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中国語小説の翻訳教室――神の代弁者になるために(コラム4「翻訳方法の一例」)

 やり方は人それぞれですが、ここでは私が『永不瞑目』を翻訳した時の方法を、一例として見ていきましょう。

 (1)下書き 

 原書とノートを並べ、手書きで翻訳します。辞書は時間短縮のため、電子辞書を使用します。

 (2)パソコンに入力

 出来上がった下書きを、パソコンに打ち込みます。おかしな日本語表現に気づいたら、ここで訂正しておきます。

 (3)原文との比較、日本語の確認

 原書とパソコンの画面を見比べ、誤訳がないかを探していきます。それから打ち込まれた訳文だけを読み、日本語を訂正します。これを終えたら次の章に進み、また手書きで翻訳します。

 (4)印刷前の見直し

 (1)から(3)の作業を繰り返し、全体を翻訳し終わったあと、もう一度最初から(3)の作業をやり直します。特にある表現や単語の訳し方の整合性に注意します。

 (5)印刷後の見直し

 活字化された原稿を原書と突き合わせ、念入りにチェックします。

 (6)原稿を寝かせ、最終チェック

 1年以上寝かせ、印刷した原稿をもう一度、最初から最後まで見直します。不自然な日本語表現が見えやすくなっているはずです。

 誤訳が見落とされない二重三重のチェック体制に見えますが、訳者には必ず思い込みというものがあります。『永不瞑目』ではやりませんでしたが、出来れば(7)として、信頼できる翻訳家に監修を依頼するべきでしょう。

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