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いしいしんじ『トリツカレ男』を読んで

いやあ、信じることって、そして夢中になることって、バカみたいだけど、おめでたいけど、素敵な幸福なことなんだなあ。

ジュゼッペは街の変わり者。なんでも「とりつかれたように」ハマってしまって、そこから抜け出せなくなる。探偵ごっこ、オペラ、サングラス……そんなわけで、彼についたあだ名は「トリツカレ男」。そんな彼の前に現れた無口な少女ペチカ。彼女と、少しずつジュゼッペは心を通わせていきます。

私、3・4年前にもこの小説読んでたんですが、すっかり忘れていました。

本当にピュアでまぶしいラブストーリーで、そうだよなあ、恋人で夫婦になって長く続いていると、どちらもどちらで似てくるんだよなあ、とにまにましてしまったり。

ジュゼッペの弱さは、「自分」がないこと。だけど、「なんにでもなれる」って強さなんじゃないか、そうも思います。

子どもの頃、「ヒーローごっこ遊び」とか「ヒロインごっこ遊び」とか、はやりませんでしたか? 私はセーラームーンやおジャ魔女どれみが大好きだったので、よく友達と幼稚園や小学校でしていた気がします。

誰かになる、とか、夢中で「誰か」を演じていると、いつの間にかそれが自分になってしまう経験。だれしもあるのかもしれませんね。

そんなピュアでまぶしい「信じること」を子どものようにまっすぐに信じた男のラブストーリーです。

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