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悪戯

先輩は時間が空くといつも携帯電話を見ている。

休憩中も、こんな信号待ちの数分ですらも。

彼女からの連絡を待っているのだ。

いつ来ても返せるように。

そっと盗み見た携帯の待ち受けには彼女と思われる人物の顔が楽しそうに微笑んでいた。

顔をあげると、横断歩道の先に画面と同じ女が居た。

右手を挙げて私の隣を見ている。

先輩が顔をあげて女の存在に気が付いて微笑む、そんな姿を想像してしまう。

悔しくて私はふいに、先輩の手を掴んだ。

「何すんだよいきなり」

先輩の冷たい声ですら、私の耳には心地良い。

「あっ間違えました」

そう言ってまた指を絡める。

「おい。離せってやめろ」

「すみません。つい」

手を離して、見上げた先にはあの女の姿はどこにもなかった。


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