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奇跡の復活を遂げたギリシャ経済

ギリシャ経済が復活していることをどのくらいの人が知っているだろうか?
ギリシャと聞いて思い出されるのは2010年からの欧州債務危機ではないだろうか?そして欧州債務危機について理解している人はどのくらいだろうか?



コロナ以前のギリシャ経済

ギリシャ経済はユーロ圏の中で長年酷い目にあってきた。共通通貨ユーロの抱える経済問題において、ギリシャは常に中心に居た。ユーロ圏最大の経済大国ドイツを基準に決まるユーロのレートは、他の国を通貨圏に取り込んだドイツにとっては安く、ドイツの輸出産業は潤ったが、ユーロ圏の小国であるギリシャにとっては高過ぎた為、ギリシャの輸出産業や観光業は破壊されていった。2010年からの欧州債務危機ではギリシャはデフォルトの瀬戸際まで行った。

為替レートと貿易収支

先ずは為替レートと貿易収支にどういう関係があるのかから説明したい。

アベノミクスが量的緩和で紙幣を印刷し、日本円の価値を意図的に引き下げたのは、通貨安になれば国内の輸出企業にとって利益となるからである。自国の通貨が安ければ、自国通貨建てでは同じ値段の輸出品であったとしても、外国の買い手から見れば安くなるため、輸出品が売れやすくなるわけである。

では、ユーロ圏の場合にはこの理屈はどう作用しているか? ユーロは元々別の通貨を使っていた複数の国がその通貨を統一したものである。元々、ドイツにはマルク、フランスにはフラン、イタリアにはリラという通貨があったが、これがすべてユーロという一つの通貨に統一されたのである。

ユーロ採用以前にはそれぞれの通貨がそれぞれの通貨に対して為替レートを変動させていた。イタリアの輸出が振るわない場合、景気刺激のために金融緩和をすれば、イタリアのリラはドイツのマルクに対して下落し、イタリアの輸出業は通貨安による一時的な底上げを得ることが出来た。変動通貨制においてはその国の産業の好調不調に対してこのように自動の調整機能が働くのである。

しかし、いまやヨーロッパの大部分はユーロを採用した。つまり、複数の国が一つの為替レートを使用していることになるわけだが、ではその一つの為替レートはどのように決まっているのか?

それは、非常に大まかに言えば、すべての加盟国の為替レートの平均となる。ユーロ圏内で豊かな国は先ずドイツであり、輸出で外貨を稼ぎ、金融緩和も南欧諸国ほど必要としないドイツのマルクは強かった。一方で、ドイツ経済より弱く、失業率がドイツほど低くないイタリアのリラは、一般論で言えばマルクより弱い通貨であった。それがユーロという一つの通貨に統一されるのだから、ユーロの為替レートはある意味その間を取ったものになるわけである。

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