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極東から極西へ7:カミーノ編day4(Pamplona〜Puente la Reina)


前回の粗筋
パンプローナまでの強行軍。
もう2度とやっちゃダメ。


 前回の話

 
 今回は、行程表通りの目的地。プエンテ・ラ・レイナへ。女王の橋の名前の街までえっちらおっちら向かう。



・巡礼ショップへ

 朝6時に起き、準備をした。
 洗濯物が遅い到着のせいもあり、乾いていない。洗濯物入れに再び突っ込んで、パッキングが終わってから生ハムとチーズのサンドイッチを作って食べた。
 ブルゲーテから運んできた桃も食べた。変わった形の桃だったけれど、味が濃くて美味しい。

 そんなこんなで、チェックアウトはなんと8時。時間が押したので、Sさんのストックを買いにお店に行くことにした。私はビスカレッタから果物を買い物バッグに入れて右肩に担いでいた。これが良くなかったようで、宿に着いてみたら綺麗に持ち手通りにあざになってしまっていた。
 肩が限界なのでストックを返してもらう必要があったのだ。

 お店の中は巡礼グッズで一杯。
 ピンバッジや、ワッペン、Tシャツなんかもある。帰っても使えそうな首に巻く何かとピンバッジ、そして水用のボトルを買った。これでオリソンから一緒だったペットボトルとさようなら。軽くて、丈夫で、良く耐えてくれた。


こんな感じの首に巻くやつ。万能。


 Sさんがストックを見ていると、にこやかな店員さんが英語とスペイン語を交えて話しかけてくれた。遠くから見守っていると
「マダム!」と声を掛けられた。
 使い方を説明してくれると言う。和訳してSさんに伝えて、無事に購入が完了した。

 街中でボトルを捨てて(街中いたるところにゴミ箱があり、地面にあまりゴミが落ちていない)、新しいボトルをザックのポケットに差した。

 ちょーっとだけ、モホン(道標)Tシャツ欲しかったなあ。

・Pamplona〜Camino del Peldon


 パンプローナから目指すはペルドン峠。直訳すると「すみません峠」……じゃなくて「赦しの峠」。もしも事故があって殉教しても、サンティアゴ・デ・コンポステーラに行ったのと同じように許されるからこの名前。お遍路さんとか、お伊勢参りでも似たの無かったかな?
 市役所に寄る。Sさんが、市役所の建物に突撃して行く後ろ姿を見守った。本当にもらえるの?

「押してくれるってー!」
「流石。突撃系巡礼者!」

 話せなくてもなんとかなる。 
 固い感じの役所の人だったけれど、スタンプを推した後はにっこり笑顔。本当に笑顔の素敵な人が多い。


こんな威風堂々の建物に突撃したSさん。

 ストックがあるので、肩と腕がやや楽になり、意気揚々と向かった。Sさんは両足にマメができてしまったようで、靴からサンダルに履き替えていた。
 途中ナバラ大学でスタンプをもらい、市街地をどんどん進む。やがて丘の上に、風車が幾つも現れた。

大学の入り口。青と黄色でモホン色。


 畑の中を進み、 丘を登り始める。これが思ったよりハード。最初は好天に恵まれて和やかに歩いていた面々の顔が歪みはじめる。  


遠くに風車が見える。

 丘の麓zariquiegui(読めず)の町で教会とカフェでそれぞれスタンプを貰う。売店で私はリンゴを、Sさんは桃と松の実を買った。
 教会の広場で小休止。

丘の麓に着いた


 ところが、リンゴを齧っていると突然

 ブブブブブブ!

 と羽音が!
 広場にいた4人でパッと空を見上げた。果物齧っているし、蜂じゃないかと思ったのだ。真っ青な空には、ドローンが一機。UFOみたいに浮かんでいた。

「びっくりした。蜂だと思ったわ」
「私も! でっかい蜂が飛んできたんだと思った」

 口々に言いあって場が和む。
 右のベンチに座っていた女性が足を痛そうにさすっていた。

「足、大丈夫?」
「大丈夫。ちょっとマメがね」

 尋ねるとそう言って肩をすくめた。もう一人の女性も心配して何か尋ねると、ピレネー越えでソールが剥げて、中に石が入ってしまったんだと言っていた。
 パンプローナで新しい靴を買ったらしい。

 水を補充し、目指すはペルドン峠。
 イバラや水溜まりのある道を進んだ。風がやや強くなり、巨大な風力発電の風車が空を切る音が近くなる。
 映画で観た景色が広がっていた。


良く登ってきたなあ。


 頂上付近で、マメが出来たと言っていた女性が足を引きずっていた。Sさんが、絆創膏を渡すと、すごく喜んでくれた。

 ペルドン峠には有名なモニュメントがあり、皆写真を撮りあっていた。
 絆創膏をあげた女性が、お礼に私達の写真も撮ってくれた。


良く見るといる。
丘の反対側に広がる景色。

・Camino del Peldon〜Puente la Reina

 ペルドン峠を登り切ると今度はずっと下り坂。かなり急で、峠の上で、警備隊の人が緊急連絡先のカードを配っていたのも頷ける。

「英語かスペイン語話せる? 英語ね。何かあったら緑の番号に連絡して!」

 そう言えば、土地の救急車や警察なんかの番号は、スペイン語が話せないこともあって調べてこなかった。
 坂を降りきるとオリーブや葡萄の畑の中の道になる。空気が乾燥していて直射日光が強く日向は暑い。けれど、風は冷たいので日影に行くと体感気温が変わるくらい涼しい。ペルドン峠程ではない、程良いアップダウンを楽しんだ。


畑の道


 途中、ドナティーボ(寄付)の給水所件食べ物所があり、ニンニクトースト一切れと水を頂いた。コインを投下して、齧りながら歩く。オリーブオイルが効いていて美味しい。
 畑の中の道、好きだなあ。
 
 

聖堂を観ながら街歩き
家の壁にカミーノの絵が描いてある
プエンテ・ラ・レイナの市街地
女王の橋


 今日は街中を通ることが比較的多い日だ。
 未だバスク地方ではあると思うのだが、家の雰囲気が変わってきた気がする。
 なんだかんだパンプローナを出るのが遅くなってしまったけれど、周りに人もいて、良いペースで歩けた。
 途中、お祭りの準備をしている街があった。坂道にいた猫のトラップにSさんが引っかかる。猫が可愛いからしかたがない。

 プエンテ・ラ・レイナに辿り着き、中世の市街地の街並みを観ながら今日の宿を目指した。
 女王の橋を渡り(巡礼者の為に作った橋)、丘を登るとアルベルゲが。

「最後の最後に登らせんじゃん?」
「きついっすねー」
 
 荷物を下ろして、シャワーと洗濯を済ませて、少し休むとご飯の時間。
 イタリア人のグループと一緒で、ネイティブイタリアンのトークには当然着いていけない。イタリア訛りの英語で、男性が会話の説明をしてくれた。
 一人の女の子は19歳で旅しているのだと言う。オリエンタルな世界に興味があると言っていた。
 後から来たオーストラリアの3人中、2人は看護師だそうだ。

 夕食後に風に辺りに庭に出ると、アジア人の男性が。

「¡Hola!」
「オ……ひょっとして、日本人の方ですか?」
「え! 日本人、ですか? 初めて会った!」

 カミーノ初めての日本人。
 Sさん以外の2度目の日本語(台湾の子が1度目)。サンジャンから来たそうだ。初日の嵐の話を少しした。心強いですね、とお互いに言い合って別れた。
 
 毎日が、一期一会。
 ひょっとしたら一期一会じゃないかもだけど。
 と、分かるのはまた後日。


 次の話


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