【映画レビュー】“人は見かけによらない”を秀逸な見せ方で描く傑作映画!『バッドガイズ』の感想
日本では今年、唯一のドリワ新作アニメーション映画となります。
『バッドガイズ』のざっくりとした感想
ドリームワークスアニメーション最新作『バッドガイズ』を観てきました。
ドリームワークスアニメーションの新作映画が、海外からは半年遅れて日本上陸。児童書『バッドガイズ』を原作に、短編『ビルビー』のピエール・ペリフェル監督が3DCGアニメーション映画化。海外ではヒットタイトルとなりましたが、果たして日本でもその流れに乗れるのか、注目です。ちなみに日本語吹き替えでは、尾上松也さんが主演を務める他、安田顕さん、河合郁人さん(A.B.C-Z)、ファーストサマーウイカさん、長田庄平さん(チョコレートプラネット)が参加しています。
本作を見てきた感想をざっくり一言でいうと……
秀作!
ドリワがまたかましてくれた!
コメディもアクションも盛り沢山のクライムムービー。
子供向けという海外評も観たけど、いやいや、シンプルに見えて実は一筋縄ではいかないことを描いてますよ、コレ。というか明らかにキッズは気づけないパロディも多めです。
ざっくりではなく、本編に踏み込んだもっと詳しい感想を書いていきます。
割とネタバレ寄りの話もするので、ご注意くださいませ。
これまでとは違ったアニメーションスタイルにまず拍手
まずびっくりするのが、これまでのドリームワークスアニメーション作品どころか、他の海外の3DCGアニメーションとこれまた違った質感のアニメーション。俯瞰してみると立体的なのですが、瞬間瞬間では平面的に見える不思議なルックに驚かされます。『わたし時々レッサーパンダ』に近いのですが、それとも少し質感の違うので3DCGアニメーションの最近のトレンドを抑えつつ、工夫の幅があるのだと知れる体験となっています。
ちなみに手法に関しては、VFXスーパーバイザーのマット・ベアー氏がインタビューで、物理的な光とボリュームの感覚を保ちつつ、手描きのイラストのようなイメージを作ることを目標としていたことを語っています(↓)。
また、日本やヨーロッパの手描きアニメーションも参考にしているそうですが、モブの人間キャラクターは特にどこか宮崎駿監督作品を思い出すルック。やはり実際に『カリオストロの城』なども参考作として名前が挙がっています。
まさか、アメリカのアニメーション映画で、ルパンよろしくパトカーが山積みになるような絵面が観られるとも思ってなかったので、新しくも懐かしい、そして嬉しい体験でした。
本当は本家ジブリが『アーヤと魔女』とかで実現してほしいとこだった、とも言えるのですが、推しスタジオであるドリームワークスがやってくれたことは嬉しいです。
その天秤が面白くならないわけがない、映画のテーマ
では、肝心のストーリーは?というと、これまたさすがの内容。
トレーラーでも明かされていた通り、本作は悪行こそが天職だと思っているウルフが、偶然善行をしたことをきっかけに“実は善いことした方が気持ちいいんじゃない?”ということに気づいて、悪行と善行の間に揺れ動いていくという話です。
それだけ聞くと意外と一般的な寓話なんですが、ドリームワークスアニメーションのさすがなところは、悪行と善行の天秤に、さらに“友人”というのが加わるのが面白い。
映画のクライマックスで、悪人のマーマレード教授から隕石を取り戻して警察に返そうとする寸前で、ウルフたちが「それでも友人を切り捨てられないよね」と、善行よりも先に“友人”を見捨てられないという決断が、この映画の優しさでもあり、ドラマティックな部分でした。
交友が身のためにならない友人のことを“悪友”と言いますが、自分一人が善行に移るだけでは「めでたしめでたし」にはしないところこそ、この映画の肝であり、“悪友”と決めつけることこそ、本作が最も否定したいレッテル貼りなのでしょうね。
今作では、メインキャラクターだけ獣人というトリッキーな設定になっていますが、これも“人は見かけによらない”を体現している部分。
原作は『ズートピア』のような獣人世界の話なのですが、それを人間たちの世界に落とし込んで、見た目を浮きぼらせるというアイディアが、これまた上手いし、獣人で描く意味が乗っているので見事です。
思わず尻尾を振ってしまうことから、この映画が「善行は本能が求めているんだよ」……ぐらいのメッセージとして受け取ってしまうと安直にも感じられてしまいかねないのですが、実はマーマレード教授の悪行の理由もゾクゾクするという本能的なものを理由にしているので、実はミスリードなんじゃないか、とも思っています。
しれっと素晴らしい日本ローカライズ
そして忘れちゃいけないのが日本ローカライズの上手さ!
尾上松也さん、安田顕さん、河合郁人さん、ファーストサマーウイカさん、長田庄平(チョコレートプラネット)さん……とゴリゴリの芸能人起用感があるのですが、しっかり実力派を集めていて、これがまた違和感はなし。
スネークの安田顕さんなんかは、安田さんっぽさはゴリゴリありながら、ハマり役なおかげなのか、ノイズに感じず楽しめたのは驚きです。
また、作中の文字を一部日本語化するローカライズに関しても、一瞬大きく映るキャラクター名など、要所要所でこそ日本語化をしつつ、看板や新聞など細かいところは英語のままというバランス感も絶妙。ここ最近では一番ぐらいの違和感のないローカライズでした。
俯瞰と煽りで英字になったり、日本語になったりと雑な仕事を仕事をするディズニーにはこのあたりのバランス感をぜひ見習ってほしいです(その辺りのバズ・ライトイヤーへの文句 ↓)。
とはいえ、原語版の歌唱シーンなどもすごく気持ちよく仕上がっているので、もっと字幕版の公開館数も増えてビフォアフターも比較しやすい方になってほしいところ。あの『ミニオンズフィーバー』ですら少なかったので、興行的な問題なのでしょうが、『バッドガイズ』の字幕版は大阪でもTOHO梅田の一館のみでしか観れないのにはビックリですよ。
まとめ
というわけで、「さすがドリームワークス!」と感じるしっかり上質なエンターテイメント作品で嬉しい映画でした。
あとはもっとお客さんが入ってほしいところなのですが、日本での洋画アニメーション作品の勢力が弱まっている時勢を思うと、十分健闘している方とも言えるのかも。
『バッドガイズ』、手堅く面白いので、まだ観ていない人はぜひ映画館に足を運んでください〜。
公式サイト
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『バッドガイズ』の海外興行に関する記事(↓)
ピエール監督の前作『ビルビー』の感想(↓)
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