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多剤耐性菌、それは近代化の終焉のはじまり…?

「多剤耐性菌とワンヘルス」についての授業とディスカッションがありました。

多剤耐性菌、聞いたことはあるでしょうか。

多剤耐性菌とは、多くの抗菌薬(抗生物質)に耐性を獲得した菌のことです。私達は感染症にかかってもその治療薬として抗菌薬を使うことができれば、菌は死んでしまい、その後症状も回復します。たとえ菌がある抗菌薬に耐性を獲得してしまい治療に使えなくなったとしても、抗菌薬は多くの種類がありますので他の抗菌薬を使って治療することが可能です。しかし、多剤耐性の菌に感染してしまった場合、使える抗菌薬の種類はかなり限定されてしまいますので、耐性でない菌に比べれば治療が困難になることは事実です。なお、報道などで表現されている“ほとんどの抗生物質に耐性を示す”ような多剤耐性菌であっても、まだ一部の抗菌薬は使用可能なので、全く治療の手段が無いわけではありません。

日本感染症学会 一般の方への情報提供:多剤耐性菌を正しく理解するためのQ&A
https://www.kansensho.or.jp/modules/topics/index.php?content_id=10

医療者であればMRSAとか、CREとか、そういった菌の名前や対処の仕方を知っている方は多いでしょう。
私は病院で働いていた時、年に1度の抗生剤適正投与の研修を必修で受けていました。だから、そういう菌が「おそろしい」存在であることは知っています。
抗菌薬を不必要な時にも使う、きちんと処方通りに使わないなど、抗菌薬をむやみに使うことが原因であることも知っています。

では、ワンヘルス(One Health)は?聞いたことありますか?
正直私は、なんとなーく耳にしたことがあっても、具体的に何のことなのかはわかりませんでした。

人間が病気をコントロールし、おいしい野菜や肉を食べ、効率よく便利に暮らしている、この近代化した社会。
とある文献では、多剤耐性菌の出現によって、この近代化による恩恵を放棄することになるかもしれない、と言っています。どういうことでしょうか。

今回は、病原菌・ヒト・動物・土・魚・植物…そうしたすべてがつながりあっている、そのすべての健康について考えるにはどうしたらいいのか、ということについて書いていきます。

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