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『愛なき世界』を読んでぶっ飛んだ


先日コトノハさんに初めての選書をしてもらいました。
その時の記事がこちら。
https://note.com/neko345/n/n4de5c1775456

その中の一冊、三浦しをんさんの『愛なき世界』を読んだのですが、感想を言いたくて堪らないので、書き殴りにきました。

見た目の第一印象は、綺麗。
とっても装丁が綺麗で、思わずイラストだけで売ってないかな?とググったくらい。
箔押しのエッペンチューブは後にも先にも見ないだろうな、と。

コトノハさんにいただいたお手紙から、あらすじ紹介を一部抜粋します。

「洋食屋見習いの男が恋したのは、植物学者の女性。…ですが彼女は研究一筋、恋も結婚も性交も興味がないと言うのです。」

洋食屋で見習いシェフをしている藤丸くんと、T大理学部の大学院生、本村さんのお話です。

最初20ページくらいでぶっ飛びました。

「うわっ!私この生活知ってる!!これ、私の院生時代の生活やん!!!!」

何を隠そう(特に隠してないけど)、私も理学部生物科学科の出身なんです。
植物学ではありませんが、大学院に進学し、博士課程を修了しています。
だからなんていうか、本村さんの生活や考えていること、周りのメンバーの気持ちや行動が手に取るようにわかる。
それを文字に起こされることがこんなにこそばゆい?いや、恥ずかしいとは…

もっと正確に言おう。
全く研究に関係がない方々はこんな風に思ってるのか!?というのを実感してしまって、や、やめろー!!やめてくれーー!!あぁー!!!と心の中で叫びながら読み進めていました。
たまに呻き声が漏れていたかも…

本村さんは博士課程1年生。自分で主導する初めての研究を楽しみながら、博士号取得条件を満たす義務に対するプレッシャーをだんだんと受けていきます。その横には出前で定期的に顔を出す藤丸くんがいて…
みたいな内容なんですが、そんな本村さんが恋愛に興味がないと言っているのは、本当に興味がないのではなく、博士課程の学生さんだからでは?と思ったんですね。

大体の大学院では、博士課程の学位取得条件は「査読あり(審査あり)の英語論文を1本以上掲載すること」なんですが、これがまた大変なんだ…多くの学生さんが本当に必死になります。
なんとかデータを出してまとめて投稿しても、却下されて落とされてしまうことがすごく多いからです。採択率が数%の雑誌もザラにあるので…

だから本村さんは、(研究が面白い+研究に必死)×学位が取れない怖さ、で正直それどころじゃないんじゃないかなあ。
私自身も院生時代は恋愛に振っているキャパがありませんでした。
すごくいい結果が出たり、粘りたいことがあった時に恋人を構っている余裕がなく…今思うと、恋人に息抜きのペースメーカーになってもらえる道もあったなとは思うのですが。
勝手な予想ですが、無事博士号を取得できて、一旦どこかに就職したらまた風向きが変わるかもね。
そこまで藤丸くんは彼女を見つめていけるかな!?頑張ってほしいけど!

そして別の感想がもう1つ。
実験操作を丁寧に描写していたのがすごく新鮮でした。
例えばPCRをやる方法をとても丁寧に書いているシーンがあるのですが、バーっと流れ作業でやるようなことを4ページくらい使って文章に落とし込んでいて…
そうか、こんな風に表現されるのか、とすごく新鮮な気持ちになりました。
あと、実験に使う爪楊枝が多すぎて秘書さんが経理部から文句を言われるという小ネタ!これ、前職の研究室の秘書さんも全く同じことを言われていて。あ、すごい!リアル!って笑ってしまいました。
細かいところまで本当にリアルな大学院生活で、しっかり取材したんだろうなと感心しきり…

藤丸くんのような大学とは違う世界に生きている人たちのフィルターを通すと、こんな風に見えるんだというのを教えてもらうことができました。
すごく面白かったです!
でもなーまた読み返すにはこそばゆくてな…次読み返すのがいつになるのかはわからない感じ。

さて、次はなにを読もうかなあ
残り6冊!楽しんできます。

読んでくれてありがとうございます。 我が家のお猫様4人のちゅーるに早変わりします。