渡邊恵美里

実家の猫に懐かれない、あらため、渡邊恵美里です。 助産師、医療人類学修士 医療者向けのリベラルアーツ講座を準備中です。

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  • 医療者のためのリベラルアーツ講座 準備室

    医療者のためのリベラルアーツ講座を準備する過程で、読んだ本の紹介や考えていることなどを紹介する記事を書きます。

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人類学と出会ってしまった助産師の話

こんにちは、 助産師で、この秋からアムステルダム大学の医療人類学・社会学専攻修士課程に進学する、実家の猫に懐かれない、と申します。 留学で会う頻度が減ると、ますます実家の猫からは嫌われそうです。 ぼんやり系助産師だった私が、血の冷たい蛇男と、文化人類学、医療人類学という学問に人生を大きく変えられつつある話をしたいと思います(多少のフィクションによる調整をしています)。 実家の近くの総合病院で働き、子供を産み、地域に転職し、幸せに暮らしましたとさこれが、私が助産師資格をとっ

    • 拝啓 15歳の私へ、30歳の私より ③

      15歳の私の紹介はこちら 結婚せず、子供も産まず一人で生きていくと息巻いている15歳の私は、見えない敵との戦いに翻弄されているように思います。 15歳の私が戦おうとしているものの一つは、家父長制です。 男が偉い、女は従う。父に尽くし、夫に尽くし、息子に尽くす。 そんな人生は絶対に嫌だ。私以外の女性がそのように生きているのも嫌だ。 「世の中」の価値観が、女性にそのような生き方を強いるのも見ていられない。 わかります。今の私も、そう思っています。 身の回りにそういう生き方を

      • 拝啓 15歳の私へ、30歳の私より ②

        (15歳の私は、今思うといろいろと思い詰めてました。まずは第1弾から読んでみてください) 15歳の私へ なんだかんだと、倍の時間を生きてしまいました。 中学1年の時、キャリア教育、という授業で、自分の人生の計画を立てたことを覚えています。友達が進学や就職の他に、結婚や出産の希望を書き入れる中、私の人生には結婚や出産する暇がない、と高らかに宣言しました。(今、思い返してみると、男子で自分の計画に出産のタイミングなんて書いてる人なんていたでしょうか。覚えてたら教えてください。)

        • 拝啓 15歳の私へ、30歳の私より ① 

          わたしにも15歳の時があった。 負けそうで泣きそうで消えてしまいそうな、というよりは、かなり確固たる信念をもって生きていた。アンジェラ・アキの歌詞は大げさだな、とすら思ってた。 別に自分に自信があるというわけではなく、むしろ自分の能力には限界がある、と、数学の試験や体育の授業で思い知らされる日々だった。でも、かなり強い気持ちで将来を思い描いていたし、その将来に必要なことばかり考えて生きようと思ってた。 当時の私の心の師匠は、フローレンス・ナイチンゲールだった。ナイチンゲール

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          4本

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          メンバーシップ登録ありがとうございました / 助産師がフィールドワークに出かけるとき

          日本の総合病院で働く助産師だったわたしが、仕事をやめ、オランダで医療人類学を学ぶようになってから、半年ちょっとがたちました。 メンバーシップの記事として、大学の課題で読んだ本・論文を紹介したり、授業で学んだことを毎月紹介してきました。なるべく、読んだこと・学んだことをただまとめるだけでなく、自分自身の臨床経験や日本での状況をもとに、私ならではの視点から書くことを意識していました。メンバーシップ記事というクローズドな空間だからこそ、自分の未熟さを気にせずに自由にかけたような気が

          メンバーシップ登録ありがとうございました / 助産師がフィールドワークに出かけるとき

          「マザリング」を考える

          オランダで出会った日本人の助産師さんに、この本を勧められ、読みました。 著者の中村佑子さんは、編集者やドキュメンタリー映像の仕事をしていた方で、『マザリング』は初めて書かれた本とのことです。 母になる・母であることについて、産み育てることについて、様々な職業・立場の人に話を聞いてまとめた一冊です。ただ聞いた話をまとめるだけでなく、インタビューした相手の空気を伝えるような描写力が素晴らしく、まるで本当にその方に会ったかのような気持ちになるような文章でした。 インタビューで語ら

          「マザリング」を考える

          (妊娠・出産の人類学③)出産の現場における暴力

          妊娠・出産の人類学シリーズ最終回となります。 今回は、出産の現場における暴力=産科暴力についてです。 産婦人科医の早乙女智子先生は、産科暴力について、このように説明しています。 産科暴力は、身体的な暴力に限らず、言葉による暴力、同意なく医療行為を行うこと、入院や治療を強制されること、本人の主体性が考慮されないことなどが含まれます。医療者が女性を見下したり、叱ったり、冗談の対象にしたりなど、「マイクロアグレッション」=無自覚に傷つけるようなことも、暴力の一つです。「母性」「産

          (妊娠・出産の人類学③)出産の現場における暴力

          猫も杓子も医療人類学メンバーの皆様へ

          いつもお世話になっております。 メンバーシップ登録されているみなさまにお知らせです。 7月までの期間限定のメンバーシップとしてご案内しておりましたが、5月以降、修士論文執筆で忙しくなることが分かってきたので、少し早めの4月いっぱいまででここを閉じることにしました。

          猫も杓子も医療人類学メンバーの皆様へ

          (妊娠・出産の人類学②)利用される出産、差別される出産

          前回、出産の医療化について取り上げましたが、今回はそれに続いて、出産と政治、そして出産の現場で起きている差別について取り上げます。 誰がどのように産むのか、という議論は、少子高齢化が問題となっている日本において非常に重要となっています。子供を産むことが推奨される一方で、産んだ後の子育てに必要なお金などの余裕がないと「無責任だ」と言われてしまう状況があると言えます。これまで、出産はどのように利用され、差別されているのかについて紹介し、考えていきます。

          (妊娠・出産の人類学②)利用される出産、差別される出産

          (妊娠・出産の人類学①)医療化批判、そしてその先へ

          今回から3本立てで、妊娠・出産の人類学を扱っていきます。 ベースとなるのは、こちらの英語のハンドブック(Handbook of Social Sciences and Global Public Health)のChildbirth and Birth Careという章。この章を書いている先生から直接教わる機会があり、授業で扱った内容も含めて紹介していこうと思います。 https://www.amazon.nl/dp/3031251091 ちなみに、章のタイトルがMate

          (妊娠・出産の人類学①)医療化批判、そしてその先へ

          好みと習慣から社会について考える—ブルデューのハビトゥス

          最近、ブルデューの理論について勉強する機会があり、日々の何気ない営みや好みがいかに社会的な構造や人々との関係性のなかで形作られているかを考えるきっかけとなりました。 社会学や人類学を学ぶ人にとっては有名な理論かもしれませんが、一般にはまだまだ知られていないと感じたので、こちらでご紹介しようと思います! 突然ですが、あなたにとっての「ごちそう」はなんですか

          好みと習慣から社会について考える—ブルデューのハビトゥス

          被災地での性暴力の見えづらさ

          能登半島での大地震、多くの方が被災され、そこから長い間、物資や救援の手が十分に回らないとのニュースを目にして心を痛めていました。一日でも早く、安心できるくらしに戻れることを心から祈っています。 さて、1月1日の能登半島で大地震をうけて、1月2日にはこのような記事を目にしました。被災地での性暴力について注意を呼び掛ける記事です。 被災地での性暴力は、これまでも話題になってきたと思いますが、震災が起きた次の日にはそれが話題になり、新聞記事で注意喚起が起きるというこの迅速さに、

          被災地での性暴力の見えづらさ

          リスクと文化

          メアリ・ダグラス(1921-2007)はイギリスの女性の人類学者で、『汚染と禁忌』『象徴としての身体』などの著作が有名です。個人の考え方と社会の形は密接に結びついているという考え方から、穢れ、身体、リスク、消費などのテーマについて取り組みました。 今回は彼女の本の中から『Risk and Culture』(リスクと文化)という一冊の前半部分(序章~第4章)を中心に紹介します。メアリ・ダグラスとアーロン・ウィダフスキーの共著の本で、誰もが当たり前のように共通認識だと思っていた”

          リスクと文化

          あけましておめでとうございます

          あけましておめでとうございます

          食べることのフィールドワーク

          医療人類学・社会学専攻と言っても、実は医療そのものに関するテーマだけを学ぶわけではありません。動物と人間の関係、科学技術について、身体についてなど、幅広いテーマを学ぶ機会があり、興味は広がるばかりです。同級生の修士論文のテーマをみても、LGBTQ、タトゥー、水、畜産、環境問題など、いろいろな分野での研究があります。 新学期始まった当初から、なるべくいろんなことに好奇心を持って、自分の興味と異なる内容も積極的に学んでいこう!と心に決めていました。そのため、各授業内で一組ずつやる

          食べることのフィールドワーク

          道徳/倫理の人類学

          11月は、修士論文のための研究計画書を書くため、とにかく必死の日々でした。研究のステートメント(これが問題なので、こういうことを調べます宣言、みたいな)を練り上げるのに何時間もかけ、提出してみると先生から「一からやり直し!」のお達しがくるという、なんとも辛い時間です。 そんななか、頭の中を爆発させてた私に、理論の先生がお勧めしてくれた、道徳や倫理の人類学がとても興味深かったのです。これは、ざっくりいうと、社会の理想を無批判に取り込んでいく機械みたいな存在として人間を見る考え

          道徳/倫理の人類学