月が綺麗ですね
サークル仲間で開いた飲み会の帰り道、火照った顔で彼が見上げた先に見えたのは美しくも堂々たる満月だ。
「月がきれいだね」
彼が言う。
「えっなに? 私に告白?」
彼女が驚いたように返す。
「えっ違う、純粋にそう思っただけ」
慌てた様子の彼。
「なんだ。残念」
声を落とす彼女。
「いや告白でもいいんだけど」
取り繕う彼。
「ごめんなさい」
断る彼女。
「断るのかよ」
つっこむ彼。
楽しそうに笑う二人。
そんな二人の会話を少し後ろで聴く私。
彼女がふとこちらを振り返る。
「何してんの? 早くおいでよ」
手招きする彼女。
彼も遅れて振り返る。
「何かあった?」
二人が私を気遣う。
「ううん、なんでもない」
私はそれに答える。
「月が綺麗だなって思って」
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