【詩】 夏の知らせ


嗅いだことのある匂い
蒸し苦しい夜に
夏は帰っていくようだ

何気ない毎日に
疲れ気味の君は
まだこの世界を知らない

炬燵の中に丸まって鳴いた
あの頃も遠く
郷愁深く思い出す

過ぎ去った時間を
元に戻す必要もなく
時の流れは渦を巻く

飲み込まれた潮に
ひと匙の切なさを
紛れ込ませて
見えない所で
涙を拭った

囀りを聴いたあの朝
目覚めた君が
問いかける

このままでいられるの?

苦しい胸に
君の手を当てて
2人で鼓動を
確かめ合った

変わることもなく
変えられることもなく
暗闇に吸収された
僕たちの会話は
凝縮されて
広い宇宙へと
解き放たれた
狭い通路を通って

行き止まりだと思っていた
その壁に
目に見えない
小さな穴は空いていた

微塵の呟きは
見えない世界に
突き刺さり
氷の壁を貫いた



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