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丹田呼吸法のやり方解説

前回の記事で、「瞑想の初心者はまず呼吸法から始めると良い」と書いた。

呼吸法は瞑想法に比べて「すること」がはっきり決まっているので、初心者にもとっつきやすい。
だから、まず呼吸法を実践することで呼吸に集中することに慣れ、それから呼吸に意識を向ける瞑想法に移ると良いと述べたわけだ。

今回の記事では、「実際に呼吸法をやってみたい」と思っている人に向けて、呼吸法のやり方を一つお伝えしようと思う。
前回の記事を読んで呼吸法に興味を持った人や、「呼吸法をやってみたいけどやり方がわからない」という人は参考にしてほしい。
(ちなみに、今回の記事は4500文字ほどある)


丹田呼吸法のやり方

それでは、さっそく呼吸法の解説に入っていこう。

今回紹介するのは「丹田呼吸法」だ。
やり方は以下のようになっている。

  1. リラックスして坐る

  2. みぞおち(中丹田)に両手を当てて、氣が集まるのをイメージしながらゆったり呼吸をする

  3. 下腹部(下丹田)に両手を当てて、氣が集まるのをイメージしながらゆったり呼吸をする

以上だ。
これから一つずつ説明していく。

◎呼吸法をおこなう際の姿勢について

まず呼吸法をするときの姿勢だが、坐っておこなうのが一般的だ。
横になっておこなってもよいが、気持ちよくて眠ってしまうかもしれない。

逆に言うと、眠りたい時には横になって丹田呼吸法をすると良い。
夜に布団に入って横になったまま丹田呼吸法をおこなえば、寝つきが良くなるし、眠りも深くなるだろう。
不眠で困っている人は、そういう使い方もできる。

ただ、もしも呼吸法によって集中力をつけたいのであれば、そのまま寝てしまってはまずい。
そういう場合はやはり起きて実践を続けたほうが望ましいので、横になっておこなうのは就寝直前の寝床の中だけにしたほうが良いだろう。

ということで、基本は目を覚ました状態で坐っておこなう。
坐り方には特に決まりはない。
あぐらをかいて坐った状態でおこなうとやりやすいと思うが、長時間ずっと床に坐っていると関節が痛くなる人もいるかもしれないので、その場合は、椅子に坐っておこなっても良い。

大事なことは、身体に無理がない姿勢であるということだ。
窮屈な想いをしたまま実践してもうまく集中できないので、楽に坐っていられるように坐り方を工夫してみてほしいと思う。

◎丹田の位置について

ということで、リラックスして坐ることができたとする。

そうしたら、みぞおちに両手を重ねて置こう。
右手と左手のどちらが下でも構わないので、手のひらがみぞおちに当たるようにして重ねる。

ちなみに、みぞおちというのは胸の中心からちょっと下のところにある。

みぞおちの位置

正確な位置は、左右の肋骨が中心で合わさるところだ。
肋骨を体表から触りながら辿っていけば、見つけることができるだろう。

このみぞおちが中丹田(ちゅうたんでん)だ。
なお、丹田は他に、眉間の上丹田(じょうたんでん)と下腹部の下丹田(かたんでん)がある。
丹田と言うと、下腹部の下丹田だけが思い浮かぶ人が多いと思うが、実際には丹田は人体に三つあるのだ。

この呼吸法では、その中の中丹田と下丹田に氣を集めるようにイメージしながら呼吸をおこなう。
上丹田を使わないのは、上丹田が氣を溜める場所ではないからだ。
上丹田は、ひらめきや直観、知性や気づきなどに関連するが、氣を蓄える機能はない。
だから、中丹田と下丹田に氣を集めるように呼吸をすることはあっても、上丹田に氣を集めたりはしないわけだ。

ただ、上丹田(眉間)は瞑想でなら使うことがある。
というのも、眉間に集中すると瞑想中に浮かぶ思考を観察しやすくなるという利点があるからだ。
眉間に集中する瞑想法は、集中力を鍛える上でもとても有効な方法なので、そのやり方についてはまた別の機会にきちんと紹介したいと思う。

◎「中丹田の呼吸」のやり方

ともあれ、今回のところは上丹田(眉間)に出番はない。
メインは中丹田(みぞおち)と下丹田(下腹部)だ。

まずは中丹田の呼吸だが、先ほども書いたように、坐ってみぞおちに両手を重ねる。
そして、手を当てたみぞおちに氣を集めるようにイメージしながらゆったりと呼吸をする。
時間としては5分~10分続けるのが一つの目安だ。

もし「氣を集める」というのが漠然としていてイメージしにくい場合には、音を利用する方法もある。
口を「あ」の形にして、そのまま「あーー・・・」と発声する。
大きな声を出す必要はなく、身体に「あ」の音の響きが感じられたら十分だ。
むしろ、「外に向かって音を発する」というよりも、「身体の中に音を響かせる」ような感覚でおこなったほうがより良いだろう。

そうしたら、その「あ」の響きをみぞおちで感じようとしてみてほしい。
最初は難しいかもしれないが、慣れてくれば、心地よい「あ」の響きがみぞおちに集まってくるのを感じるようになるはずだ。

氣は感じられないかもしれないが、「あ」の響きは物理的なものなので、誰でも感じることができると思う。
習熟してくれば、実際に声を出さなくても、「あ」の響きを想像するだけで、その感覚をリアルに感じられるようになっていくことだろう。

そうして、みぞおちに意識を向けながら呼吸を続けていると、段々とみぞおちの奥のほうが温かくなってくる。
もし実際に温かくなったなら、それは呼吸法がうまくできているということだ。
温かくなったということは、みぞおち(中丹田)に氣が集まっている証拠であり、適度にリラックスしつつも集中できている証であるからだ。

もしすぐにはみぞおちが温かくならなかったとしても、落ち込む必要はない。
私も最初のうちはうまくできなかったし、誰でも始めたての頃はそんなものだからだ。

だが、練習を重ねていけば、徐々に温かさを感じることができるようになっていく。
みぞおちが温かくなることで、頭の神経だけでなく、内臓全体がリラックスするのを感じることができるだろう。

◎「下丹田の呼吸」のやり方

次は、下丹田の呼吸だ。
みぞおちに両手を重ねた時のように、今度はへその下、下腹部に両手を重ねて置くようにする。
そして、今度は低い「う」の響きを下腹部に集めるよう意識するのだ。

何度か試してみればわかると思うが、「あ」と「う」では音の響き方が違う。
身体で感じる感覚も異なるし、響きやすい場所も違っている。
実際、「あ」の響きは下腹部に集めるのが難しいが、「うー・・・」と低い音で発声していると、自然と肚にその感覚が下りてくる。
決して「何の音でもいい」というわけではないのだ。

下丹田(下腹部)も、響きを集め続けていると段々と温かくなってくる。
下丹田に氣が集まってリラックスしてくれば、お腹全体がポカポカしてくるのを感じられるはずだ。

これも5分~10分ほどかけておこなう。
慣れないうちは5分でも長く感じるかもしれないが、お腹が温まって心地よく感じられるようになると、長くおこなうのもそれほど苦にならなくなっていくだろうと思う。

ちなみに、中丹田と下丹田の呼吸法は、必ずしもセットでしなければならないわけではない。
中丹田の呼吸だけおこなってもいいし、下丹田の呼吸だけでも構わない。
もちろん、両方をセットでおこなったほうがリラックス効果は高いが、時間がなかったり、途中で集中力が切れてしまったりした場合には、無理して両方する必要はないということをおぼえておいてほしい。

丹田呼吸法の効果

次に、この呼吸法の効果について述べていこうと思う。
主な効果は以下の3つだ。

  • 自律神経のバランス調整

  • ストレスの軽減

  • 集中力の養成

◎自律神経のバランス調整

自律神経は交感神経と副交感神経がお互いに引っ張り合って働くことでバランスを取っている。
たとえば、何か活動をしている時や緊張している時などには交感神経が優位になり、休息中などにリラックスしている時には副交感神経が優位になる。

ただ、現代人はストレスが多いので、交感神経が優位になりがちだ。
また、夜の寝る時間になってもスマホをいじっていると脳を刺激されてしまうため、副交感神経がうまく働かず、心身が休まらない人も多いだろう。

丹田呼吸をすると、そんな自律神経のアンバランスを調整することができる。
交感神経が優位な状態から、適度に副交感神経を活性化させ、心身をリラックスさせてくれるのだ。

◎ストレスの軽減

また、丹田に「あ」や「う」の心地よい響きを集めることで、ストレスの解消にもなる。
リラックスして、心地よい感覚に身をゆだねることで、溜まったストレスが軽減されるわけだ。

さっきも書いたが、たとえ休憩できる時間があったとしても、スマホで暇を潰していたりすると、脳は活動しっぱなしになるので、心身はあまり休まらなかったりする。
仕事や家事をしていなくても、スマホをダラダラといじっていると、脳は疲労していってしまうのだ。

スマホのような受動的な娯楽を消費している時は脳が反応し続けてしまうから、休んでいるようで休まらない。
だが、呼吸法は集中する対象だけにエネルギーを注ぐので、「余計な反応」が抑制される。
その結果、呼吸法をすることで脳の反応が沈静化して、休息効果が現れるのだ。

このように、丹田呼吸法によってストレスが軽減するのは、単純に心地よいからというだけではなく、集中によって脳が休まるからでもある。
絶えず反応しっぱなしの脳を、集中することによってリフレッシュするのが呼吸法なのだ。

◎集中力の養成

「丹田呼吸法では集中することで脳を休ませる」と今しがた書いたが、練習を続けることで集中力自体も鍛えられていく。
結果的に、日常的にも気が散りにくくなり、目の前の作業に意識を集中させる力が高まっていくわけだ。

もしもスマホで受動的な娯楽を消費することばかり繰り返していると、脳は外からの刺激に反応し続けることになる。
それが当たり前になってしまうと、ちょっとした外からの刺激によって気が逸れやすくなるだろう。
「あ、そういえば」とか、「お、これ気になる」とかいった具合に、落ち着きなくあっちこっちに気が逸れてしまい、集中することができなくなるわけだ。

現代人はみんな多かれ少なかれ刺激中毒なので、もしも落ち着こうと思ったら、「外からの刺激に受動的に反応する」ばかりではなく、「自分で決めた対象に能動的に集中する」ということを練習する必要がある。
「刺激への反応」はあくまでも受動的なものであり、能動的に何かをしようと思ったら、外からの刺激に振り回されない集中力がなくてはならないのだ。

丹田呼吸法は、集中力の養成に大いに役立つ。
氣が集まるイメージや音の響きの感覚に能動的に意識を向け続けることで、集中力が鍛えられていくのだ。
それゆえ、外部の刺激に受動的に流されるばかりの人生が嫌だと思う人にとっては、呼吸法の実践は意味のあるものとなるだろうと思う。

まとめ

以上が丹田呼吸法の解説だ。

姿勢は坐ってが基本。
中丹田(みぞおち)には「あ」の響きを集め、下丹田(下腹部)には低い「う」の響きを集める。
そして、集中している場所が温かくなってきたら、うまくできていると思ってよい。

また、丹田呼吸法の効果については、自律神経のバランス調整、ストレスの軽減、集中力の養成がある。
日々、刺激やストレスにさらされて緊張気味の現代人にとって、呼吸法がリラックスの手段になるわけだ。

このほかにも呼吸法はたくさんあるが、今回は初心者にも実践しやすく効果のはっきりしているものを紹介した。
興味の湧いた人は、ぜひ実際に実践してみてほしい。