなど本来はリラックスするはずの音も、頭がこむら返りするような感じで、受け付けず、大変だったこと。音に関するリハビリは、ラジオでやったことは、以前、どこかで書いたと思います。



声が出にくいのと、聞いた話をまとめる力もなくなってきていたので、これは、本当に、心のまとまりを失う、つまり、気が狂うと思いました。
狂わないように、必死に、レコーダーに気持ちを話しかけてました。
今思うと、言霊のようなもので心のまとまりが溶けてしまわないように、無理やり狂気に入ってしまわないように、なんとかしていたんだと思います。

自分で何とかしたなんてことはなくて、ここで最後の一撃を入れられなかったことは、幸運なことで、感謝しなくてはいけないかもしれないです。

心のまとまりが無くなるほどの崩壊の危機の場合、最後の一撃、大きな打撃だったり、弱い衝撃でも、心の防御の隙間から入ってしまったりというのが、あるんですよね。
まあ、そんな話はともかく。



感情の方も死にかけていた感じだったので、物語が必要だなと感じていました。
お金がかからず、音声の話やらその理解……物語。

朗読!

それで、朗読しようと思ったのですが、まあ、声が出ないのはともかく、簡単な詩の本を二ページ読んだだけで、休んでました。
確か星野富弘さんの詩だったと思います。
あんなに素晴らしい詩なのに、なんか、日本語は理解できても、感情が恐ろしいほど伝わらない。

そんな状態が続き、なんとか、声に出して読めるようになっても、二、三行読んでは、間違う。
声に出そうとしても、最初は、5分も読めなかったです。疲労で、続けられなかった。

そういうときに、最初に読んだのが、小泉八雲の「雪女」だったのです。
雪女は読んでみたいって思えたのです。



「雪女」は私の読むスピードだと、15分くらいになります。健康な人なら一気に読めるのですが、とにかく持久力が無くて、5分ごとに、3パートに分けて読んでました。

何回読んだかわかりません。

「雪女」は恐ろしい話で、吹雪に遭った木こり二人が、小屋に避難して、眠っていたら、その間に小屋に、雪女が侵入して、一人を凍死させる。
もう一人の少年の木こりに近づいて、
「お前は若くて綺麗だから、助けてあげる。でも、今夜のことを誰かに言ったら殺す」
と言って、出て行くのです。

そして、雪女は、人間の娘に化けて、この少年と偶然出会ったような振りをして、押しかけ女房をしてしまう。

やっぱりヤンデレではないか……

でも、別の友人が「雪女は、ヤンデレではないよ」と言いました。

このあと、雪女は、その少年との間に、十人の子どもを生み、幸せに暮らしていたのですが、少年は、ある晩、お前とそっくりな女に出会ったことがある、と、小屋で起こった出来事を、本人の前で話してしまうのです。

そうしたら、雪女は正体を現し、

「それは、私だ! 一言でも、それを話したら、私は、あなたを殺すと言った! 今、そこに寝ている子どもたちがいなかったら、今すぐにお前を殺していた。その子たちを大事に大事に育てるがいい! その子たちが、不幸な思いをしたら、思い知らせてやる」

みたいなことを言いながら消えていきます。



友人が言うには、

「約束を破った男を氷漬けにして、山に持ち帰り、死体になっても男を離さず弄んでたら、ヤンデレだけど、そうじゃないでしょう」
と、

別の友人は、
「雪女は、ヤンデレじゃないよ。ただの怒った女子だね。悪いのは男。約束は大事」
というような意味のことを言いました。

確かに、許せないことをしたパートナー。でも、子どもたちの今後を考えて、許して別れる。

なんだか、凄く強くて賢い愛情……

それで、自分でわかったようなわからないような、おぼろげに感じていたものがはっきりしました。

一つは人間離れしたパワー。
そして、愛情。
押しかけ女房をする一方で、子どものために、裏切った男を許したりする分別がある。お母さんしてる。

妖怪の癖に、人間を好きになったり、家庭を築いたり、子どもの事を考えて、男を許したり。
凄いパワーがあって、凄く健全な愛情があるから、惹かれたのだと思います。
ギャップ萌えはしてるけれど、やっぱり、ヤンデレは苦手だと再確認しました。

そういえば、シナリオサークルに入って、初めて書いた作品が、雪女の二次創作作品でした。お陰様で、ボイスコさんに頼んで音声化もして、評判が良かった作品です。

雪女の奇妙だけれど健全な愛情は、今でも、私を支え続けてくれています。

最後まで、読んでいただいてありがとうございました。

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