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俺たちって付き合ってたんだ?

「俺たちって付き合ってたんだ?」

上半身だけを起き上がらせた拍子に、彼の身体がまた露わになった。

だから言わんこっちゃない、と私は記憶の中の友人に舌打ちをした。


「付き合うってハッキリ言葉にしないなんて、あんた遊ばれてるだけじゃんそんなの」

少しは歯に厚着をさせたらどうなのかと思いながら彼女の言葉に上手く返せずにいた。

「でも、大人になると言葉で言わなくてもわかるでしょ」

弱々しく吐いた反論は彼女には刺さらない。

「お互いの気持ちを言葉で確認して初めて付き合うってことなんだよ。結婚だっていまだに紙に書いてるんだから、そうでしょ?」

結婚と交際はまた違うのではないだろうか、そんな意見は彼女には通らない。

何度も会っているから、何度も身体を重ねているから、それだけで私は十分なのに、彼女は証を欲した。

確認しない方がいいことも、暴かない方がいい嘘も、どちらもこの世にはたくさん存在していることを彼女は知らないのだ。


「私たちって変なカップルだよね」

なるべくさりげなく冗談っぽく、すぐに取り繕えるように言った。

行為を終えたばかりの少し荒い息を整えるためベッドに横たわっていた彼が起き上がってこっちを見る。

「俺たちって付き合ってたんだ?」

「あっ、いや、その……」

いくらこちらがさりげなく言ったつもりでも、そう真正面から聞かれると誤魔化しようがなかった。

だから確認などしなければよかった。

私は証なんていらないのに、どうしてこんな事になったのだろう。

彼がさらに口を開く。

「よかった。俺さ、いつ告白しようかずっと悩んでたんだよ。そっかそっか。もう俺たち付き合ってたんだな」

そう言って彼は大きく笑った。

知らなかった。

証を貰えることがこんなにも嬉しいことだったなんて。








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