ふくしゅうの時間
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ここ数日、布団に入る前に「復習の時間」を設けている。
冷蔵庫からアイスを取り出して、ソファに座り仕事で使用しているメモ帳をひろげる。その日学んだことや、調べたことをまとめなおしたり、参考になりそうな本を注文したり、使えそうなサイトを探す。
まあ、優等生ぶって書いているけれど、「完璧にやろう」だなんて気持ちはない。でも、「知識を深める、補充する」くらいの気持ちでやっている。
これがなかなか良い。
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僕は編集の仕事をしている。
そのため、会社のデスクには常に原稿やゲラが散乱していて、なかなか仕事を丁寧に振り返る時間がない。文章の校正や編集の過程では「調べる」作業が圧倒的に多い。専門的な言葉や内容であればなおさらだ。
編集者の仕事は、作品にものさしをあてることだと思っている。正しい文章をつくるためには、正しいものさしが必要なのだ。
以前はこうだったから、今回もこのくらいで良いだろう。と思ってしまうと、停滞感と驕りがうまれてしまう。主観が入りすぎてもダメだし、世間からずれても良くない。
だからこそ、ものさしが大切になるのだ。そのものさしが、錆びないよう、ずれないよう、時代遅れにならないように常に気を配る必要がある。
これが最高に辛いけど、最高に面白い。
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知識を深められているか、補充がうまくいっているかは、正直まだわからない。
でも、「復習の時間」を設けてから、頭がスッと整理されて、良い仕事ができている感覚がある。数年後の自分の力になっていればいいな、そんな願いを込めている。
これからも、その時間を大切にしていきたいと思う。
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昨夜、冷蔵庫からハーゲンダッツを取り出し、いつものようにメモ帳をひろげた。
遠くから妻の怒りのこもった声がした。
「ねえ、わたしのハーゲンダッツないんだけど!もしかしてぜんぶ食べた?」
僕はどこで間違えてしまったのか。求められていたのは、知識の補充ではなく、ハーゲンダッツの補充だったのだ。怒りの形相で、妻が僕のところに向かってきた。
「復讐の時間」が始まった。これが、なかなか、良くない。
(おしまい)
◆あとがき
僕は無事です。
今日、ハーゲンダッツ買って帰ります。
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