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【短編小説】悪役令嬢のいやがらせのせいで王子に婚約破棄されたうんこ令嬢は、それでも一途に王子を想い続ける

『小説家になろう』にいた頃に、流行りジャンルへのアンチテーゼとして書いた怪作です。


 ああ不安だ。私なんかがこのウンコッコ王国の王子であるブリプ様と結婚して本当に良いのだろうか。

 ブリプ王子は優しくてかっこよくて、うんこもエレガントな香りがして、本当に非の打ち所のない完璧男子なの。

 私がお義姉ねえ様にいじめられていたのも助けてくれたし、転びそうになった時に抱きかかえられた時もキュンキュンしちゃった。そのまま彼の厚い胸板で眠ったんだぁ。ふふ、素敵な思い出。

 でも、王子は知らない。私が元々うんこだったことを。私は1年前まで、うんこだった。その頃は今よりもさらにひどいいじめを受けていて、毎日死ぬことだけを考えてた。

 そんなある日に魔女様が現れて、私を人間の姿にしてくださったの。自分でもビビるくらいの美女になった私は、その3日後に開催された舞踏会に忍び込んだ。大きめの女性の後ろにへばりついていた所を王子に見つかり、怒られるかと思ったら一目惚れされ、婚約に至った。

 もしいつか魔法が解けて、普通のうんこに戻ってしまったら⋯⋯! 王子は変わらぬ愛を私にくれるだろうか。私をトイレに流したりしないだろうか。こわい、こわいよ⋯⋯

 コンコン

「ピーコちゃん、入っていい? ちょっと話があるんだけど」

 ブリプ王子の声だ。私は緊張しながらも、王子に返事をした。

「は、はい、どうぞ!」

 ドアを開け、スルにょん、スルにょん、とにょんにょんな足どりで部屋に入る王子。

「ピーコちゃん、君のツノにはうんこが刺さっていない。なぜなのかは分からないが、それはとてもいい事だと思う。刺さってたら気持ち悪いからね」

「ありがとうございます!」

「チュッ」

 王子は私のほっぺたにキスをして部屋を出ていった。口へのキスは結婚式までお預けなんだって! いけず!

 この国の女性にはツノが生えているんだけど、彼女たちは自分がした最新のうんこをそのツノにぶっ刺して生活しているの。何でそんなことをするのかという研究をしていた博士がいたんだけど、DNAにそう刻まれているからという結論が出たわ。

 私は人間じゃないからうんこを刺さないのは当たり前なのよね。というか、頭から生えてるツノにうんこなんて刺したら、ずっとうんこくさいじゃないの。あいつらマジでなんなのよ。ご先祖さまの顔が見てみたいわね。

 プルルルルルル

 うんこスマホが鳴っている。お義姉様からだ。お義姉様は苦手だけれど、緊急の連絡かもしれないから出るしかないわね。

「もしもし」

『お母さんが倒れたの! あなたに会いたがってるから、早くうちに帰ってきてちょうだい!』

 お義姉様のお母様は唯一私に優しくしてくれた人。本当の母親のように愛情を注いでくれていて、いつも頭を撫でてくれる。うんこ時代もそうだった。

 お義姉様によるいじめは、いつもお母様が出掛けている間に起こっていた。タイミングを見計らって私のもとへ金属バットを持って近づき、何回も何回も私目掛けて振り下ろすのだ。

 何度ぺちゃんこのうんこになったことだろう。その度にくるりんぱして棒状に戻っていたんだ。あれは大変だったなぁ。

『聞いてるの? ピーコ!』

「あ! はい、すぐ戻ります!」

 私は今、王子と一緒に城に住んでいる。もう家には帰らないつもりだったけど、お母様の一大事だから仕方がないわ。大丈夫かしら、お母様⋯⋯

 私はすぐに王子の部屋に行き、事情を説明した。すると王子は二つ返事で許可してくれて、白馬で家まで送ってくれた。王子の前に乗せられたから、とても緊張したわ。

 王子のムキムキの胸筋と腹筋を背中に感じながら、家までの時間を過ごした。

「ピーコ! 待ってたわよ! あ、王子様、ピーコを送っていただいてありがとうございました! これからもよろしくお願いいたします!」

「ご丁寧にありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いしますね。ではまた」

 王子はホワイトヒヒーンから降りることなく、方向転換して城まで走っていった。今気がついたけど、王子はズボンを履いていなかった。道中私の背中に生チンが当たっていたということになる。うれちい。

「ピーコ、よくもあんなイケメン金持ちと婚約したわね! あんたじゃ不釣り合いなのよ! いいこと? あんたはね、人間じゃなくてうんこなの! 見た目が美女になったところで中身はうんこなの! うんこなんだよおめぇはァ!」

 王子がいなくなった途端に私に強く当たり始めるお義姉様。ああ、帰ってきたくなかった。でもお母様のため。お母様の容態を確認しなきゃ!

「お母様は寝ていらっしゃるんですか?」

「フフ、お母さんは旅行中よ。1週間ほどウンチョラスモ王国を観光してくるそうよ」

 私はお義姉様が何を言っているのか分からなかった。言葉の意味を理解しようと考えていたら、両手に縄をかけられてしまった。

 両手を後ろで縛られ、お義姉様に家の中へ連れていかれる。いったいどういうことなの?

「あんたには地獄を見せるわ。うんこの分際で王子と結婚しようだなんて、ちゃんちゃらおかしいからね。⋯⋯ちゃんちゃらおかしいぜ!」

 そう言うとお義姉様は私を家の柱に縛り付けた。そして、私の前に巨大な姿見を置いた。なにこれ!? 見たくない! 私はこんなもの、見たくない!

「お義姉様、もうやめて⋯⋯」

「まだ始めてから14秒よ? さすがにギブアップには早過ぎないかしら? まあギブアップしたところで解放しないけどねぇ」

「ぐぎぃいいいいいいい!」

 私は歯を食いしばり、拷問に耐え続けた。私はずっと縛られっぱなしで、お義姉様は話し掛けてもこない。私を孤独にするつもりなんだ。

「ふあぁ」

 お義姉様は呑気にあくびをしている。私のことなどはなからいなかったかのように振る舞っている。

 ツノのうんこを交換し、古いうんこを茹で上がったパスタに絡ませている。9時間空気にさらしたうんこはすでに固まっていたので、ゆで汁を少し加えて溶いている。

 その後お義姉様はしっこシャワーで頭と身体を洗い、しっこ風呂に浸かっていた。

「さっぱりシュワシュワーッ!」

 風呂上がりのお義姉様がご機嫌そうに言っている。と思ったらこちらをチラリと確認した。なんだろう。

「あんたさ⋯⋯」

 そう言いながらこちらに近づいてくる。

「生意気なんだよ!」

 お義姉様の蹴りが私のすねに炸裂する。お義姉様は空手マスターなので、戦闘能力がずば抜けているのだ。私はうんこだから全く痛くないけど。心が痛いなぁ。

「クソうんこが! うんこクソピーコが! 死ね! 死ね! うんこ死ね!」

 何度も何度も私の身体を蹴るお義姉様。私はもう反抗する気力もない。ただただ悲しい。王子様、助けに来てくれないかしら。

「あースッキリした。寝よ」

 ペラペラになった私を見ながらお義姉様が言った。お義姉様はそのままうんこベッドに入り、うんこエアコンとうんこテレビをつけ、眠りについた。

『うんこニュースです。我が国ウンコッコ王国のブリプ王子と、うんこ令嬢のゲリゲリ・ピーコチャン氏の結婚式まであと3日となりました。皆様、お祝いの準備は出来ていますか? 盛大なパーティーが開かれますので、ぜひみんなで盛り上げましょう!』

 私は身動きも取れず暇なので、テレビを見るしかなかった。王子のことをずっと考えながら、テレビを見る。テレビに映る王子と私は、とてもお似合いの美男美女カップルに見えた。しかし、目の前の姿見に映る姿は違っていた。

『臨時うんこニュースです! たった今、ジャージャーシッコ共和国が我が国に宣戦布告をしました! 来週から攻撃をするとの事です! 結婚式が終わったらすぐに戦いモードです! 皆様、頭の片隅にでも入れて置いて下さいね! 戦争始まりますからね!』

 え! 戦争ですって!? 早く城に戻って結婚式だけはちゃんと済ませなきゃ! こんなところにいる場合じゃない! ふんっ! ⋯⋯ダメだ、私の力じゃこの縄はちぎれない。こんな時に王子のパワーがあれば⋯⋯フンッ! ダメね⋯⋯フンッ! 全然ビクともしないわね。

 プチュン

 タイマーでテレビが消えた。唯一の暇つぶしだったのに。それさえも奪われてしまった。うんこエアコンもけっこう寒いし、くさいし、最悪⋯⋯ふあぁ、私も眠くなってきちゃっ⋯⋯




 ブリリリリリリリ!

 お義姉様がセットしていたうんこアラームの音で私は目を覚ました。

「ふあぁ、あー、口がうんこくせぇ。歯ぁ磨こ」

 私だって歯磨きたいしお風呂に入りたいよ。

 プルルルルルル

 私のうんこスマホが鳴った。王子からだろうか。私は必死に足で取ろうとするが、ギリギリ届かない。

「あ、王子じゃん」

 歯磨き中のお義姉様が私のうんこスマホを手に取り、通話ボタンを押した。

『もしもし、お母様のご容態はどう?』

 お義姉様は私の顔の近くにうんこスマホを近づけた。

「王子! 助け――!」

 違う、ダメだ。王子を巻き込む訳にはいかないし、この姿見も見られたくない⋯⋯

 王子、私、どうすればいいの?

『助け⋯⋯? どこかに捕まってるのか? 言えない事情があるのか?』

「王子、来ちゃダメです⋯⋯! あと、私との婚約も⋯⋯」

『婚約がどうしたって!?』

「婚約を⋯⋯ぐすん、⋯⋯ながったことにぃ⋯⋯」

 言ってしまった。せっかく人間になれて、王子と結婚出来るところまでいったのに。これで白紙に戻る。私もまたお義姉様にいじめられる。

『誰だ、君を泣かせたやつは! 待ってろ! GPSを頼りにそっちへ行く! 無事でいてくれ!』

「王子⋯⋯!」

 こんな時なのに、胸がキュンとしてしまった。熱い人⋯⋯頼もしい。本当に私にはもったいない素敵な人。

 私は、私のためにこんなに必死になってくれる王子のことを信じようとせず、この鏡を見たら私のことを捨てるだろうと勝手に思っていた。私はバカだ。王子はそんな人じゃない。彼は外見じゃなく、中身を見てくれている人なんだ! 私は中身うんこだけど!

「面白いことになりそうねぇ。この姿見を見たらなんて言うかしらねぇ」

 お義姉様が私を見下しながら言う。王子はこの姿見に映った私を見ても何も言わないわ。王子は優しい人なの。

 パカラッパカラッパカラッパカラッ

 白ヒヒーン号の足音が聞こえる。王子が来てくれたんだ!

「ピーコちゃん! ⋯⋯縛られてるじゃないか! 大丈夫か!」

 王子は馬に乗ったまま家に突っ込んできた。柱に縛りつけられている私を見て驚いた様子だった。

「フフ、来たわね、王子様」

 うんこを塗った食パンを朝食にとっていたお義姉様がシッコーヒーを飲みながら言った。

「お義姉さん、どういうつもりですか!」

 王子は怒りをあらわにして、お義姉様を睨みつけた。力んだ拍子に筋肉が膨張し、身につけていた衣類が全て弾け飛んだ。

「こっちに来て、この姿見を見なさい。姿見に映るピーコ、いや、うんこの姿をね」

「⋯⋯⋯⋯」

 無言でこちらに近づいてきた王子は、姿見で私の姿を見ると、固まってしまった。

 無理はない。この鏡には人間サイズのうんこが映っているのだから。私は肉眼や写真で見ると人間だが、鏡にだけ本当の姿が映ってしまうのだ。でも、王子はこんなことで私を捨てたりなんかしない。そう信じてる。

「ピーコちゃん⋯⋯」

 王子は自分の尻に手を伸ばし、穴から何かを取り出した。

「黄金うんこの砂時計だ。これを売れば数年は遊んで暮らせるだろう。今までありがとう。では、私はこれで⋯⋯」

 ショックで身体がしぼんだ王子は背中に白馬を乗せてどこかへ行ってしまった。王子はもう戻って来ないだろう。私は捨てられた。信じてた私がバカだったんだ。

 王子との思い出は大切な宝物だけど、今は思い出せないほど心が苦しい。私はもう、終わりなのかな。

「残念だったわね〜、あーかわいそう」

 そう言ってお義姉様は私を縛っていた縄をほどいた。私は彼女を睨みつけた。

「なによその反抗的な目は! 王子が決めたことなのよ! 私はその手助けをしてあげただけ。結局あんたはあの男と結婚出来ないのよ! うんこが!」

 こわい。やり返してやりたいが、こわすぎてお義姉様には反抗出来ない。またいじめられる生活に戻るのね。一生こうなのかしら⋯⋯

 それから1日、2日と過ぎ、結婚式をする予定だった日になったが、当然王子から連絡は来なかった。それからまた日が過ぎ、ジャージャーシッコ共和国との戦争が始まった。

 空を飛ぶシッコの飛行機が、黄色い液体を街にばら撒いてゆく。ウンコッコ王国も負けじとうんこ戦闘機を飛ばし、うんこ爆弾を無数に投下してゆく。なぜ戦争はなくならないのか。私は悲しくて仕方がなかった。

 そんな折、外から帰ってきたお義姉様が「王子が捕まった!」と私に教えてくれた。いい気味ね。私を捨てたうんこ嫌いのブリプ王子、あなたはそんなに簡単に捕まってしまうような軟弱者だったのね。王子⋯⋯死んだりしないわよね⋯⋯? 王子⋯⋯

 私は王子のニュースを見るため、うんこテレビをつけた。

『ジャージャーシッコ軍と中継が繋がっています! 王子が何か伝えたいことがあるそうです!』

『ジャージャーシッコ共和国上層部の者に頼みがある。私は強い。この筋肉があればこんな兵士達は6秒もあれば皆殺しに出来る。だが、わざわざ捕まりに来てやったのだ。私の命を差し出す代わりに、国民には手を出さないと約束してくれないか!』

『王子は自身の命と引き換えに、国民を救おうとしています! なんと素晴らしいお方!』

 王子! やっぱりあなたは優しい心の持ち主なのね! 王子の力になりたい⋯⋯! 王子を助けたい⋯⋯! 神様どうか、どうか!

「ヒッヒッヒ」

 天に願いが通じたのか、どこからか魔女様が現れた。人間にしてもらった時も、早くこの生活から抜け出したい! と強く思っていた所に現れたのだ。

「王子を助けたいのかい? ヒッヒッヒ」

「はい!」

 私は即答した。1分1秒でも早く王子のもとへ行きたいのだ。

「全てを失う覚悟はあるかい?」

「はい!」

 全て⋯⋯。分かっている。恐らく王子を助けたら、私は人ではなくなるのだろう。

「そうかい、なら力を与えてあげよう。国を滅ぼすことが出来る力だよ」

 魔女様が私の胸に手をかざすと、身体の奥からブリブリと力が湧いてきた。これが国を滅ぼす力⋯⋯すごいエネルギーだ。

「ありがとう魔女様! 私、行ってきます!」

 魔女様にお礼を言って、すぐに家を飛び出した。

「ああ、行ってらっしゃい。ヒッヒッヒ⋯⋯」






「そういうわけで、頼む。どうか国民の命だけは助けてやってくれ」

「ああ、分かった。お前を殺したらすぐにシッコ飛行機を止める。約束しよう、フフフ⋯⋯」

 剣を構え、王子の首に狙いを定めるジャージャーシッコ軍幹部、チョロチョロ・シーシー。王子はにっこりと笑い、下を向いている。

「さらばだ、ブリプ王子」

「ああ」

 ブビリピュポーッ!

 剣を振り下ろそうとしたチョロチョロの顔を黄土おうど色の液体がおおった。

「なんだこれは! ぺっ! ぺっ! にがっ!」

「ピーコちゃん、なんでここに!?」

 私はチョロチョロの顔めがけて下痢便を放ち、王子の前に出た。王子はひどく驚いた表情をしている。

「助けに来ました、王子」

「えっ!?」

 王子はさらに驚いた後、笑顔を見せてくれた。

「ありがとう、ピーコちゃん。あの時は済まなかった。いきなりだったもので動揺してしまって⋯⋯ピーコちゃん、危ない!」

 チョロチョロが最後の力を振り絞り、私の顔めがけて放尿していた。しかし私は負けない。全自動でうんこシールドが作動するからだ。魔女様から授かった力は人の域を軽く超えていた。

「す、すごい⋯⋯! ピーコちゃん、いったいどうやってそんな力を⋯⋯」

「話は後にしましょう。今からジャージャーシッコ共和国に行ってきます。待っててくださいね、王子!」

 王子はキョトンとしていた。無理もない。私は数日前まではあんなにか弱かったのだ。いきなり強くなったので、驚くのは当然だろう。

 うんこジェットで空を飛び、ウンコッコ王国の空にいるシッコ飛行機を全て叩き落とした後、ジャージャーシッコ共和国に向かった。

 私は身を削り、全身全霊で戦った。その結果ジャージャーシッコ共和国民は全員死に絶え、私はただのうんこになった。

 本当は王子と一緒になりたかった。本当はもっと楽しいことをたくさんしたかった。でも、王子が死んでしまうくらいなら、私は自分を犠牲にしてでも助けたかったんだ。私の選択は間違っていない。これで良かったんだ。

 力を使いすぎたようで、身体が思うように動かない。今お義姉様がここに来たら、確実に私は負けるだろう。そんな最期は嫌だけど、王子を救えたんだ。それだけで満足だ⋯⋯

「ピーコちゃん!」

 王子⋯⋯! ただのうんこなのに、私のことが分かるの!?

「ピーコちゃんだよね? ウンコッコ王国のために自分を犠牲にしてまで、こんな姿になってまで戦ってくれるなんて⋯⋯! ありがとう。ありがとう⋯⋯」

 王国のためじゃなくて、王子のためだぞっ。なんて恥ずかしくて言えないや。このまま王子の腕の中で死ねるのなら本望⋯⋯

「さっきの話の続きだけど、あの時は本当に済まなかった。ごめんよ! この1週間、ずっと考えていたんだ。私はどうするべきなのかと」

「王子⋯⋯」

「さっき死にそうになってみて分かったんだ。私にとって君がどれほど大きな存在だったのかが。あの時、君との思い出が走馬灯のように溢れてきたんだ。私は、君の笑顔ばかり思い出していた」

 照れるなぁ。

「改めて言わせてくれ。ピーコちゃん、私と結婚してくれないか?」

「もちろんです!」

 私は今、全身の力が抜けている。回復出来るか分からないが、もし元気になれたら王子とずっと一緒にいたいと思った。王子のプロポーズを聞いてほっとした私は胸を撫で下ろした。

 この感触⋯⋯そうだ、私はうんこなんだ。

「王子、実は⋯⋯」

「なんだい?」

「私は元々うんこで、魔女様の魔法で人間になっていたんですけど、力を使い果たしてしまったので、もう一生うんこのままなんです⋯⋯」

 涙が止まらなかった。1度崩れた幸せを、やっとの思いでもう1度掴んだというのに。私はうんこなんだ。うんこなんだ⋯⋯

「関係ないよ! 君が好きなんだ! この想いは変わらない!」

「王子⋯⋯!」

 さらに涙が溢れ出す。でもこれは、嬉し涙だ。

「うんこだろうがなんだろうが、君は君だ! 愛して愛して、愛し抜いてやる! 覚悟してくれよ!」

「ふふっ、望むところです!」

 私は指で涙を拭って、笑ってみせた。うんことして笑えた初めての日だった。

 こうして私はうんことして王子と結婚することになった。ただのうんこになった今でも王子と楽しく暮らしている。

 私をいじめていたお義姉様はシッコ飛行機のしっこ雨をモロに浴びてしまい、全身がゆっくり溶けて死んでしまった。お義姉様の分も幸せになるからね!


 心温まるお話でしたね。

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