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工房スナップ … 四季


「朱色も鮮やかな漆器は、一体どんなところで作られているのだろう?」という疑問をお持ちの方がいらっしゃるかもしれません。

そうですね、仕事柄ほこりや騒音が出るので、どうしても人里離れた所になります。街の賑わいはないものの自然はたっぷり、四季を感じながら仕事しています。




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工房の建物は自前ですが、土地は借りています。工房の隣は地主さんの敷地で、色々な木が植えられ大切に手入れされています。

春になると見事な椿が咲きます。紅葉の新芽も驚くような紅色できれいです。私は窓辺から春を楽しみます。外に出ると、ウグイスの声が木立に響きわたっています。



工房付近の標高は400mあり、涼しく過ごせます。扇風機で快適です。

ところで、漆器は意外に季節商品で、展示会はたいてい秋から冬です。(むんむん暑い夏の食卓に、赤い根来の漆器は確かにうっとおしいでしょう。)初夏はわりに時間的余裕があり、旅行に出かける時もあります。けれど、お盆頃から展覧会の準備で忙しくなります。

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秋はあれこれ気ぜわしく過ぎ、一息ついた時には急に薄ら寒くなっています。私は仕事着かパジャマで暮らしているような人間なので、作品作りはさることながら個展に何を着ていくかにも悩みます。

ところで、工房のそばには道祖神があり、集落の人々を守っています。1717年(江戸時代)に作られた素朴な像で顔も風化した、高さ60㎝ほどの小さな男神女神です。(町指定民俗資料)よそ者ながらこの地で30年余り、ずっと健康で働けており、私も守られているのかもしれません。

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道祖神は、全国に広がる路傍の神であり、関東甲信越には特に多いようです。集落に災いが入ってくるのを防ぐために、村境に祀られたそう。また、男女一対の双体道祖神から、子孫繁栄の神としても信仰されていたようです。小さな石像ですが、人々の切なる思いが時代を超えて伝わってくるようです。
 



夏涼しいだけに冬は寒くて、雪が降ることもあります。数年に一度くらいですが、下の町は平気でも工房の周辺では雪で道が通れないこともあります。そんな時は雪休みです。(長野にいた時よりは、はるかに楽ですが)

ある日のこと、建物の周囲が巾50cmくらいでぐるりと掘り返されていました。地主さんによれば、冬にエサがなくお腹をすかせたイノシシが、ミミズを食べようと土を掘るのだとか。戦後に針葉樹ばかり植林されたため、エサになる落葉樹の木の実が激減したのだとか。哀れですが、春になれば地主さんの山の竹の子を一番に食するのはイノシシです。


こうして一年は巡ります。そして、私は木を削り漆を塗ります。出来たものを眺めてはニンマリし、又はもっと工夫できないかと考え込み…




次回は「散歩びより … 飛鳥」です。


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