姉になりたい

姉を殺した理由ですか?

そうですね、では、少し昔話をしても?

ありがとうございます。

私は姉の事を心から慕っていました。

スポーツも勉強もできて、美人で、それでいて誰よりも優しくて。

火の打ちどころもない人でした。

父も母も優秀で綺麗な姉を可愛がりました。

そんな姉の妹であることが私の誇りでした。

私の事など見向きもしない父や母になんの疑問も抱きませんでした。

姉に愛情を注ぎ、余った出がらしのような愛情が私に向けられていた事も至極当然のように思います。

いつも新品の服や靴で着飾る姉を心から美しいと感じました。

姉にとって古くなって着なくなったものが私にとっての新しい服であり靴でした。

それでも私は姉と同じ服を着られる事がたまらなく嬉しかったのです。

少しでも姉に近付けたような、そんな気がするのです。

痴情のもつれですか? ええ何度かありましたね。

姉の彼氏とお付き合いする事もありました。

姉の物はなぜだか妙に魅力的に見えるのです。

何度か姉に怒られた事もあります。

でも、姉と別れて私だけのものになった途端に男に魅力を感じなくなるのです。

不思議でしょう?

ええ、だからね、私は思いました。姉の物でなければダメなのだと。

ですから、もうこうするしかありませんでした。

姉の身体を私がもらい受けるのです。

そのために姉の魂には死んで頂きました。

そして姉の身体は私の物になるはずでした……。

私のした事はすぐに間違いだったと気付きました。

なぜなら、あんなに美しかった姉の身体になんの魅力も感じなくなったのです。

死んだ瞬間に、身体は姉の物ではなくなってしまったからでしょうか。

本当に残念です。

私は結局、最後まで姉になる事は出来なかったのですから。




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