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こじらせビトへ愛をこめて。 フランシス・ハ

若草物語の映画を楽しみにしている。劇場公開日も決まったそうだ。
監督のグレタ・ガーウィグを検索すると、「フランシス・ハ」という映画に辿り着いた。
グレタ・ガーウィグが脚本と主演を担当、こじらせ女子が描かれているらしい。
監督はノア・バームバック。マリッジストーリーの監督だ。俄然興味が湧いた。

フランシスはモダンバレエカンパニーの見習いで、ブルックリンに親友のソフィと住んでいる。
ソフィとの毎日がフランシスの日常に彩りを与えていたが、そんな生活が一転していく…
ソフィとの友情を優先し、恋人からの同棲の誘いを断って別れることになったが、ソフィは別の友人と住むことになり、あっさりと出て行ってしまう。
カンパニーからはダンサーとして見切りをつけられてしまい、職を失い、シェアハウスからも出て行かなければならなくなる。
思いつきでパリに2日間だけの旅に出たが、時差ボケで寝過ごし、時間を無駄にしてしまう。
ダンサーを続けたい一心で出身大学の寮の管理人になってみたものの、管理人はダンスの授業に参加できない規定であることを後で知ったりと、他にも様々な壁にぶつかるフランシス。
もがきながらも彼女が見出した新しい一歩にほっこりさせられる、こじらせた人間への愛を感じる作品となっている。

主人公のフランシスは常に前を向いている。彼女が走っているシーンに描写されているように、人生に於いても全力で走って突き進む。
こじらせ系の主人公は陰気な雰囲気を醸し出していることが多いが、フランシスの場合は割と明るい。
かなりショックであろうことが起こっても引きずらずに次の行動に移せるところが魅力的だ。
しっかり落ち込んで、次に行く。また上手くいかず、落ち込んで、次に行く。全力で突っ走るフランシスを応援したくなる。

フランシスの年齢が27歳という設定も絶妙だ。
もうすぐで30代がくるという焦りもあるが、心のどこかでは自分はまだ若いと思っている、あの感覚。
友人から老け顔だけど中身は大人っぽくないと言われ、
その後に、27歳って別に若くはないよね、歳取ってる訳でもないけど、という会話が続く。

フランシスを見ていると、身に覚えのあるような行動が目につき、イタいよな…と身に沁みながらも笑ってしまう自分や、思わず苦笑いをしてしまう自分がいる。
けれど、この映画があたたかく感じるのはフランシスのような人間を面白おかしく卑下していないからではないだろうか。

何か成し遂げなくては、夢に近づかなくては、と焦り、もがき、それと同時に、生きる為に生活費を稼がなくてはならないという現実を突きつけられる。
夢と給料が直結する人はほんのひと握りなのだろう。生き続ける上で何を優先するのか。自身で納得して見つけた次のステップは人生の大事な通過点になって欲しいと願う。
ラストの清々しいフランシスの笑顔が、同じような経験をしてきた人々への愛に感じ、心が温かくなり、勇気を与えられた気がした。

この映画の不思議なタイトルの謎はラストに解明されるが、ここではネタバレしない。
フランシスらしい、と、ほっこりすること必至。

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