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【頭に残る怪談】 「友達」

これは私が大学生の頃に友人と2人で廃園となった遊園地にこっそりと忍び込んで、肝試しをしたときの話です。

その廃園に行った時は廃園となってからはまだ1年しか経っていなかったのでそこまで朽ちている感じはありませんでした。廃園となった理由は、ミラーワールドと言う、全方位鏡張りになった迷路の部屋から抜け出すと言うアトラクションがあり、2人で来ていた親子の母親が子供に火をつけ殺人をし、その犯人は未だ捕まっていないというものでした。それからと言うもの、客足が遠のき廃園となってしまったそうです。
こんな話を友人のKさんから聞いたオカルト好きの私は、その現場を一目見てみたいと思いKさんを連れてその遊園地に行くことを決意しました。
遊園地は隣の県にあり、車を2時間ほど走らせ地図通りに行ってみると、山の麓にある遊園地に着きました。あたりに人の気配はなく閑散としていて、何とも言えない不気味な感じがしました。園内の案内板にはミラーワールドは1番奥のほうにありました。そこまでの道中、Kさんがこんなことを言ってきました。
「なんで人のたくさんいる遊園地なんかで殺したんだろうね。それにしても放火で殺すなんて…。どういう理由で殺したんだろう。」
確かにKさんの言う通りで私も理由が気になったのですが、きっとミラーワールドに行けば何かわかる、そんな気がしていました。
気づくともう道がありません。辺りも暗くなってきたので持参したライトを点けると、目の前に真っ黒な建物が浮かび上がりました。ここかなと思って近づいてみると、入り口の看板に『ミラ』とだけ書かれてあって、残りの部分は全て真っ黒になっています。よく見てみるとその黒い部分は全て焼け焦げた跡でした。
本当にあったのか、と込み上げる恐怖を抑え、Kさんと手を繋ぎ、ライト片手に入り口に足を踏み入れました。周りは燃えて変色した鏡に囲まれ、天井も黒く焼けていて、焦げ臭さが感じられました。
「ねぇ。もうやめとこうよ。ここで人が死んだんでしょ。絶対やばいって。」
そのKさんの声に重なってどこかから子供のような声がしました。今、声聞こえなかった?とKさんに言いたい気持ちは山々でしたが、まずこんなところに人がいるわけないしKさんの恐怖を煽ってはいけないと思い、ぐっと我慢しました。
足を進めるにつれ天井の焦げも酷くなり、焦げ臭さもよりいっそう増してきました。
「臭いし息苦しい、もうやめ…」
「わっ!!」
Kさんが喋っている途中に思わず声を上げてしまいました。
「もう何?やめてよ…」
そして恐怖のあまり、私はつい口走ってしまいました。
「いや、Kが喋ってるときに子供の泣き叫ぶ声が聞こえたの…」
「え?私聞こえてないけど…」

『やめて!いやだ!』

子供の苦しそうで恐怖に怯えているような声。

「やばい!聞こえる!早く逃げよ!!」
聞こえてきた内容とその声の表情から危険を感じ、Kさんの手を掴み必死でその場から逃げ出しました。
「ねぇ!今度は何が聞こえたの!」
どうやらKさんには聞こえていないようでした。
「後で話すから!とりあえずこの遊園地から出よう!!」
そう言って私たちは遊園地を離れました。

それからしばらくの間落ち着かない日々が続きました。私にはどうしても気になっていたことがあったからです。それは殺害した理由です。葛藤はありましたが、勇気を出して調べてみることにしました。しかし、これといったものは見つからず諦めていました。
「そういえばもうすぐでKの誕生日だっけな。」
遊園地のことは忘れてKさんの誕生日プレゼントを考えようと、なんとなくKさんのLINEのプロフィールを開いた時、見たことない長文のステータスメッセージが更新されていることに気づきました。
「え、なにこれ…」
その内容は、普段温厚なKさんとは思えない想像を絶するものでした。

『私はもともと子供を産むつもりはなかった。だけど、彼氏に無理矢理妊娠させられた。私は子供が嫌いなので子供を他の方に引き取ってもらうことを考えたが、産んでしまった以上責任があると考えてそんな事はできなかった。ただそう甘くはなかった。取り残された私に待っていたのは地獄の日々だった。今思うと引き取ってもらうことが最善だったのかもしれないが、当時の私には日々生きることが精一杯でとにかく子育てに必死だった。ただ、ある時極限状態に陥った私にこんな考えが生まれた。この子を殺せばいいじゃないか。そうすればもう子育てをしなくてよくなる。なぜだかわからないがその時の私にはその方法がしっくりきていた。そしてどうせ殺すなら嫌いな子供達にトラウマを植え付けてやろうと思って遊園地を選んだ。』

複雑と恐怖が入り乱れる中、「ちょっと病んでしまって書いたんだろう」と根拠もない言い訳を信じ、色々と確認したかったので、もう一度Kさんに詳しく電話で話を聞くことにしました。

「ねぇ、K?ステメどうしたの?なんか悩んでるなら話聞くよ?」

「あー、全部読んだ感じ?てことはどういうことかわかるよね?私もきつかったの、ね?わかるでしょ?友達なんだから。」

「え……。ってことは、あの母親は……」

「まぁ、そうゆうことよ。このことは絶対外部に漏らしちゃダメだからね?友達なんだから約束してくれるよね?」

「う、うん…。」

「じゃあ、また今度遊びに行こーねー。バイバーイ。」

電話が終わった後、私は震える手を必死に抑えながら110を押しました。

【追記】

あなたには友達と呼べる人はいますか?

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