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胸を張って「コンサドーレの小野伸二」と叫ぼう

2022年1月29日、スポーツ報知に北海道コンサドーレ札幌に関してあるニュースが出た。

「小野伸二、J1札幌と生涯契約…現役引退後も「経験を還元できたら」」

記事によると生涯契約とは、現役引退後も札幌に残り、フロントや指導者として関わりを持ち続けるという契約だそうだ。他のサッカー選手では長谷部誠選手が現所属のフランクフルトから生涯契約を持ちかけられていると言われている。

小野選手は、「北海道は第2の故郷と思っている。この先、どういう形で現役を辞めるか分からないが、その後も僕の経験を伝えながらクラブにいい還元ができたらと思った」とコメントを残している。泣かせるじゃないか。

コンサドーレは、北海道外出身の人物を北海道に根付かせることで発展してきた側面があるクラブだ。現会長の野々村芳和氏や、クラブ発足から活躍した吉原宏太氏、現在は横浜FCの監督である四方田修平氏、コンサドーレのリレーションズチーム・キャプテンである河合竜二氏など、余所の県で生まれ育った人たちが北海道のために貢献してきている。小野選手もその一人になっていくことになりそうだ。

引退後、どんな立場になるかは分からない。ただ、おそらくは全国的な知名度を生かしつつ、クラブにも貢献できるような立場、川崎フロンターレの中村憲剛氏のような立ち位置になるのではと僕は思っている。

振り返れば小野選手がコンサドーレに加入したとき、北海道では大ニュースだった。確か札幌の中心部にあるテレビ塔で入団会見をしたはずだ。

コンサドーレでの小野選手は、決して多くの試合に出場しているわけではない。しかし、練習での姿勢などで常にチームメイトによい影響を与えているとされている。外国人選手や監督と通訳なしのコミュニケーションが取れることも強みだ。また、抜群の知名度からコンサドーレに興味を持つきっかけの一つにもなっている。

僕には小野選手の活躍で印象に残っているシーズンがある。2017年だ。コンサドーレにとって久しぶりのJ1の舞台を戦った年である。

このシーズン、小野選手は試合後半途中から出場することがほとんどだった。僕は彼がピッチに立った途端、ボール回しのリズムががらりと変わるのを何度も目にしてきた。攻撃の戦術バリエーションが少なかった当時、小野選手の起用は貴重なアクセントだった。四方田監督から攻撃の全権を委任されたかのようにタクトをふるう姿は、まさに「戦術小野」であった。

僕は、チャナティップ(現・川崎フロンターレ)がコンサドーレにプレー面で馴染めたのも小野選手のおかげではないかと思っている。

チャナティップは、2017年の途中に加入した。加入当初の彼は、周りとプレーがかみ合わなかった。それは彼自身が日本のプレースピードにまだ慣れてなかったことも問題だったが、僕は周りの選手にも原因があったと思っている。チャナティップには見えているプレーのビジョンが、彼らには見えていないだ。だからチャナティップが意図したプレーをしようとしても、周りが付いていけてないシーンも目立った。

そんな中、いち早くチャナティップとプレーで通じ合っていたのが小野選手だ。チャナティップのプレー意図をしっかり理解して、ボールを繋ぎ合っているシーンがよくみられた。試合後半、彼ら2人がピッチに立つとわくわくしたものだ。小野選手のおかげでチャナティップはピッチ上で孤立せずにすんだのだ。チャナティップは、翌2018シーズンより本領を発揮し大活躍する。

さて、小野伸二といえばどのクラブのユニを着ている姿が真っ先に浮かぶだろうか。多くの人は、浦和レッズかフェイエノールトのユニを思い浮かべないだろうか。この2クラブに所属していたときの小野選手は、試合にも多く出場し、テクニックもキレキレで全盛期の活躍を見せていた。見たことない方はプレー動画を探してみてほしい。衝撃を受けるはずだ。

ちなみに僕が小野選手の好きな動画は、アクエリアスのCMでオランダの一般人とフットサル対決をする動画だ。

しかし在籍年数が一番長いクラブは、レッズでもフェイエノールトでもなく、実はコンサドーレなのだ。「コンサドーレの小野伸二」と言っても差し支えないはずだ。

ただ、僕には引け目があった。活躍した時期や試合に数多く出ていた時期に所属していたわけではなかったからだ。

でも生涯契約となれば話は別だ。クラブと小野選手が望む限り、僕らとの繋がりは半永久的に続くのだから。

さあ、今こそ胸を張って「コンサドーレの小野伸二」と叫ぼうじゃないか。