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予想通りに不合理

正直この邦題タイトルもめちゃくちゃ良い。
原題 "Predictably Irrational"から、絶妙に韻を踏んだ語感で言いたくなる。

この本は、アダム=スミスなどが唱えた伝統的・合理的な経済学に対して、実際の人々の行動や文脈(広い意味で)によって人々がどう行動を変えるのかを究明する行動経済学がメインテーマの一冊である。

例えば 1章 相対性の真相 では次のような例が示されている。

あなたは興味から、経済新聞の購読(本書ではエコノミスト)を考えている。
次のような料金・セット設定の場合、どれを選ぶだろうか。
①web版だけの購読 59ドル
②印刷版だけの購読 125ドル
③web版と印刷版のセット購読 125ドル
※本書初版は2013年発売で、この実験はさらに以前に行われていることは
少し考慮して欲しい。

これを、MIT(マサチューセッツ工科大)の院生たちに対して問いたところ、
①webのみ 16人 ②印刷版のみ 0人 ③web&印刷版 84人
という結果に終わった。
なに、当たり前じゃね?と考えたならば、次の例も考えて欲しい。

あなたは同様に、経済新聞の購読を考えている。
次のような料金・セット設定の場合、どれを選ぶだろうか。
①web版だけの購読 59ドル
②web版と印刷版のセット購読 125ドル

こうなると結果は劇的に変化する。
①webのみ 68人 ②web&印刷版 32人
なに、当たり前じゃね?と考えたならば、よくよく見直して欲しい。
前者の実験の中で、② 印刷版 125ドルを選んだ人は0人だった。もし人々が合理的に判断していたのならば、この②の選択肢が消えたところで全く影響されず、後者のweb版とweb&印刷版のみから選ぶ実験でも結果は変わらないはずだ。だが実際、真ん中(おとり選択肢)が消えただけで①web版 59ドルの魅力に人々が気付き、一気に逆転してしまった。不合理な事実だが、当たり前のように人々はそう行動している。

これが、「あなたがそれを選ぶわけ」の1つである。
人間は何事も相対性、何かと何かを比べて決めるのが非常に得意でそれが楽であるということ。世界最高峰の知識や頭脳を持つMITの学生たちでも相対性の餌食になっているわけだ。

本書ではこれだけでなく、様々なユーモアあふれる実験を通して人間の"クセ"を追求する。なぜ人々は"無料"に食いつくのか、なぜ人々は先延ばしをしてしまうのかなどなど。

結論、これらを自覚するだけで(先の例では②の選択肢をまずは切り捨てるように考えるだけで)あなたがこの先より良い選択をしていける一助となる。
反対に、それを活用してビジネスや事業に活かしていくも自由である。
本書によると、一番売りたいものは真ん中の価格に設定すること、全く新しい商品を売りたいならすぐにそれより少し高い改良版を出すことなど示されている。

著者もなかなかユーモアの効いている人物なので、文章を読んでいるだけでもおもしろいので、ぜひ。笑

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