見出し画像

構想2日+開設3日で196人のコミュニティが作れた話〜人生はいつでも文化祭〜

きっかけは、1つの新聞記事だった。

母校、福岡県立修猷館高校の新大学生になりたての卒業生が、コロナによる休校で不安を抱える在校生(後輩)に、受験勉強をオンラインで教える、というもの。

若い後輩たちの行動力と熱心さに胸が熱くなると同時に、「世のため、人のため」を標榜する校風だったので、修猷生だったらやっても全く不思議じゃないよな、という気持ちもあった。そして、私も何かできたら良いのにな、という思いもー。

モヤモヤに息を吹き込んでくれたのは、同じく、記事を見て何かを感じた高校の同期だった。

スクリーンショット 2020-05-26 17.32.45

別に最初から、崇高な思いがあったわけじゃない。

でも、この同期からのリプを見て、「何かやれたら面白そうだな〜」とシンプルに思った。考えただけでワクワクした。なので、やってみた。

結果、この友人のリプから2日のうちに卒業生限定の「オンラインOBOG訪問」なるグループ・サイトを開設した。そして開設から1日で111人、3日で196人、15日で269人のコミュニティ規模になった。(補足しておくと、もちろんこの活動は「業務外」の有志企画なため、平日夜+土日の作業しかしていない。)

そして実際に、6月1日から選考が始まる貴重なタイミングで、すでに50件近くの「まだここにない出会い=オンラインOBOG訪問」の機会を生み出すことができた

もちろん、「母校」という強力な共通項があるからこそ出来たコミュニティであることは百も承知だ。だとしても、今回のコミュニティの0→1立ち上げに伴う経験・学びは、他のコミュニティ立ち上げや運営でも汎用的に使えるものだと思う。(まだ立ち上げて15日目だけど笑)

この数日の間に起こった、さながら準備に追われながらも、毎日がキラキラ充実した「文化祭」前のような出来事を、具体と抽象両面から、備忘録的に残していきたい。

「卒業生専用オンラインOBOG訪問」とは?

修猷館高校卒業生専用のFacebookの非公開グループを起点とした、OBOG訪問のマッチング用コミュニティおよびグループ内での企画をさしている。2020年5月14日に有志4人で立ち上げた。立ち上げ15日目の今日時点で、269人のコミュニティになっている。

グループの参加は卒業生であることの確認 × アンケートの回答がないと承認しないので、卒業生だけの「安心・安全」なコミュニティが保たれている。

スクリーンショット 2020-05-28 21.13.08

==オンラインOBOG訪問の流れ==
①参加アンケート回答(社会人:過去職歴など、学生:希望業界、具体的な企業名、希望職種、何年生など)
②非公開グループ参加申請・承認
③グループ内自己紹介情報をみて、希望にあう人がいたら、スレッド上で訪問依頼をする
④並行で運営からマッチング情報を個別Messangerで提供
⑤依頼/マッチング成立したら、学生⇄社会人で個別日程調整
⑥オンラインでOBOG訪問
⑦事後アンケート
====
非公式な企画ではあるが、社会人には自分の企業/所属のOBOG訪問規定を遵守するよう伝えている。

タイムライン

準備の過程を時系列でまとめると、こんな感じ。

画像18

ではここから早速、今回の0→1コミュニティ立ち上げで、汎用性のあるやって良かったこと・学びを説明していきたいと思う。組織づくり編・UI/UX編・裏方編に分けて、11のポイントをお伝えしていく。

組織づくり編:アジャイル型開発

まず作ってみる、動いてみる、反応を見てみる。気付いたら、あとで改善していく。今回は、このサイクルが非常によくハマったし、回った。

例:Facebookページが不明な人の連絡漏れをなくすため、メアドをアンケート項目に追加

スクリーンショット 2020-05-26 18.46.54

例:非フレンドにグループ招待送っても気付かれない問題を、文言変更で軽減

スクリーンショット 2020-05-26 18.48.05

もちろん最初に気づけたら良かったが、想像していないフローの発生も立ち上げ時のあるあるエピソードなはず。コアメンバーが、細かいところに気付いてくれてこそ成り立つチームプレーでした。

組織づくり編:チームビルディング

もちろんこの企画は1人でやっているわけでは全くない。1人だったら多分2日で10円ハゲが出来て、途中で「すんませ〜ん、やっぱ気力持ちませんでした〜(テヘペロ)」と言って、サイト公開を投げ出していたことが容易に想像できる。意識的に行ったわけではなく、あくまで結果論だが、今回は、
・立ち上げコアメンバー:私含めて4人
・追加コアメンバー:4人
・インフルエンサー:社会人・学生合わせて7〜10人
・サポーター:社会人・学生合わせて25〜30 人
になった。インフルエンサーは、積極的に学年や部活のコミュニティに情報を拡散してくれる人、サポーターは企画や声かけなどに「前向きに協力しますね!」と反応をくれた人。

ポイントは、コアメンバーの得意・苦手を掴めていたこと&みんな違うタイプだったこと→補完関係が素晴らしかった!ただこれは完全に結果論なので、再現するとしたら、リーダーがいかに事前に性格やソフトスキルを把握できているか、だと思う。(ハードスキルは、地頭が良ければ追いつくから問題ない)

また、インフルエンサーやサポーターは、後述する「ビジョン」の明瞭さと、「1to1メッセージ」のおかげで増やせたと言っても過言ではない。(同じ学校だけど8割方、はじめまして組でした)

組織づくり編:ビジョンの明瞭さ

何をするか、が曖昧なままコミュニティを立ち上げることも正直できた。逆に、学生だけにメリットがあるコミュニティに、狭めることもできた。でも、私たちは最初から短期と中長期のビジョンを立てて、コミュニティを立ち上げることにした。

スクリーンショット 2020-05-26 23.10.53

Webサイトより抜粋

せっかく作るなら、持続的なコミュニティにしたい、一過性のものにはしたくない、という気持ちはコアメンバーに共通してあった。(バタバタしてて細かい言葉尻まで議論はしてないけど)

OBOGの繋がりを学生に提供することはもちろん、あまねく"キャリア"を対象にした繋がりを作りたいこと、社会人同士の繋がりも作りたいこと、を明確に意思表示をしてコミュニティの方向性を早い段階で提示できたのは、「一体感」を持つ上でとても大事だな、と感じた。

組織づくり編:スピード!スピード!スピード!

OBOG訪問のマッチングが50件程度生まれた、と書いたが、実はこの「オンラインOBOG訪問」もニーズに圧されてローンチを前倒した、というのが正しい。元々はもっとゆっくりぼんやり進める予定だった。

スイッチが入ったのは構想2日目の金曜夜。「グループ作るよ!」投稿を見た学生からポツポツと連絡がきはじめた中、ある1人からのメッセージだった。

スクリーンショット 2020-05-26 23.40.05

急がなきゃ、と直感的に思った。私たちにはいつもの「1日」だけど、彼らにとっては本選考が始まる6月1日まで1分1秒でも無駄にしたくないはずだ。自分が就活生の時、同じ気持ちだったのを思い出した。なのでコアメンバーには、日曜打ち合わせの予定だったのを、こういう背景で先に進めて行きたいと伝えた。

スクリーンショット 2020-05-26 18.36.04

即レスでOKしてくれるコアメンバーズ、神。

プロダクトもBurning needs(今解決したい課題)を捉えてPMF(Product Market Fit)させることが最も大事だとよく言われるが、これもある種そのBurning needsを捉えて、対応を柔軟に変えられた例になるのかもしれない。

UI/UX編:アクション直結のアイコン・カバー画像

さて、次にここから、UI/UXの観点で意識したことを3点伝えたい。コミュニティは、どんなに崇高なビジョンを抱えていても、アクションが活発でなければ=そのコミュニティから得られるメリットが少なければ、必然的に非アクティブ層にチャーンしてしまう。

まず大事にしたのは、コミュニティメンバーがアクションしやすい「アイコン」や「カバー」の作成だ。

オシャレなMOMA的なカバーアートを作るのも、コミュニティがそれを必要とするなら、全然ありだ。ただ私たちのコミュニティが目指すのは、「オシャレ」ではない。大前提、「会ったことの無い人たち同士のコミュニティ」なのだ。知らない人ばかりのコミュニティで、何をすれば良いかわからないのは、満足度を下げ、すぐに退会してしまう可能性すらある。コミュニティ目的から外れすぎる投稿も、ストレスになるだろう。

結果、作ったアイコンやカバーの事例は以下のものだ。

スクリーンショット 2020-05-28 21.16.09

画像9

念の為伝えておくが、今回の立ち上げメンバーで、デザイナー経験者は誰一人としていない。全部、グラフィックデザインの無料プラットフォームCanvaでテンプレをちょいと加工して作った素人作品なので、プロとは比べ物にならない。ただ、メッセージやフォントサイズ、色味は、素人なりに分かりやすさに全力を尽くした。

結果、この後書く「前にならえ戦略」も相まって、グループフィードは非常に整理され、何をすれば良いかが感覚的にわかる状態になったと手前味噌ながら思う。

UI/UX編:投稿ハードルを下げる(前にならえ戦略)

心理学で言う「同調行動」だが、やはり先行者がいること・先行者と同じことをやれば良いと分かっている安心感は計り知れない。すでに述べたアイコンやカバー画像で目を引きアクションを誘発した上で、「先行者を複数作っておく」、かつ真似しやすいように「フォーマットを作る」。ここがポイントだった。

無題のプレゼンテーション (1)

LINEのやりとりから見えるように、コアメンバーにはグループを全体公開する前に自己紹介を書いてもらうように共有した。全体公開する時点で、「すでに前例が複数ある」と言う状況を、戦略的に作り出していた

UI/UX編:Google サイトの作成

これも立ち上げ当初から考えていたわけではなく、流れで形にすることが決まった打ち手の1つ。

先輩OBから「せっかくなら企画の説明がまとまった、Google サイトを立ち上げてはどうですか?広報にも使えますし。」と構想2日目にご意見いただき、「確かに!」と思い、作ってみたのがこちら

スクリーンショット 2020-05-28 23.42.13

結論、合計1.5時間(!!!)で難なく作成できた。

先輩OB(ただし一度もお会いしたことはないし、直接声を聞いたことすらない。Messangerのみ笑)との共同作業だったが、①大枠の雛形作る→②先輩が細かいところ加筆してくれる(アンケート埋め込みとか、アイコン作成とか、ボタン追加とか)→③微調整 で難なく終わった。ありがとう、クラウドの時代・・・。

以降、新規の告知には、このサイトを見てね、と言えば全て情報網羅できる形になったので、運営の連絡の手間を減らしたと言う点で、作成したコスパは非常に高かった。まだGoogle サイトを作ったことがない方は、ぜひ一度お試しあ〜れ。

参考記事:rakumo「Google サイトは本当に素人でも使いこなせる? 実際に社内ポータルを作ってみた(2019.3.20)

ちなみにとても細かいが、フッター周りは気をつけた。

スクリーンショット 2020-05-29 0.18.49

あくまで有志企画のため、学校側・同窓会側に迷惑がかからぬよう、最大限配慮した形だ。

裏方編:管理用共通アカウントの作成

さて、最後のパートは地味だけど、必須なパート・裏方編。

まずは当然といえば当然だが、「なるはやで管理用共通アカウントは作るべし」だ。実は最初、こんなにトントン進むと思っておらず、個人アカウントでアンケート作成などを進めてしまっていた。しかし、中長期での運用観点&個人情報取り扱いの観点が危惧されたので、「これは増えそう」と感じた1日目夜には、管理者アカウントに切り替えた。

Facebookのビジネスアカウントの作成は少し出遅れたが、ビジネスアカウント作成により、
・オフィシャル感のある投稿と、プライベートな投稿を分けられる
・コアメンバーが匿名で投稿できる(≒コアメンバーの個人アカウントばかりが投稿乱発していると内輪感が出るのを避けた)
とができるようになった。個人的には、Facebookビジネスページに詳しくなかったので、色んな機能が試せたのも学びがあった。(今はユニット機能を使って、社会人業界別に情報整理をしてみようと躍起)

参考記事:デジ研 Facebookページ(ビジネスアカウント)の作成方法と運用方法のコツ(2019.6.27)

裏方編:カスタマーサクセス命(1to1メッセージ対応)

キャッチーにしようと今どきな単語を並べてみたが、要するに「相手の目線に立って、めっちゃ丁寧にメッセージした」。ただそれだけ。会話を楽しんだ、とかの方が正しいかもしれない。

(左)業界研究などをやり切ってから訪問すべきか?の質問に、逆に早いうちから話を聞くことで、就活の軸が見えるかもしれないですよ、と言う実体験ベースの回答(特にOBOG訪問の押し売りはしない)
(右)少し反応が空いた学生へのフォロー/直前でアクションしそうな感じだったので、何か後押しできる情報提供をと思いコミュニケーション。選択肢も2つ(大人数型のウェビナー案内&個人指名で人となりの情報追加)提示

無題のプレゼンテーション (1)

学生の主体性も求めたかったので、OBOG訪問をするかどうかの最終判断や、2回目以降のマッチングは、コアメンバーから積極的に働きかけてはいない。

ただ今回のコミュニティには、例えば「2年後にOBOG訪問したい人」などもおり、将来必要な時にアクションしやすいこと=中長期の予測LTVを引き上げることは必要だった。結果、下のカスタマーサクセスの分類でいう「ハイタッチ」コミュニケーション=個別メッセージを多めにとることになった。

スクリーンショット 2020-05-29 18.16.06

参考記事:Wantedly 顧客とのタッチモデルを整理し、「循環するカスタマーマーケティング」を目指す。カスタマーサクセス大特集#2 (2019.8.29)

もちろんハイタッチだけだとコアメンバーも疲弊する(笑)ので、各業界の社会人サポーターと協力して、ロータッチのウェビナー企画を複数計画中である。

裏方編:高エンゲージメントを狙う良質なコンテンツ作成

見出しは強く出たものの、実は改善の余地大いにありな箇所。というよりまだそんなに作成できてない(笑)1つ作成して良かったな、と思っているのは、コミュニティ参加者属性の可視化。

社会人OBOGの所属業界・団体割合

N=1の情報が増えて嬉しい一方で、このコミュニティはどんな人がいるのか、どんなニーズの元に集まった人たちなのか、の共通点が少し分かるだけでも、エンゲージメントは飛躍的に高まる。

共通点は、与えるという行為に多大な影響をおよぼす。

『GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代』アダム・グラント著 三笠書房

裏方編:ナレッジシェアリング 

いよいよ最後の項目。何度も言うが、この企画は私一人で始めたものでは全くないし、私一人で200人超のコミュニティにできたわけでも全くない。コアメンバーをはじめとして、良いナレッジを勝手に共有しあって、「良いコミュニティにしよう!」と、有志企画とは思えない熱量で取り組んでくれている。(もちろん皆んなガッツリ働いている)

スクリーンショット 2020-05-29 19.29.28

ウェビナーツールのzoom以外候補を勝手に探してきて、メリデメまでまとめてくれてる 一人だと見落とす情報もチームだとカバーできる

スクリーンショット 2020-05-29 19.31.11

就活生の生声ヒアリング→考察とアイディアのまとめを送ってくれたコンサルの後輩 行動力に脱帽

良いナレッジの共有はもちろん、散見され始めた課題への対応ナレッジもどんどん共有されているのが、健全なコミュニティだなと思っている。

これから取り組むこと

と、ここまで11のポイントをお伝えしてきたが、すでに課題も出てきている。

例えば
・Facebookが就活生にとって、「未知」かつ「使わない」ツールなこと
・同窓生とはいえ、知らない人にFacebook上で声をかけるのは心理的ハードルが高いこと
・1学年400人もいるので、リーチ率がまだまだ低いこと
・地方と都会で、情報量やひもづく意識の違いがあること
・OBOG訪問=名のある企業、のバイアスができており、知名度を気にする層、非民間志望者/従事者、職業以外のキャリア(例えば主婦・主夫)の層に潜在的な溝を作ってしまっていること など。

社会人の自己満足にならないように、ニーズを外さない企画の提供や、運営の改善を進めていきたいと思っている。(何せまだ立ち上げて半月だ。)

一方で、社会人同士の横・ナナメの繋がりも個人的にはもっと作っていきたい。参加者アンケートでも、9割以上の社会人がキャリア相談や交流企画を、現に欲しているようだし。

スクリーンショット 2020-05-29 21.20.40

社会人向け参加アンケートより抜粋(N=196)

社会に出てから、全く知らないコミュニティで人脈を広げることって、かなりパワーがいる。「同じ高校」という要素は、知らない中での人脈作りより、格段にハードルが下がるし、世代を超えた共通の話題は作りやすい。(地方公立の伝統校なので、行事や部活、学食のメニュー、名物先生など、話題になりそうなものをあげれば枚挙に暇がない)

自分自身、運営の立場で多くの世代の方と連絡をとって、実際に話してみたいなという人がたくさんいたので、他のメンバーと協力しながら、年間を通じたコミュニティの活性化を進めていきたいと思う。

文化祭は作れる

最後は完全に個人の見解。

とにかくこの半月は楽しかった!その一言に尽きる。夜やりたいことがあると、日中の通常業務の生産性も加速度的に上がる。なんて良いサイクルなんだ・・・。(基本的に私はワーカーホリック傾向です笑)

もちろん参加してくれている学生・社会人のための企画なので自分の楽しい欲求を満たすためだけにはしたくない。でもここ最近で「自分の楽しい/ワクワクする」ことを、仕事や副業・業務外プロジェクトを通して「生み出せるか」という発想に変わってきたのは、すごく大きい変化だと我ながら思っている。

文化祭は、いくつになったって、自分で「作り出せる」。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?