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若返り物質:ケトン体(ファスティング由来に限る)


ケトン体は老化物質?

前回『ファスティング(IF)は究極のダイエット法』でお話ししましたが、


https://note.com/nekokoshi/n/n2ef59e03a281


ケトン体はにより血管機能の低下するという論文Hypertension 2008; 51: 376-382)により

『ファスティング→ケトン体産生→血管機能の低下(老化の進行)』

という悪のレッテルが張られてしまったのです。

またケトン体=悪とのイメージを生み出す疾患として糖尿病性ケトアシドーシスがあります。

糖尿病ケトアシドーシスとは、糖尿病または肥満の方が、インスリン不足の状態(清涼飲料水の大量摂取)などを契機として大量のケトン体が体内に蓄積されることにより脳浮腫による意識障害、ショック状態に陥り最悪死に至る病気です。

ペットボトル症候群とも言われます。

この『論文的素因』 『ケトアシドーシス』によりケトン体を発生する可能性のある糖質制限ダイエット、ファスティングは悪のレッテルが長年は張られてきました。


それによりケトン体を産生しうるダイエット法はすべて非医学的である、寿命を削っているとイメージが生み出されてしまい、少なくとも医療の現場では

それらに付随するダイエット法はタブーとみなされていました。

ファスティングによるケトン体は味方である

それを覆す論文が発表されたのでご紹介させていただきます。

Effects of ketogenic diet and ketone bodies on the cardiovascular system: Concentration matters

https://www.wjgnet.com/1948-9358/full/v11/i12/584.htm


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結論から申し上げますと『ファスティングから産生されるケトン体はダイエット効果、長寿ホルモンとして働く』です。


ここでケトン体産生のメカニズムをおさらいします。

ケトン体産生のメカニズム

通常人のエネルギーを産生するシステムとしては、炭水化物を燃焼させることによりエネルギーを産生します。このシステムの欠点としては、肝臓で100g、筋肉で300gしかグリコーゲンを保管できないために余ったエネルギーは脂肪として蓄積されてしまいます。

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ダイエットの目的は余剰脂肪を減らすことですから、脂肪を燃料として

使用するシステムはないものか?

→それを解決するのがファスティングなのです。

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人は15時間以上絶食(糖質制限でも一部)により、脂肪をエネルギーとする回路に切り替わるのです。

しかしその排気ガスとして副次的に『ケトン体』が発生してしまいます。

【脂肪酸→(β酸化)→アセチルCoA→アセトアセチルCoA→HMG-CoA→ケトン体

そしてこのケトン体が長年の論争の争点となっていていました。

ヒトにとって敵なの?味方なの?

その論争も上記の論文により決着がつくこととなります。

ケトン体は血中濃度により敵にも味方にもなる


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ケトン体は敵なのか 味方なのか

血中のケトン体濃度により大きく変わるというのが結論です。

血中濃度が高濃度となった場合(20mmol/L以上)はケトアシドーシス、脳浮腫を発症させてしまいます。

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しかし血中濃度が1-7mmol/Lの低~中濃度の場合は

味方として『抗炎症効果』『痩せホルモン』として働きます。

前回お話しさせていただいたように老化、疾患発生の基礎は

慢性炎症でしたよね。

そのためにいかに抗炎症化の習慣を取り入れるかが重要ですが、ケトン体はその作用があるのです。


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それ以外にも下記のようなメリットが指摘されています①

血管、心臓の若返り

ミトコンドリア機能向上

血圧の低下

体重減少

酸化ストレスの低下

また適度なケトン体を負荷したマウスの寿命の中央値を大幅に延長し、高齢のマウスの身体機能を維持すると報告されています。②


では本当にファスティングでは危険なケトン体濃度である20mmol/lを超えないのでしょうか?

肥満のボランティアの三日以上の長期の絶食をしても<7mmol/ L以下であることが報告されています。③

またハードなスポーツをしても同様であると結論されています。


結論です:『ファスティング、一部糖質制限によりケトン体は発生するが、その血中濃度は1-7mmol/Lという快適な濃度の為に、抗肥満作用、アンチエイジング作用などのメリットを享受できる可能性が高い!!』

となります



①Yurista SR, Chong CR, Badimon JJ, Kelly DP, de Boer RA, Westenbrink BD. Therapeutic Potential of Ketone Bodies for Patients With Cardiovascular Disease: JACC State-of-the-Art Review. J Am Coll Cardiol. 2021 Apr 6;77(13):1660-1669. doi: 10.1016/j.jacc.2020.12.065. Epub 2021 Feb 23. PMID: 33637354.

②  Roberts MN, Wallace MA, Tomilov AA, Zhou Z, Marcotte GR, Tran D, Perez G, Gutierrez-Casado E, Koike S, Knotts TA, Imai DM, Griffey SM, Kim K, Hagopian K, McMackin MZ, Haj FG, Baar K, Cortopassi GA, Ramsey JJ, Lopez-Dominguez JA. A Ketogenic Diet Extends Longevity and Healthspan in Adult Mice. Cell Metab 2017; 26: 539-546. e5.  [PubMed]  [DOI]

③Owen OE, Felig P, Morgan AP, Wahren J, Cahill GF Jr. Liver and kidney metabolism during prolonged starvation. J Clin Invest. 1969;48:574-583.  [PubMed]  [DOI]
16.  Koeslag JH, Noakes TD, Sloan AW. Post-exercise ketosis. J Physiol. 1980;301:79-90.  [PubMed]  [DOI]

④Nasser S, Vialichka V, Biesiekierska M, Balcerczyk A, Pirola L. Effects of ketogenic diet and ketone bodies on the cardiovascular system: Concentration matters. World J Diabetes 2020; 11(12): 584-595 [PMID: 33384766 DOI: 10.4239/wjd.v11.i12.584]

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