アダム・ヘイズリット 古屋美登里訳『あなたはひとりぼっちじゃない』を読んで
この短編小説集、切ないです。
出てくる登場人物たちは性的マイノリティであったり、心を病んでいたり、とにかく生きづらさを抱えています。
そんな彼らの日々を淡々と切り取っている短編集なのですが、彼らは日常的にこういう複雑な気持ちをもっているのかと思うとこちらの胸が苦しくなるくらい。
ぶっ飛んだ父とゲイの息子の断絶。恋に恋してしまうのですが、切ない喪失を遂げてしまう少年、愛する兄の死の兆しを予期してしまったかのように思う弟……生きづらさを抱えながら生きる人々の日常を切り取った短編集。
生きづらさって、だれしも持っているものだと思います。どうして、と思うことが常に自分につきまとう。そして、孤独な気持ちに陥ってしまう。
私にも一緒に暮らす家族がいますが、家族でさえも、血がつながっていても、100パーセント「分かり合う」ことはできません。私も家族のことを100パーセント理解しているかと言えばそうでもないし、それは家族にとっても言えることで、家族も私のことを100パーセント理解しているかといえばそうでもない気がします。
ただ、「人と人は分かり合えない生き物だ」と諦念のような気持ちでいると、少しは生きやすくなるのかなあと思います。誰とも比較せず、自分の大切なものを大切なものとして守り抜く行為はとても尊いと思うし、難しいけれど大事なことだと思います。
自分の事を自分で一番理解してあげること、そして「分かり合えない」ということを知ること、その上で人とつきあっていくこと。
難しいことですが、おおらかな気持ちで、追い詰めず考えていけば、きっと「ひとりぼっち」からは逃れられると思います。
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