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私の偏愛喫茶店について 京都「六曜社」

純喫茶が好きだ。お洒落で無機質なカフェも、街中にあるチェーン店も、もちろん利用するけれど、純喫茶の受け継がれてきた伝統と歴史、不変であり、唯一無二という事実に凄く惹かれる。『他のどこを探しても、ここにしかない。もし一歩遅かったら、もう出会えていなかったかもしれない。私、この人生でここに来れたの、めっちゃ得してるな』なんて思いながら、毎回ひどく感激する。訪れた喫茶店と、素晴らしい珈琲やお食事を提供してくださる店主さんに、帰り際「ありがとうございます!!美味しかったです!!また来ます!!」と叫ばない程度にお礼を伝え、お店と出逢った自分に脳内でスタンディングオベーションを送る。

「好きな喫茶店はどこ?」と聞かれたら、真っ先に答えるのは、京都の三条にある「六曜社」である。どれくらい好きかと言うと、例えば、祇園四条に行く用事ができたとき、隙間時間が30分しか取れなくても、やや駆け足で三条まで向かい、多数ある魅力的な喫茶店を横目に、結局は六曜社を選んで入ってしまうくらいには好きである。あのお店には引力がある。

六曜社珈琲店は、地下1階と地上階にお店がある。学生の頃から何十回と通っているけれど、実は地上階にはほとんど足を踏み入れたことがない。なぜならいつも混んでいたからだ。そのため、基本的には地下の、こじんまりした大人の秘密基地みたいな店内へ赴くことが多い。地下一階は、ソファ席と、所狭しとウイスキーやキープボトルが並んだバーカウンターが併設されている。

中深煎りの珈琲が好みなので、ハウスブレンドコーヒーを注文する。お供は必ず、ドーナツ。苦味をじんわりと感じる珈琲、素朴でシンプル、控えめな甘さのドーナツ。二つが絶妙にマッチして、バランスがちょうど良い。一口含んだ瞬間に「美味しい」以外の語彙力がなくなってしまうんだけど、あれは一体何なの?魔法なの?受け継がれてきたレシピに感謝せずにはいられない。

六曜社の愛すべきポイントは他にもあって、個人的には、そこにあるものすべてが空間に馴染んでいること、だと思う。"すべて"である。
カップ、ソーサー、グラス、マッチ、提供される珈琲、ドーナツ、お冷でさえも「私の場所は生まれた時からここですが、何か?」と言わんばかりに、その場所に、美しい佇まいで、綺麗に、本当に綺麗に空間の中に収まっている。その姿を見て惚れ惚れするし、何度でもその様子を見たいから訪れている、という理由もある。

最近京都に足を運んでいないな。そろそろあの場所と、味が恋しい。新緑の季節に、また。


たくさんの人がnoteで喫茶店での思い出を語っている。当たり前だけど、まだ行ったことのない喫茶店が日本全国ありすぎて、まだまだ長生きしないとだめだな!という結論に至る。なんて奥が深くて楽しいんだ、喫茶店。


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