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映画雑談『タイタニック:ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター』

キャシー・ベイツがハンマーを振り下ろす映画も好きですが、ケイト・ウィンスレットが斧を振り下ろす映画も大好きです。あらためて大きなスクリーンで観ると、ローズはいい腕っぷしをしていましたね。4K/HFR、HDR、Atmos音響といった、実は私もよくわかっていない素晴らしい技術で強化されてあの船が帰ってきました。『タイタニック:ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター』は、最高でした。

DVDや動画サイト、テレビ放送などでお手軽に鑑賞できるようになったといえど、これほどの大作なら機会があれば何度でも映画館で観たいものです。
残念ながら大阪ではIMAXレーザーGTでの上映がなかったため、私としてはドルビーシネマ一択です。予約開始の0時ジャストにネット予約して、結構な良席を確保しました。まさにタイタニック乗船チケットをゲットしたジャックのごとき高揚感です。(しかし本当に幸運だったのは、カードで負けて乗船出来なかったあの兄ちゃんのほうなのですが)

さて、いまさらこの作品について語るのもアレなので、内容に関してはあまり触れないでおきますが、とにかく怒涛の大画面に大音響で、大惨事の中の大恋愛を大体験させていただき、大満足です。

終了後にしばらく放心状態で座ったままでいると、前の席にいた高校生と思われる女性たちが興奮気味に喋っているのが聞こえました。
「これ、1900年代の映画なん!? 1900年代で、こんなん作れたん!? うそやん! うそやん!」
なるほど彼女たちからすれば、生まれる前の世界なんて、20世紀も平成初期も昭和も、「昔」という意味では石器時代と同列の感覚なのかもしれませんね。「90年代」ではなく「1900年代」と言っていましたし。

かくいう私も『風と共に去りぬ』をリバイバルで観たとき、同じように「戦前にこんな映画が作れるはずないやん!」と言っていた記憶があります。きっと近くにいた見知らぬ先輩氏はそれを聞き、今の私のような感慨を持ったことでしょう。
そして『タイタニック』で描かれていたことは、まさにそれであったのだと思います。自分の知らない時代や知らない世界にも人がいて、情熱を交わし合っていたということです。

その沈没船は遠い昔の歴史の1ピースとして、まるで記号のように語られる扱いになってしまいました。
しかしそこには多くの人々の記憶、喜びや悲しみ、希望が間違いなく存在したのです。それを忘れ去るわけにはいきません。キャメロン監督は、その思いをローズに託したのでしょう。
ローズがジャックの手錠の鎖を断ち切るシーンからは、守られるヒロインではなく自らのアンチェイン、自分の生き方を自分自身で決める意志を感じました。その後、力強く生き抜いてきたローズの誇らしげな写真の数々はジャックとの誓いの証であり、また犠牲者たちへの弔いなのだと思います。

本編の静かな終わり方も印象的でした。ただ手に触れたぬくもりだけを思い出として残し、青いダイヤは深い海の底へと消えてゆく。それでいいのでしょう。ラストシーン、夢の中で、若く華やいだローズとジャックが笑顔で抱きしめ合う。その一瞬の夢こそが、消えることのない永遠の宝物なのですから。『タイタニック』は、やはり名作でした。次は30周年記念版を、楽しみに待っています。


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