![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/118107444/rectangle_large_type_2_9c8d0512942cef1c7cbc0fd4ff6c371c.jpeg?width=800)
極東から極西へ22:カミーノ編day19(Ledigos〜Bercianos del Real Campino)
前回のお話。
英語でも、国によってはお互い通じない事がある。
前回
今回は、レディゴスからベルシアノスのお話。
再びカリマさんと歩くのだが……。
・Ledigos〜Sahagun/仕事について考える
レディゴスの街を6時半に出発する。早い人はもう出発しているようだ。
![](https://assets.st-note.com/img/1696510172153-rL9VQlh7JW.jpg?width=800)
歩きながらだから写真が少しぼけてしまった。
実は数日前より、考えていた事があった。カリマさんと話すのは楽しいし、頼りになるのだけれど、依存してしまいそうだと言うこと。誰かを頼りにするのは悪い事ではないが、常に行動を共にするのは何か違う気がすると思い始めていた。
「次はここにしようと思うんだけど、どう思う?」
「いいね。レートもいい」
なんてやり取りをしていたけれど、サンティアゴまで一緒だと、他の出会いを無くしてしまう可能性もあった。
「仕事はどんな事を?」
「難病のひとがいる病棟で働いてたんだ。その前は、がん中心のとこ」
「まあ、がん? じゃあ沢山人の死を見たのね! それは心が疲れちゃうわよね」
がん中心じゃなくても、病院に勤める限りひとの死とは切っても切れない仕事。私も、看護師になってからそれを知った。
がん中心の病院は、正直に言うとキツくて辞めたのだ。短い睡眠時間といい加減な食事、多量の課題、職場の人間関係、そしてカリマさんの言う通りの理由で。
別の病院で一からやり直したかった。
そんなに沢山の死を見たいわけでも無かった。
で、結局、難病や脊損、勿論ガンに糖尿病に心不全……etc.といった様々な困難に直面している人の元で働くこととなった。当然死とは切っても切れない縁となった。
そりゃそうだ。だって職場は病院で、入院している人にはそれなりの理由があって、退院できないのもそれなりの理由がある。
「日本では、ハーブの治療はするの? こっちだとほとんど抗がん剤とラジオ波だけど、いくつかの病院では、徹底的に野菜を摂って身体の中を綺麗にする治療をやってくれる所もあるの。砂糖はガンに良くないらしいから、それも治療中は摂らないのよ!」
ハーブ治療はホメオパシーに近い物だろうか? 野菜だけ……の治療は分からない。
そして、それが果たして良い物なのか分からない。身体に必要不可欠なタンパク質や電解質は、我々は雑食なので、野菜だけでは足りなさそうに思えるけれど。
でも、野菜だけでも良いという文献を、私は読んだことがない。医療はきっと積み重ねられた客観的なデータと、自分の観察を信じなければならない仕事。知らない以上否定は出来ないが、丸切り信じることも出来ない。
日本に帰ったら真偽の程は分からないけれど、文献を探してみようと思う。
「ハーブ治療は、ひょっとしたらやってるかもしれない(漢方的な)けど、日本でも抗がん剤とラジオ波がメインかも」
そんな風に答えた。
幾つかの街を越えながら、他にも鍼灸やマッサージの話をしながら、満月の夜より幾らか明るさの落ちた道を歩いた。
カリマさんはきっと真剣に自分の身体の為になることを調べて実行しているのだ。自分で選んだ道だし、それで良いのだと思う。
もし野菜だけでガンが良くなるなら?
一歩一歩、月影が作る影を踏みしめながら考えた。
「それができれば、どんなに良かったか」
思わず一人ごちた。
今まで出会った何人かの患者さんの顔が浮かんだ。
考えごとをするうちに、太陽が顔を出して辺り一面をくっきりと照らし出していた。
![](https://assets.st-note.com/img/1696510382458-GG9O37y7ed.jpg?width=800)
湿気が少ないせいか、空はいつだって高い。
![](https://assets.st-note.com/img/1696510382430-xwNqYqlkmF.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1696510835034-jzRAz1VqBd.jpg?width=800)
時々こんな感じのものを見かけていたのだが、何の痕跡なのかわからず。
![](https://assets.st-note.com/img/1696510384956-XAuY8AYKdG.jpg?width=800)
明るくなってから知る。
・Sahagunのカフェにて
太陽が昇り、気温が少し上がってきた。
カミーノど真ん中だと言うサアグンのカフェで朝ごはんにする事にする。クリスティーンとガイさんが同じテーブルでご飯を食べていた。前のアルベルゲで出会った、友達同士で来ていると言う、美女二人もいた。
![](https://assets.st-note.com/img/1696510661784-a785iWOiV1.jpg?width=800)
私は渡りたかったので素直に道通りに。
カリマさんは、橋を渡らず最短距離を通過した。
![](https://assets.st-note.com/img/1696510902208-kSXKSObnbp.jpg?width=800)
こういう面白いものが沢山カミーノにはある。
![](https://assets.st-note.com/img/1696510902635-oVI6AuKbdi.jpg?width=800)
韓国のご夫妻は今日はここに泊まると言うので、さよならだ。久しぶりに寂しいな、と感じる。
「またね、ブエンカミーノ」
「ええ、きっとまた。ブエンカミーノ!」
奥さんと言い合う。
どこかで会えるかもしれないし、会えないかもしれない。それがカミーノ。
ナポリターナとカフェアメリカーノ(エスプレッソのお湯割り。別名、ポルトガル語でルンゴ)を頼み、椅子に掛ける。
真ん中証明書がどこぞでもらえるらしいが、誰も場所を知らなかった。食器を片付ける時に、セバスチャンとも会う。彼は多分20代なのだけれど、髭がサンタさん(短め)なので、もう少し年上に見える。
トイレを借りて再出発。どうやらカリマさんは真ん中証明書は諦めたようだった。
カフェは寒かったので上着を着ていたが、やはり歩き出すと暑くなってくる。カリマさんには先に行ってもらい、上着を脱いでザックを背負い直した。
歩きながら街の写真を撮っていると、ネザーランドのマリンカさんと会った。
「あの建物、プリズンみたいよね!」
「窓がちょっとね!」
![](https://assets.st-note.com/img/1696511149901-b4bBx2cKE6.jpg?width=800)
窓の鉄格子は何のため?
そんな事を話す。
そうこうする内に。街の郊外に出た。
・Sahagunのカフェ〜Bercianos del Real Campino/そして衝撃のキンチョール
思った以上に早くベルシアノスに着いてしまった。途中でロジャーさん親子と遭遇。そのまま一緒にドナティーボ(ドネーション/寄付)制のアルベルゲにザックを並べておいた。
![](https://assets.st-note.com/img/1696511256997-Z2IOztluFx.jpg?width=800)
20kmくらいなら6時30分出発で10時半か11時に着けるらしい事が分かってきた。
![](https://assets.st-note.com/img/1696511257075-sztItnU8yz.jpg?width=800)
広い庭がある。
![](https://assets.st-note.com/img/1696511257724-dumE2ri7G7.jpg?width=800)
軽食を食べてくるという三人を見送り、庭で日記を書いていたら、リオピコ村で会った韓国の男の子と、一匹狼っぽいUKの女性(ただし猫は好きらしい)、三ヶ国が堪能なクリスティーンもやってきた。
やがて時間になり、ローリーとジョーと言う二人のオスピタレロに案内されて八人ずつ中に入った。
説明を受け、名前と前は何処の街からかを聞かれる。
「英語分からなかったらジョーに言ってね。いい翻訳機持ってるから!」
そんな風にローリーさんに言われた。
各々自由に過ごすけれど、16時半からは夕飯の手伝い(強制ではない)、18時半からコミュニティーディナー、20時頃は夕陽が見られるとのことで、なんだか修学旅行っぽい。
取り敢えずシャワーと洗濯!
庭でゴシゴシ手洗いして、物干しに干して、ベンチで一息。日記を書いたり行程表を見て明日の計画を立てていると、一人の男性がやってきた。
何やらカラフルな布を洗濯したようで、水気を絞って、パンッと音をさせて広げた。
「あっ!」
思わず声が出た。
見覚えのある、友人にもらったキンチョールの手拭いそっくりだった。そんな偶然ある?
そう言えば、キンチョール手拭い、数日前に洗濯した時以来見てなくない? 思わずガン見していると、男性は干そうとした手拭いをまた回収しどこかへ行ってしまった。
え、私落としたの? それとも盗られたの?
どっちともつかないけれど、でも男性の行動からしてまさかの盗られた?それとも私の行動(ガン見) が不審だったから? 声を掛けようとしたら、男性は足早に建物に消えた。
私も部屋に戻ったが、男性が誰なのか顔の区別がつかない。荷物を確認したら、キンチョールの手拭いはやはりどこにも無かった……。
・コミュニティーディナーと夕陽、そして夜食
ドネーションのディナーはサラダとレンズ豆のスープ。そして果物だった。スープはとても美味しかった。スペイン料理だと思って食べていたのだけれど、ヨーロッパのごく一般的な食べ物らしい。
ローリーさんとジョーはアメリカからやってきた人でアルベルゲ経営の為の勉強をして開いたと言っていた。英語とスペイン語を話せる。
カミーノに来てから思うのは、英語やスペイン語をもう少しすらすらと話せるようになりたいなあということ。クリスティーンにしてもロジャーさんにしても、メレディスにしても他の国の言葉を当たり前のように話せる。
日本でも、職場にいた二人のインドネシアの子達はすらすら日本語を……しかも丁寧語や敬語を話せていた。少し、いやかなり羨ましい。
カミーノ中もそうだけれど、私も帰ったら英語とスペイン語を日常会話くらい話せるように勉強しよう。
夕飯の後、皆で片付けをして、夕陽を見に丘に上がった。
ローリーさんおすすめの夕陽は、これまでカミーノ中に見た夕陽の中で確かに一番綺麗だった。
![](https://assets.st-note.com/img/1696511666123-P7GDfcndGu.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1696511666523-IXK5wdX9kn.jpg?width=800)
こうして見るとみんなばらばらの国からカミーノに来たのに、いつの間にかに知り合いになっていた。
不思議な縁だなあと思う。
エクアドルの、教師をしている女性のお誘いで、日が沈んでから夜食を食べに行った。
バーでトルティージャを食べた。実を言うと、スープとパンだけでは足りなかったのだ。
ドナティーボだと、ひょっとしたら食料を用意するのが大変なのかもしれない。アルベルゲに帰ってから、寄付金を追加でもう少し支払った。
どうかいつまでも元気で、ペルグリーノ(巡礼者)に素敵な夕焼けを紹介してくれますようにと願いをこめて。
明日は少し遠く26km。
一人で歩く予定なので、早めに就寝した。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?