見出し画像

トルコに縁もゆかりもない僕がどうしてトルコのサッカークラブの「最初の日本人サポーター」と呼ばれることになったか

 はじめにお伝えすることがある。この記事はそこそこの分量だ。20000字以上ある。お願いだから読むことを断念しないでいただきたい。毎日数行でも構わないのでコツコツと読んでいただけたら幸いである。

1.すべてのはじまりはこの一文から

「İlk japon taraftarımız camiamıza hayırlı olsun.」
(最初の日本人サポーターを歓迎する。)

 2024年2月3日、事の始まりはX(Twitter)にトルコ語で書かれたこの一文だった。

 僕は故郷にある北海道コンサドーレ札幌のサポーターだ。そしてトルコにあるアダナ・デミルスポルのサポーターでもある。いや、図らずもサポーターに「なることを決めた」というべきか。

 トルコに行ったことは一度もない。トルコ人の知り合いもいないし、トルコ語もまったく分からない。最近やっと「japo」が頭にある単語は「たぶん日本のことを言ってるんだろうな」と理解できるようになってきた。

 冒頭の一文がXに発信されてから一ヶ月半、僕の身に起きた出来事の一部を挙げていこう。

・Xのフォロワーの5%(およそ100)がトルコ人で構成される
・僕の「兄弟」「家族」「相棒」がトルコに誕生
・トルコ、アメリカ、ドイツなどに頻繁にやり取りをするトルコ人ができる
・アダナ・デミルスポルのサポーターを名乗る
・北海道コンサドーレ札幌を応援してくれるトルコ人が誕生
・「札幌は第二の故郷」と言いだすトルコ人が登場
・必死でトルコ関連の本をかき集めてトルコを調べだす

 繰り返すが僕はトルコに行ったことがない。トルコ人の知り合いもいなかったし、トルコ語は今でもまったく分からない。それなのにどうしてこんなことになったのか。その始まりから現在までをここに書き記していく。

 まずは「なぜアダナ・デミルスポルなのか?」、「なぜトルコなのか?」というところから話を始めることにしよう。

2.そうだ、トルコサッカーを見てみよう

 アダナ・デミルスポルはもちろん、そもそもなぜトルコサッカーに関心を持つようになったのか。

 これにはいくつかの要因がある。昨年たまたまお茶した知り合いがトルコに縁あってその話が面白かったとか、大学時代の友達と行ったトルコ料理店が信じられないくらい美味しかったとか。いろいろである。

 しかし一番は僕が元々トルコとトルコサッカーに興味があったことである。

 僕にとってトルコは「あいまいさをずっとただよっている」国だった。トルコはEUへの加盟を目指しており、サッカーではUEFA(欧州サッカー連盟)の一員だ。しかし主流な宗教はキリスト教でなくイスラム教である。宗教のことだけ考えれば中東諸国、つまりアジアの方が近い。地理的にはヨーロッパとアジアの間にちょうど位置している。

 ヨーロッパでありながらアジア、アジアでありながらヨーロッパ。その「あいまいさ」から醸し出される歴史や国のあり方が「もっとこの国を知りたい」と僕に思わせる何かがあったのだ。

 もちろんトルコ人やトルコに詳しい日本人がこの国を「あいまい」と考えているとは思わない。あくまで世界史をかじったレベルで僕がうっすらと感じていたことだ。

 僕にとってトルコサッカーの象徴はガラタサライだった。ヨーロッパCLにいつも出てくるクラブという印象がずっとある。そして選手よりもサポーターの印象が強烈だ。

「Welcome to hell」
(地獄へようこそ)

 スタジアムに横断幕やコレオグラフィーとして掲げられるこの言葉は彼らの代名詞でもある。かのパオロ・マルディーニがあの輝かしいサッカー人生の中で初めて足が震えたのがACミランの選手として乗り込んだガラタサライのホームゲームだったそうだ。10万人の前でも平然とプレーしていた名選手がである。

ガラタサライのサポーターのトルコ建国100周年記念コレオグラフィー。
当然「建国の父」ケマル・アタテュルクが主役である。

 ガラタサライはサッカー以外にも様々なスポーツ部門がある。女子バレーボールチームには現在、田代佳奈美選手がプレーしているし、なぜか柔道チームも存在している。

 うろ覚えだが10年以上前にガラタサライの男子バスケットボールチームの映像をみたことがある。ガラタサライのブースターはサッカーと同じように声を張り上げ、飛び跳ね、発煙筒を炊いていた。屋外での試合だったと信じたいところである。

 トルコのサッカーリーグはヨーロッパでは中の上ぐらいの立ち位置に思える。それなりのレベルであり、第一線で活躍していた実力ある選手がプレーすることも少なくない。ある程度満足できる質がきっと期待できるはずだ。

 ちょうど僕は2023-24シーズンから「気にかける」ヨーロッパのサッカークラブをいくつか作ることに決めていた。フルマッチを見ることは自分の余力を考えても難しい。どんなチームかを調べ、ハイライトを見て、SNSのニュースをチェックしてたまにXで発信する。それくらいの楽しみ方をしたい。だから応援するではなく「気にかける」と称することにした。

 この関わり方だとDAZNなどで配信されていないリーグのクラブも注目しやすい。あくまで「気にかける」だから1シーズンごとに監督や選手、チーム状況をみて気にかけるクラブを変えようと思っていた。そう、ある夜が来るまでは。

 ではトルコのどのクラブを気にかけようか。まず掲げた条件は2つだ。

(1)あまり知られてないクラブにする
→有名な3強クラブ(ガラタサライ、フェネルバフチェ、ベシクタシュ)は除外
(2)自分が知らない街のクラブにする
→イスタンブールとアンカラのクラブは除外

 残ったクラブの中で僕が決めたのがアダナ・デミルスポルである。理由は3つだ。

(1)自分が好きなカルチョ(イタリアサッカー)に縁がある
→昨季の監督はモンテッラ(現・トルコ代表監督)であり、選手にはあのバロテッリ、ミランでプレーしたニアン(現・エンポリ所属)が在籍していた。
(2)知っている選手・スタッフがいる
→マンチェスターUなどでプレーしたナニがチーム最年長選手だ。新監督はオランダのレジェンドFWのパトリック・クライファート、新アシスタントコーチが浦和レッズの元選手・監督のゼリコ・ペトロビッチである。
(3)ちょっと強くて、より強くなりそう
→スュペル・リグ(1部)昇格後、9位→4位と順調に成績を伸ばしており「これから3強を食い破ろう」という野心に満ちている気がした。

 こんなふんわりとした理由から僕は昨年夏からアダナ・デミルスポルを気にかけることになった。

チームで2番目に年長の「悪童」マリオ・バロテッリ。
荒木遼太郎選手(FC東京)そっくりのゴールパフォーマンスだ。

3.現地のサポーターに僕が「バレた」日

 気にかけるといっても日本在住の僕にできることはただが知れている。クラブの公式Xをチェックしては試合結果や移籍情報などを手に入れてはふむふむと一人うなずく。YouTubeにあがる試合のハイライトはできるだけ毎週ながめる。ときには公式Xの発信を自分のXで引用リポストし、日本語でチームの情報や感想を書いて投稿した。ハイライトもシェアして日本語で感想を書いてXのタイムラインに放り込む。一応Xのプロフィールにも申し訳程度にアダナ・デミルスポルの名前を「きになる」ものとして書いておいた。その程度である。

 ここで次のような斬新な発想をなされる知り合いの顔が数人浮かばなくはないので補足したい。「つじーはトルコのサッカーファンに見つかりたいがために、公式Xの投稿を引用リポストしていたのではないか。あいつは昔から内心目立ちたがりだからそういうことをしてもおかしくない」と。

 僕は確かに「あえて」引用リポストした。それは自分の日本人フォロワーに投稿を見られることを踏まえてのことだ。万が一、自分の投稿で誰かがアダナ・デミルスポルについて興味を持ったとしよう。その際に僕の投稿が公式の引用リポストなら、自ら探すことなく公式アカウントにたどり着ける。これはアダナ・デミルスポルに限らず僕が気にかけていた他のクラブでもできるだけそのようにしている。

 そもそもトルコのサッカーファンに見つかるために、しこしこ引用リポストして日本語でつぶやくことがいかほどの効果があるのだろう。僕はこのような事態になったのは本当に偶然だと思っている。もしトルコで名を売るために意図して引用リポストしていたとすれば浅はかとしか言いようがない。このような想像もできないかもしれない人々でもしっかり社会で生きていけるこの世界の素晴らしさを改めてかみしめた次第である。

 2024年2月3日になってすぐの深夜、僕は自分のXアカウントが日本人とは思えないアカウントからタグ付けされていることに気がつく。それがアダナ・デミルスポルのサポーターの投稿だった

 その投稿は、文章以外にアダナ・デミルスポルについて僕がXに投稿したものとXのプロフィールがトルコ語に自動翻訳された状態でキャプチャされ4枚貼りつけられていた。

 そして、投稿の先頭に書かれていた一文が冒頭に紹介したものだ。

「İlk japon taraftarımız camiamıza hayırlı olsun.」
(最初の日本人サポーターを歓迎する。)

 正直びっくりした。でもここまでなら別に大騒ぎすることはない。ボヤ騒ぎのようなものだ。たまたまそのアカウントが日本に興味があったり、日本にゆかりのある人かもしれない。

 問題は、僕の存在を投稿したアカウントがフォロワー5000以上を誇るサポーターアカウントだったのだ。

 Jクラブのサポーターならなんとなく想像できるだろう。あるクラブの一般サポーターアカウントで5000フォロワーを超える人がかなりの影響力を持っていることに。トルコも例外ではない。投稿はみるみるうちにアダナ・デミルスポルのサポーターの目にとまっていく。

 投稿に関するリプライはタグ付けされている僕にも通知される。「ようこそ兄弟」、「お前を家族として歓迎する」、「日本に行ったときは寿司でも食おうぜ相棒」などなど。一晩にして僕は会ったこともどんな人かも分からないトルコ人たちの兄弟となり、家族となり、相棒となった。僕ら日本人とトルコ人では「兄弟」や「家族」に対する意味合いや感覚がかなり違うのだろう。血の繋がりとは異なる概念が存在するような気がする。

 しまいにはDMで僕に「クラブについて分からないことがあれば何でも聞いてくれ」とトルコ語で送ってくれるサポーターもいた。とっても親切。のちに彼が最も頻繁に連絡をとるトルコ人になることを僕は知るよしもない。

 何が起きたかよく分からないままベッドに入り朝起きるとXのフォロワーが30~40人ほど増えていた。もちろんみんなトルコ人である。

……ここまできたらもうちゃんと応援するしかないのでは???

 逆の立場で考えてみる。日本に縁もゆかりもないトルコ在住のトルコ人がずっとXにてコンサドーレのことをトルコ語で発信していたとしたら。それをコンササポが見つけたならば。そりゃすごくうれしいはずだ。他のサポにも広めようとXに投稿するし、それをみた別のサポには歓迎のリプを送る人もいるだろう。「コンサドーレと北海道のことなら何でも聞いてくれ」とリプやDMで送る人もひょっとしたらいるかもしれない。

 現にファジアーノ岡山にはイタリア在住のイタリア人サポがいる。日本に縁があったわけではないが、「ファジアーノ」という名前をきっかけに興味を持ちサポになったらしい。当人たちに話は聞いていないが、きっと日本のファジアーノサポは本当にうれしかったはずだ。

 このときアダナ・デミルスポルのチーム状況は最悪だった。昨季リーグ4位の実績から、今季はより上の順位と意気込んで臨んだ。しかし勝ちをなかなかつかむことができず年越し前にクライファート監督は退任した。後任として連れてきたカラマン監督もなかなかチームを浮上させれない状態が続いている。最序盤の貯金を支えになんとか中位にとどまり、下からの突き上げにおびえる日々だ。

 開幕前の期待とは裏腹に低迷するチーム。このまま沈み続ければ残留争いに巻き込まれかねない状況。サポーターにとって期待と現実の落差はさぞ大きいことだろう。

 そんな中に降ってきたのが「訳の分からない謎の日本人」の存在だ。うだつの上がらないチームを極東からなぜか応援してるっぽい謎の男。想像するに投稿を見たサポーターにとってはちょっとした明るいニュースだったのではないだろうか。この想像が本当かどうか分からない。僕の過信であることは否定できないが。

 はっきり言ってヨーロッパサッカーぐらいはサッカーの内容が面白くてちょっと強いクラブを観ていたかった。それか成績をあまり気にしない変わったクラブだ。「サッカーの内容もクラブの今の経営方針もあんま好みじゃないけどやっぱり好きなんだよな」みたいな思いはコンサドーレで充分である。

 でも僕はコンサドーレのサポーターだ。25年間ずっと応援している。1部リーグで何度みじめな目にあって降格したか。お金がなくてどんなに苦渋を味わったか。上を目指しながらも毎年石にかじりついて戦うクラブのサポーターだ。今のアダナ・デミルスポルが直面する状況や、サポーターが感じるナイーブな感情は経験済みだ。いや、もっとひどい目ならいくらでも合ってるじゃないか。

 現地のサポーターの投稿から一晩明け、僕は翻訳アプリを駆使したつたないトルコ語で次のようにXに投稿した。

Bizi bir aile olarak ağırladığınız için teşekkür ederiz.
Hokkaido, Japonya'dan sizi desteklemeye devam edeceğiz.
(僕を家族として迎えてくれてありがとう。
これからも北海道から応援します。)

 思わぬ事態に心をおどらせ、勝手に心意気を感じた僕はこのXの投稿を持ってアダナ・デミルスポルを応援することになるのである。

11戦未勝利の中、スタジアムでの公開練習で選手たちを励ますアダナ・デミルスポルサポーター。
この練習後の試合はちゃんと勝利でかざった。熱い。

4.アダナ・デミルスポル≒トルコ版ヤクルトスワローズ

 ここまでさも当たり前のようにアダナ・デミルスポルの名前を連呼してきた。しかし読んでいる人のほとんどは、そもそもどんなクラブが皆目見当もつかないだろう。

 アダナ・デミルスポルを日本人にひとことで説明するなら「トルコ版ヤクルトスワローズ」である。サッカークラブなのになぜプロ野球で例えるのか。その理由はおいおい説明していく。

 クラブのホームタウンはアダナだ。トルコ南部の地中海沿岸にあり、その地域では最大の都市である。トルコ全体でも五本の指に入る大都市で、160万人以上が住んでいる。昨年起きたトルコ地震の最も被害にあった地域はアダナの近隣だ。アダナ・デミルスポルも被災地支援を積極的に行っている。

 ではなぜ「トルコ版ヤクルトスワローズ」なのか。その答えはクラブの成り立ちにある。アダナ・デミルスポルもヤクルトスワローズも設立に「国鉄」が深く関わっている。トルコ国鉄の鉄道員たちにより誕生したのがアダナ・デミルスポルだ。ヤクルトスワローズが元々国鉄スワローズだったことは古くからの野球好きはご存知だろう。

 国鉄がルーツながら現在は関わっていないことも共通している。スワローズはヤクルトが経営しており、アダナ・デミルスポルはムラト・サンチェクが経営の中心だ。サンチェクは医薬品流通系のグローバル企業で活躍した後、ヘルスケア事業で財をなした実業家である。ヤクルトも医学博士の代田稔(しろたみのる)がラクチカゼイバチルス・カゼイ・シロタ株を発見し、ヤクルトを製造したことが始まりだ。鉄道から始まり「健康」をつかさどる人々がその意思を引き継いで今に至る。だから「トルコ版ヤクルトスワローズ」なのである。

 トルコには他にも国鉄がルーツのクラブが存在する。それらにはすべて「デミルスポル」と名前がつく。しかし現在トップリーグで戦い続けているのはアダナ・デミルスポルだけだ。サポーターが言うには一般に「デミルスポル」というと、アダナ・デミルスポルのことを指すそうだ。それにならってここからの記述はデミルスポルと書くことにする。

 国鉄と直接かかわりがなくなったとはいえ、デミルスポルサポはその出自を誇りにしている。「俺たちは労働者階級だしデミルスポルは今も労働者のクラブだ」という話はサポとのやり取りで何回か目にした。サポーターのXを見ると機関車をモチーフにしたデミルスポルにまつわる投稿を見ることができる。

アウェイ遠征するための車を覆うサポーター手製のなにか。
蒸気機関車がガラタサライ、フェネルバフチェ、ベシクタシュをひこうとしている。
なお現実の試合では逆にひかれがちだ。

 クラブの設立日には、サポーターが設立地に集まってお祝いする。その場所とはアダナ駅だ。もちろん現役で使用されている駅である。実はデミルスポルのクラブ本部は当初アダナ駅舎にあったのだ。

クラブの設立日をアダナ駅前で祝うデミルスポルサポーターのみなさん。熱心。

 デミルスポルのサポーターは伝統的に左翼に対してシンパシーを持っている。同じく左翼的気質を持つイタリアのリボルノを招待して親善試合を行ったこともある。これはサポーターの要望で実現したものだ。当時のクラブ会長は民族主義者で左翼とは一線を化す政治思想だった。しかし政治思想以上にクラブへの愛が半端ない会長だったため首を縦に振ったという逸話もある。

 現在スュペル・リグに所属しているデミルスポルだが、実はずっと下部リーグで低迷してた存在だ。クラブは経営不振で借金を抱えていた。そんなクラブに存在していたのは多くの熱心なサポーターだけ。元々ファンベースがしっかりあったデミルスポルは、26年ぶりの昇格をきっかけに人気と観客数をさらに増やしているそうだ。

 低迷するクラブを立て直しスュペル・リグに昇格させた立役者がムラト・サンチェクである。彼が会長に就任後、クラブが達成したことを挙げてみた。

・クラブの借金を返済
・26年ぶりのスュペル・リグ昇格
・クラブ史上スュペル・リグ最高位(4位)
・クラブ史上初ヨーロッパカップ戦出場(UEFAヨーロッパカンファレンスリーグ)

 まさに敏腕会長である。それでいてサポーターと気軽に雑談やSNSでチャットするフレンドリーさも持ち合わせている。トルコサッカー連盟に対して毅然と意見を述べる気骨もある。もっともそれが彼の首をしめ、先日会長を辞任することになるのだが。

 ちなみにサンチェクはXで審判の判定などに対してもかなりの長文投稿をする。Jクラブの経営者たちにもJリーグや試合内容に対して積極的に投稿を行い、他のクラブのサポから大きな怒りを買う人がいる。はっきり言ってサンチェクの投稿を見れば全然かわいいものである。彼らの投稿に怒りを感じるJクラブサポが、もしサンチェクの投稿を見たら怒りでお湯をわかすことができるかもしれない。

5.アダナ・デミルスポル応援事件簿

 異文化交流とは面白いものである。交流がはじまって1ヶ月半なのに次から次へと興味深い出来事が起きる。大げさかもしれないが僕の中で特に印象に残ったエピソードを「事件」と称して紹介していく。

(1)つじーハラキリ事件

 「日本最初のサポーター」と書かれたXの投稿には実は続きの文があった。トルコ語だからほぼすぐには理解できなかったのだが一つだけ僕にもすぐ分かった単語がある。

「harakiri」だ。ハラキリ、腹切り。そう、切腹である。

 不穏すぎる。歓迎していると見せて実は「日本から生半端な気持ちで俺たちのクラブを応援してんじゃねえぞジャップ!ハラキリ!!!」という気持ちを暗に示しているのかもしれない。

 そう思ってお布団で震えていたのだが、翻訳アプリを使いつつ自分なりに解釈するとおそらく以下のようなニュアンスだと理解できた。

 今、クラブの状況は非常に調子が悪い。だからこんなクラブを応援し始めたら2日後ぐらいにはすぐハラキリしたくなる気持ちになってしまうぞ。そうなったら申し訳ない。だからキミは応援はやめて今すぐ平穏な生活に戻るべきだ。

 これぞトルコジョークなのか。要は自分たちのクラブ状況の悪さを自虐した皮肉交じりのジョークである。トルコ語も文化も分からない日本人に初手でかますジョークにしてはちょっとパンチがすぎるのでは。そして外国人って本当にハラキリをジョークに使うのかい。

 あとでそのアカウントに直接聞いてみたらやはりジョークだったようだ。怒ってないわけじゃなかった。よかった。僕はほっとした……わけではない。

 あんまり日本人、いや、コンササポをなめるなよ??

 チーム状況が悪い。しばらく勝ってない。それは理解できる。とはいえリーグ順位は残留圏内の中位だし、会長は敏腕経営者で資金もある。昨季リーグ4位に貢献した実力者たちもおおむね残留している。そんなチーム状況でハラキリしたくなるだって?なめられたものである。

 忘れもしない2012年、僕が応援するコンサドーレがJ1でどんなシーズンを送ったか。

 4勝2分28敗。勝ち点14。得失点差-63。ダントツの最下位(18位)でJ2降格。シーズン前半にいたっては1勝1分16敗である。果たして我々は本当にJ1クラブなのかと思ってしまうくらいの絶望感。得失点差+2でなぜか降格したガンバ大阪とともに、Jリーグ史上稀にみる降格クラブとして未来永劫名を刻むだろう。

 本当にハラキリしたくなるときというのはこういう状況を言うのだ。今のデミルスポルを見てハラキリするなら僕は人生で何度ハラキリしたことか。お腹には無数の刀傷がついているだろう。

 と、そこまでは言ってはいないが「僕が愛する日本のクラブは何度も困難な状況にあってきた。だからこれぐらいでハラキリはしない。安心してくれ」ぐらいマイルドにして何人かのサポには伝えた記憶がある。

(2)日本のサッカーに詳しすぎ事件

 デミルスポルを応援している謎の日本人の存在が明らかになったとき、僕が見る限り一部のデミルスポルサポは明らかに「はしゃいでいた」。その中にはサンチェク会長(当時)のXに「日本人選手を獲得すべき」「今はアフリカではなく極東に目を向けるべき」と進言する者も出てきた。

 僕のXに対しても「このチームの状況を救ってくれる日本人選手を教えてくれ」と救いを求めるリプが飛んできた。僕は日本のサッカー関係者でもなんでもないのだが。とりあえず「大阪にタナカ(田中駿汰選手のこと)という素晴らしい選手がいる」とすすめておいた。今振り返ると「東京にオガシワ(小柏剛選手)、千葉にタカミネ(高嶺朋樹選手)というイカした選手もいるぞ」とも伝えればよかった。大変後悔している。

 そんな中、デミルスポルサポの投稿から驚くべき名前が僕の目に飛び込んできた。Kaishu Sano。鹿島アントラーズの佐野海舟選手だ。さらに詳しく聞くと「彼は6番と8番の役割を兼ね備えた素晴らしい選手だ」と返ってきた。ちょっとさすがに詳しすぎないか。

 別の日には、仲良くなったサポに「開幕戦、コンサドーレはアビスパ福岡とだろ?勝利を祈るよ」とDMが送られてきた。僕のために調べてくれたのか。そう思いうれしくなったが真相は実は違う。別のサポは「ヴィッセル神戸、ガンバ大阪、浦和レッズは前から知っている」と僕に教えてくれた。

 彼らは日本に特別ゆかりのある人たちではない。でも日本のサッカーを僕の想像以上に知っている。なぜか。

 その答えは「ベッティング」。「賭け」である。

 トルコのサッカーファンの中にはサッカー賭けを通してJリーグを知った人々がいる。だから妙にJクラブやJリーガーを知っているトルコ人がいるのだ。日本の試合はトルコの早朝に行われるので、熱心なサッカー好きは朝からサッカーを楽しむには適しているらしい。

 また、30~40代のトルコ人が幼いころ一番楽しんだアニメが『キャプテン翼』である。「あれを見るために早起きしていた」というサポとも知り合ったし、翼くんにデミルスポルのユニを着せたアイコンのアカウントも見かけた。

 ちなみに僕が出会ったトルコのサッカーファンの中で知名度の高い日本人選手は稲本潤一選手、長友佑都選手、香川真司選手だ。稲本・長友両選手はガラタサライ、香川選手はベシクタシュに所属していた。ブルサスポルでプレーしていたため細貝萌選手の名前をあげたサポもいた。

(3)トルコサッカー連盟抗議運動巻き込まれ事件

 ある日のことだ。デミルスポルのサポによって僕はXのDMグループに招待された。なんだなんだ、みんなに「日本の新しい兄弟だ」とでも紹介するのだろうか。

 トルコ語がまったく読めない僕は、次々に飛び交うやり取りを追うことはあきらめた。少し時間ができたので翻訳アプリで内容をたどっていくと、歓迎でもなんでもなくそこは「謀議」のグループだったのだ。

 「審判の判定がおかしい」というデミルスポルサポの投稿はよく見かけていた。審判がイスタンブールのクラブ、特にガラタサライ、ベシクタシュ、フェネルバフチェに有利な結果をもたらしているのではないかと。その真偽はさておきそのように考えているイスタンブール以外のクラブサポは他にもいるようだ。

 審判を管轄しているのはトルコサッカー連盟だ。そこでみんなして同じ時間にハッシュタグを使ってサッカー連盟に抗議の投稿をしよう。そういう企てだった。

 なぜ僕が入れられたのはさっぱり分からない。ただのノリかもしれない。もし僕も投稿したら「日本人も俺たちに賛同して抗議してくれてる」と利用される可能性が頭に浮かんだ。

 僕はJリーグでも審判の判定云々にほとんど興味を示さない。「判定に左右されて負けるくらいならそこまでの試合だった」と思うくらいである。ましてやトルコの審判が本当に誤審ばかりなのかなんて分かるわけがない。困った。

 投稿の決行時間は21:30に決まった。トルコと日本の時差は6時間。日本時間では27:30だ。いや、こっち寝てるから。グループには「お前もやるよな?」的な空気ただよう投稿も流れてきたが「こっちは夜中や!寝てるわ!」と返事してすぐ寝た。

 朝起きるとタイムラインにそのハッシュタグがついた投稿は流れてきた。特に大きな動きになったわけではないようだ。もっとも、判定に対するデミルスポルサポのヘイト投稿はその後も試合のたびに見かけるのである。

(4)敏腕SNS会長退任事件

 2024年2月末日、数年でデミルスポルを立て直し発展させた敏腕会長サンチェクが突然退任を発表した。僕のつたない調べでは退任理由がまったく要領が分からない。

 こういうときに頼りになるのは仲良し(?)のデミルスポルサポである。ちょっと年下の彼は観戦風景やアウェイ旅の様子をいつも写真と一緒に送ってくれる「いいヤツ」だ。彼のおかげでテキストだけでは伝わらないアダナとやクラブの雰囲気を僕はうっすらつかむことができる。

 翻訳アプリを駆使し苦戦しながら聞いた内容は、僕には判断しかねるものだった。ここからの話を「真相」というつもりはない。あくまでも彼から聞いた話をざっくりと整理して書くことにする。現地のサポはこんなことを思っているのだと読んでほしい。

 サンチェクはたびたびサッカー連盟に強く物申してきた。その具体的な内容は分からないが、ニュアンスからしてやはり審判の判定の不公平さがメインだったように思える。ひょっとすると連盟や審判に対して物議をかもす発言があったのかもしれない。彼はたびたび懲罰をくらっている。

 この懲罰が問題だった。ある期間で懲罰を累積で基準に達するまで受けると会長の職務が停止になる。サンチェクはそのレッドカードを食らう寸前だった。職務停止になってクラブに泥はぬりたくない。そういう思いがあったのか分からないが、次の懲罰を会長として食らう前に退任を決めたのである。

 ここまで聞けば、審判に対して不利な判定をするなと文句を言いすぎて懲罰を食らいすぎた会長の哀れな末路の話だ。だが話はもっと重くなっていく。そこには2016年にトルコで起きたクーデター未遂が深く関わっていたのだ。

 2016年のトルコクーデター未遂はトルコ軍の一部がクーデターを起こしたものの、エルドアン大統領をはじめとしたトルコ政府や軍の迅速な対応によって短期間で鎮圧された失敗クーデターだ。

 エルドアンはこのクーデターを裏で指示していたのが、ギュレン運動と指導者のフェトフッラー・ギュレンだと断定した。ギュレン運動はイスラム教の市民運動であり、この関係者たちはトルコの政府や軍、その他民間組織にも広く浸透していたらしい。現在トルコでギュレン運動はテロ組織に指定されている。これはあくまでトルコ政府の公式見解だと強調しておく。

 このギュレン運動の関係者がトルコサッカー連盟に今もいるのではないか。そして審判に関する業務を行っているのではないか。サンチェクはそれを主張して抗議していたらしい。

 きなくさい。実にきなくさい。何かといえばこの話の内容そもそもがだ。クーデター未遂の後、ギュレン運動の関係者とされる人々は公職から追放されている。関係ない人々も巻き添えになってだ。その反面、ギュレン運動が相当な規模の草の根運動で、かなりの人数に浸透していたのも事実である。運動に少しでも関わった人が人知れずどこかで普通に働いていても不思議には感じない。

 なんだか陰謀論くさい気もするし、断片的に真実が入っている気もする。審判の判定だって本当に不公平か僕には分からないのだ。まったく判断がつかない。だからここでは、聞いたことを自分なりに主旨を損なわないよう解釈して載せた。これはあくまで一サポの見解である。

 真偽は別にしろ、まさかサッカーの判定問題にクーデター未遂というトルコ史に残る重大な事件がつながるとは思わなかった。この事件については僕も日本語の文献をあさって色々学んでいる途中だ。思わぬジャンルとサッカーがつながる。この興味深さを改めて実感した話である。

 なおサンチェクの後任会長は彼の腹心が就任したようだ。会長を辞めたとはいえ、市井の人として彼がデミルスポルの経営に影で関わることは間違いないだろう。

(5)伝説のポケモン男事件

 どんな物事においても僕が強く関心を持つのが「歴史」である。歴史を知ることで過去だけでなく現在、そして未来を知ることができる。僕はそう信じている。

 デミルスポルの歴史を深く知りたいと思った僕は「クラブの歴史を学ぶ上で重要な出来事や人物を教えてほしい」とトルコ語でXに投稿した。ありがたいことに多くのサポからレクチャーのDMやリプが送られてきた。

 サポたちから何度も名前が挙がった人物がいる。ムハーレム・ギュレルギンという男だ。どんな人なのか詳しく聞いてみると、なぜか水球の話からはじまった。

 ギュレルギンはかつてデミルスポルにあった水球チームのキャプテンだった。そのチームは1942~57年の17年間無敗を誇り「無敵艦隊」と呼ばれていたそうだ。僕が子供の頃に聞いたサッカーでの「無敵艦隊」とは違い、本当に無敵だったのである。

 いや、サッカーの話どこいった。そう思っていると予想だにしなかった彼の経歴を伝えられた。

 水球選手を引退後、ギュレルギンはデミルスポルのサッカーチームの監督をつとめた。なるほどなるほど。さぞ人材不足だったのだろう。ペップ・グアルディオラも水球のトップ選手である友人にチーム作りを助けてもらったという話を聞いたことある。ギュレルギンもその類かもしれない。

 ところがどっこい。そのとき彼が指導した選手はトルコ代表に選ばれ、現在はギリシャのパナシナイコスで監督をしているらしい。その人物とはファティ・テリム。アダナ出身の彼は、ガラタサライの監督としてUEFAカップ(現EL)優勝、スュペル・リグ優勝9回、トルコ代表監督としてEUROベスト4など輝かしい成績をおさめた。ニックネームは「皇帝」、トルコサッカー史に残る名将である。

 ギュレルギンよ、君はいったい何者なんだ。自分で検索してさらに調べるとさらに詳しい経歴がわかった。彼はデミルスポルで水球だけでなく、水泳、サッカー、陸上をプレーしたスーパーアスリートだったのだ。サッカーではトルコでWMシステムをプレーした最初の選手の一人という説もあるらしい。水泳と水球ではトルコ代表のキャプテンもつとめている。

 デミルスポルサポによると、そんな彼を象徴する有名な言葉があるという。

 「もう一度、試合をしましょう」

 これだけだとよく分からないので状況を説明する。圧倒的強さを誇っていたデミルスポルの水球チームは、ある日の試合も当然のように勝利した。ところが相手チームが難癖をつけて再試合を要求してきたそうだ。理不尽な要求なら突っぱねてもおかしくない。しかしキャプテンのギュレルギンは再試合を受け入れるのだ。「もう一度、試合をしましょう」と。

 再試合の結果はもうご想像の通りである。デミルスポルの水球チームは歴史的大差をつけて圧勝した。

 本当かよそれというエピソードである。ただ、少なくとも経歴についてはすべて本当のようだ。1924年に生まれ、1995年に亡くなったギュレルギン。彼が生きた時代のスポーツ界だからこそ成し得たことかもしれない。だとしても末代に語り継がれて当然の人物だろう。

 神話の世界を生きる人物の話を聞いた気がする。まるで伝説のポケモンのような男である。

伝説のポケモン男ことムハーレム・ギュレルギンさん。
こんな顔で「もう一度、試合をしましょう」と言われたら、
「やっぱやめます」って僕なら言いそうだ。

6.僕とアダナ・デミルスポルの「いま」と「これから」

 とある投稿をきっかけに僕がアダナ・デミルスポルを応援することになってもう1ヶ月半が経つ。この間に僕がやってきたこと、感じたことや変化、これからどうしていきたいかを書いていく。

(1)そして交流は続く

 現在、僕のXをフォローしているトルコ人はざっくり100前後である。これは僕のフォロワー数の5%である。こういう状況も踏まえて翻訳アプリを使ってトルコ語で投稿する機会を少し増やしている。

 やはりトルコ語の投稿の方がトルコ人はコメントしやすいしそこからコミュニケーションも広がる。また、僕も彼らの投稿を見てデミルスポルやトルコについて分からないことをリプで質問することもある。

 先日も朝食におにぎりを食べたという投稿を見て、トルコのおにぎり事情についてリプやDMを交えて色々教えてもらった。常に「なぜ?」と「何?」ばっか言ってる日本人だろ思われてないかいささか不安である。でも「分からないことは聞いてくれ」と言われているのだから額面通り受け取ってこれからもなぜなぜ日本人として活動していきたい。

 交流のあるトルコ人は、ほぼデミルスポルサポだ。一人だけ日本のアニメとゲームが大好きなフェネルバフチェサポもいる。デミルスポルはコンヤスポル(元仙台・FC東京のスウォビィクが正GK)とコジャエリスポルの2クラブと非常に仲が良いそうだ。サポの縁でそういったクラブのサポとも交流するチャンスが今後あると一段と楽しくなる予感もする。

 僕がよく連絡をとるトルコ人は、トルコ以外にドイツ、アメリカ、韓国にも在住している。英語でやり取りできる人も少なくない。推測するに大学で学んだ人は少なくとも英語でコミュニケーションが取れるのではないだろうか。僕は英語もトルコ語も翻訳アプリに頼ってテキストを読み書きしている。

 今、僕は人生で一番英語の学習欲がある気がする。意欲だけなら大学受験の比じゃない。せっかくテキストで話が弾んでも、仮に通話や直に会ったコミュニケーションをとる機会があったときにまるで話せないでは悲しすぎる。また、英語であれば別の機会でも汎用性があるだろう。トルコ人と交流するならトルコ語だろという話ではあるが、そこはちょっとゆるしてほしい。せめてニュアンスだけでも理解できればとトルコ語の本をちまちま読んでいることは言い訳として書かせていただく。

 さて、こうなったらアダナに行くしかないだろう。デミルスポルサポから何度も「アダナで待っている」や「アダナで共に歌を歌おう」とメッセージをもらったことか。残念ながら今の自分が置かれた環境では札幌を離れることもそう容易ではない。でも数年の間にはどうにかして行ってみたい。僕が次にパスポートを使って訪れる国がトルコになることは間違いないだろう。

(2)サポーターの生態は万国共通?

 出羽守という言葉がある。「~では……だ」という文句を多用する人のことを指すそうだ。サッカーのサポーターについても例外ではない。日本のサポーターと比べて「海外では」や「ヨーロッパでは」と他の国のサポーターを引き合いに出されるケースは存在する。もちろん日本のサポーターをほめる文脈で使われる場合もあるが、おとしめるために利用されることも当然ある。「だから日本のサポーターはダメなんだ」と。

 僕がデミルスポルサポと交流して真っ先に感じたのは「みんな意外とナイーブだな」ということだ。

 確かにチームが大不振におちいりなかなか勝利を見られない状況である。昨シーズンを4位で終えて期待に満ちた状態で今シーズンを迎えたがために、期待と現実の落差が非常に大きいのは理解できる。しかし日本で2部リーグ降格経験豊富な僕の目からすれば、リーグ順位はまだ中位をキープしており降格圏内に入っているわけではなく悲観する必要はないと感じてしまう。

 デミルスポルサポの投稿をちらちら見ると「降格圏で残留争い中だったっけ?」と思うくらいどんよりしたり、監督や選手への強い批判が飛び交っている。

 デミルスポルのカラマン監督は解説者としても有名であり、Xのフォロワーは10万人をこえる。そんな彼が小さな子供サポとファンサービスで撮った微笑ましい2ショットをXに投稿した。

 それに対してあるサポが送ったリプの内容がこちらだ。
「そんなことしてないで、次の試合勝つための準備をしてください」
どこの国でもクソリプを送るサポーターは存在するのである。

 僕よりもずっとクラブが日常にある人たちからすれば当然の反応かもしれない。それも一理ある。ただ、少なくともチーム状況が悪いときのサポーターの反応はどこの国でもおおむね変わらないのではなかろうか。

 審判の判定批判もすさまじい。元々デミルスポルサポの多くは、トルコの審判がイスタンブールのクラブに有利な判定をしていると考えている。それだけに自らに不利な判定が下されるとXが火をふく。この間まで会長だったサンチュクも猛烈に意見するからなおさらだ。審判が叩かれやすいのも万国共通である。

 地元のクラブがどんな状況でも俺たちが支え続ける。なぜなら俺たちの生活はクラブと共にあるから。ヨーロッパのサポーターにはそういう強い信念があるように感じる。というかそういうイメージを勝手に持っていた。

 デミルスポルサポに聞くとどうもそうではないようだ。トルコの各都市には地元のクラブではなく、イスタンブールにあるガラタサライ、フェネルバフチェ、ベシクタシュの3強のどれかを応援する人々はそれなりに存在する。

 下部リーグ時代からファンベースがしっかりあったデミルスポルのホームであるアダナも例外ではない。デミルスポルが成功すれば、デミルスポルを応援しだす。つまり強くないと応援しないわけだ。僕がその話を聞いたサポはそういった応援の姿勢を英語で“benefit love”(利益愛)と、そういうサポーターを"a clown"(ピエロ)と呼んでいた。なかなか辛辣である。

 もちろん勝ち負けや強い弱いに関係なくクラブを愛するサポーターも同じくらいいるだろう。ここで言いたいのは「日本も海外も変わらない」という話でもないし「海外では」という比較をすべきでないという話でもない。各地域の文化や歴史が違えば、当然サポーターにも違いがある。トルコで応援のために発煙筒をたくのが当たり前だからといって、日本でも許されるわけではない。

 その反面、人間が持つ感情の種類は古今東西変わらないとも感じる。ギリシャ神話やシェイクスピアの作品が今なお生き残っているのは、どんな人間も持っている普遍的な感情をよく表したものだからだろう。その普遍性が各国のサポーターに当てはまらないはずがない。なぜならサッカーは感情のスポーツなのだから。

公開練習にて発煙筒で選手を後押しするデミルスポルサポのみんな。
ピッチに入ろうとしてるのはバロテッリ。発煙筒の煙が似合うぜ。

(3)マインドを変えないと気持ちは伝わらない

 現代ではテキストのやり取りであれば、翻訳アプリを使って大まかな意味を理解し、相手に意思を分かってもらえる程度の文章を書くことはできる。そんな時代で「言葉がわからない」とはどういうことか考えると、僕は「ニュアンスが分からない」ことだと思う。

 僕がひと月半交流した経験だと、トルコ人はちょっときつめのジョークがお好きだ。いきなり「ハラキリ」を交えたジョークをかましてきたのも、おそらくそういうジョークを飛ばすことが元々国民性なのだと思う。

 ところが僕には翻訳アプリで意味は理解できてもそれがジョークかどうかの最終判断がまだつかない。ニュアンスがつかめないのだ。何を言っているか分からなくて「どういう意味?」と何度か聞いたこともある。向こうはブロックや無視することなく「ジョークだよhahaha(まったく、本場の笑いが分からない日本人だぜ!)」と明るく返してくれているのがせめてもの救いだ。

 ニュアンスが分からないと相手に向けて言葉を伝えるときにも注意が必要だ。僕が普段日本語で使っている言い回しをトルコ語や英語に訳しても確実に真意が理解されないだろう。

 日本語は婉曲的だったり回りくどい表現で「意味を察してもらう」文化、その「意味を察っせる・察せない」で互いのインテリジェンスを見定めたり、交流を深める文化が存在している気がする。英語やトルコ語にもあるかもしれないが、僕はまだ気づくまでにいたっていない。

 僕はおそらく婉曲的な表現を日本語でかんり多用するタイプである。同じ意味だとしても直接的に刺すより真綿で首を締めていく表現をつい選んでしまう。もっとも端から見ると火の玉ストレートをぶん投げているようにも見えるときもあるそうだ。ただ単に口が悪いだけかもしれない。

 そうなると僕が英語やトルコ語を使うとき、いつもの日本語のノリは封印だ。表現は気持ちをストレートに伝える方向にシフトせざるを得ない。このシフトが何を生んだか。「前向きな言葉」しか使えないのだ。後ろ向きな言葉や強いニュアンスに思える言葉はどう受け取られるかわからない。言葉ではないが、日本語のノリで文末に「!」を使ったら「なんでお前そんなにキレてんの?」とトルコ人に不思議がられた。

 僕が「日本最初のサポーター」となった時期は、デミルスポルの調子が最悪だった。サポの投稿もナイーブだ。コンササポとして成績不振に対するある程度の耐性があると自負する僕ができることは「遠い日本の北海道から応援している人がいるぞ。これからも前をむいて戦い続けるぞ」のような言葉を試合が終わるたびにトルコ語でXに投げかけることだった。日本語でそんな言葉はこっ恥ずかしくて書いた記憶がない。ニュアンスが分からないのでうかつなことを書けない気持ちと、遠く離れたよそ者だからこそ語れる応援の言葉があるという思いが合算して生まれた偶然の産物である。

 言葉は思考を乗っ取る。トルコ語や英語でストレートな気持ちを言葉にしてきた僕の中で変化が生じた。あくまで心持ちだが、コンサドーレの試合についてXに投稿するときも多少ストレートかつ前向きな気持ちの表現が頭に浮かぶようになったのだ。

 とはいえ別にポジティブなことを発信しまくっているわけではない。僕は試合終了後すぐ「俺たちはただ選手を後押しするだけ」と自分に矢印を向けるサポの姿勢がすごくマッチョイズムぽくてあまり好みではない。陽を強要されている気持ちになる。これはそもそも僕はマッチョイズムに対して嫌な記憶や苦手さがあることは留意してほしい。

 ここから分かるように僕は一般的にみて前向きな投稿を頻繁にできるサポではない。チームの良かったところも今までよりは発信する言葉として思いつくようになった……かも程度の話である。周りから見ると特に表現に変化はないだろう。でも明らかに僕のマインドは変化している。

(4)コンサドーレを「2番目に好きなクラブ」へ

 予想外にトルコ人のフォロワーが増えたことから、ここで生まれた交流をデミルスポルの応援以外にも活用しようと僕は思い始めた。北海道とコンサドーレを勝手にもっと広めることだ。

 僕がXで交流したトルコ人から出てくる日本の地名はほとんどTokyo(東京)、ときどきOsaka(大阪)だった。Hokkaido(北海道)やSapporo(札幌)と書いても知ってるのか知らないのかよく分からない感じだ。

 そこでトルコ語でXに投稿する際は可能な限りHokkaidoやSapporoを用いるようにしている。たとえば「日本から応援しています」ではなく「北海道の札幌から応援しています」という風にだ。せめてもの抵抗とアピールである。もし日本を観光する機会があれば、旅先の選択肢に札幌や北海道を入れることを検討して欲しい。そんなささやかな願いである。

 ちなみに札幌を知っているトルコ人が必ず話題に出したのがビールである。「札幌って新鮮なビールが飲めるところだろ?」とメッセージをくれた人もいた。サッポロビールのことである。トルコ国内でサッポロビールが人気というわけではないが、アメリカなど海外に住んでいるトルコ人がその土地でサッポロビールのおいしさを知ったようだ。地名がブランドの一部になることのありがたみを思い知った。ありがとうサッポロビール。本社は東京だけど。

 もうひとつ、せっかくなら僕が最も愛するクラブの存在も知ってもらおうと試合の話を中心にトルコ語でコンサドーレのことをXで投稿するようになった。理由は単純だ。アダナに縁もゆかりもない日本人が北海道の札幌でデミルスポルを応援しているように、北海道に縁もゆかりもないトルコ人がアダナでコンサドーレを応援してたらなんか面白そうじゃないか。ただそれだけの話である。

 僕はコンサドーレとデミルスポルの共通点を勝手に見出している。どちらもお金がないと嘆きながら1部リーグで戦い続けられないでいた。コンサドーレは昇格しても定着できない。デミルスポルはそもそも昇格から遠ざかっていた。そんなクラブ状況でも支えるサポーターは多くいた。下部リーグのクラブにしてはしっかりファンベースがあり、1部に昇格しても変わらずクラブを変わらず支えている。だからシンパシーを感じると僕もときどき伝えている。

 では肝心のトルコ語発信の成果だがおそらくほぼない。当たり前だ。別に日本や日本のサッカーを知りたい人が僕をフォローしているわけではないし、僕もフォロワーを釣るために何か工夫しているわけではない。でもいいのだ。だって楽しいから。

 そうは言いつつ、僕がコンサドーレの試合情報や結果のお知らせをトルコ語で投稿すると「勝つことを祈るよ」や「(負けて)残念だったな」といったリプをもらえたりする。「俺たちのクラブを応援しているよく分からん日本人がそっちで応援してるクラブ」ぐらいには思ってくれているかもしれない。

 しかも、僕が頻繁に連絡をとっているサポの中にはコンサドーレのSNSをフォローし、ハイライトをYouTubeでチェックしてくれる人もいる。この間は公式Xにも応援のリプを送っていた。「将来は姉妹クラブになろうや」なんて話を雑談レベルでDMされた。いや、どうやってなるんだ。誰か教えてくれ。

 コンサドーレの応援席の様子を撮った写真を何枚か送ったところ、その雰囲気をいたく気に入ったサポもいた。僕が送った応援席の写真を添付して彼はXにこう書きこんだ。

「Japonya'da desteklediğimiz bir takım var artık.」
(私たちには今、日本に応援しているチームがある。)

 コンサドーレの三上大勝代表取締役GMは今年、社員や選手に対してこのように呼びかけたそうだ。

「2番目に好きなクラブになってもらおう」

 この言葉を胸に今季を過ごすコンササポもいるだろう。しかし、三上GMもおそらく想定していなかっただろう。コンサドーレを日本ではなくトルコで「2番目に好きなクラブ」にしようとしてるコンササポが出てくることを。僕だってそんなつもりはこれぽっちもなかったのだが。

(5)知るは楽しい

 ここまで様々な話を書いてきた。でも僕がデミルスポルと関わる一番のエンジンは「知る楽しさ」。これにつきる。

 僕の「知る」行為の主軸は読書である。今後もこれがブレることはない。「やっぱり引きこもって本を読むより、人との交流って大事だよね」のような定型文を書くつもりもない。そもそも僕は引きこもりながらSNSで交流してるわけだし。

 デミルスポルを調べたりサポと交流することは新しい発見が多い。だが僕が何より面白かったのは、交流を通して発見したことを読書で答え合わせや知識の補強ができたり、読書でうっすら知っていたことを交流を通して答え合わせや再度確認できたことである。

 交流、読書、そして思考がトライアングルを作って縦横無尽に作用しあってる感覚だ。交流をすれば読書がはかどり思考も深まる。読書で思考したことを交流で試してはまた思考して反省する。交流と読書によって自分が本当に思考したかったことを言葉にできることもある。頭の中で高速のパス回しが繰り返されている。だからこそ普段より疲れることも多い。疲れはしんどいけど気分は愉快だ。

 4歳でサッカーというスポーツに触れてから今年で27年目を迎える。来月で31歳になるので年齢はまだ青いが、サッカーファンとしてのキャリアはそれなりだと自負している。振り返るとサッカーが一段と楽しくなった・面白くなったポイントは数えるほどしかない。しかも幼少期に集中している。好きになりたての時期に新鮮な気持ちで感じた楽しさや面白さをかなうものにはなかなか出会わない。

 だが、デミルスポルとの出会いでここにきて一段とサッカーが面白くなってきた。まだまだサッカーには自分の知らない面白さがたくさん眠っており、それらを自分も掘り起こすことができると気がついてわくわくしている。

 サッカーじゃなくても、他のスポーツでも、別の分野や地域と結びつくことができる。でも僕はサッカーほどあらゆる分野や多くの地域と結びついて「越境」できるスポーツは現代に存在しないと思っている。だから僕にとってサッカーは世界一のスポーツだしずっと大好きなのだ。

7.「楽しい」と「面白い」しか燃料にならない

 今回の一連の出来事を体験している間、僕は普段以上の疲労をずっと感じていた。日本語以外の言語を使用することがここまで負荷になるとは考えもしなかったのである。

 僕はトルコ語はもちろん英語もそこまで満足に読み書きできない。どちらも翻訳アプリに依存してコミュニケーションを取っている。それはただ単に日本語を翻訳して相手に送るわけではない。自分の素の言葉を相手にニュアンスが伝わるような日本語に置き換え、その上で翻訳する。その作業を何度か繰り返してしっくりきそうな文を相手に送っている。この何度も何度も言葉を変換する作業がかなりの負荷なようだ。

 そんな負荷がかかろうとも、僕はこの1ヶ月半が楽しくて面白くて仕方がなかった。ちょっとした偶然から話がここまで転がってくる面白さ。日々が新しい発見ばかりで知的好奇心が止まらない楽しさ。日本語で得られる情報を集めるので人生いっぱいいっぱいだと思っていた自分に新たな扉を開いてくれた。

 僕がXにてトルコ語で投稿しはじめたことに関して、悪意はないが僕としてすごく悲しい物言いをしてきた人もいた。僕に言わせればこの状況を楽しむため、向こうのクラブのサポに輪に入れてもらった恩義のために、こちらから相手の言語を使うことは当然のことだ。そこに功名心や承認欲求など介在する余地がない。クラブ、サポ、地域のことを理解するのに夢中だからだ。

 結局のところ「楽しい」と「面白い」にまさる燃料は存在しない。これからも遠い異国の地からアダナ・デミルスポルというクラブを応援し、そして「応援している」という状況を面白がり楽しんでいきたい。

僕がデミルスポルでお気に入りの一枚。
試合に勝った後、サポと選手だけでなく、選手の子供たちも共に喜びあう。
最終戦でもタイトルがかかった試合でもなく普通のリーグ戦である。

8.補足―まだ腹落ちしないこと

 本編では話の流れを多少通りのいいものにした。もちろん嘘や誇張はない。僕の中で少し疑念があるところや弁解が必要なことは本編から外した上でこちらの補足に書くことにした。

(1)本当に「最初の日本人サポーター」なのか?

 そもそも「最初の日本人サポーター」と称されたと言ってるけど、お前本当かよ。確認したんか。そういう話をしたい。

 そもそも「最初の日本人サポーター」ということはクラブでオフィシャルに認められたわけではない。5000フォロワー程度のサポアカウントが投稿でそう書いたのがX上で広まっただけだ。知らないだけでデミルスポルを応援する日本人は既にどこにいるかもしれない。僕が最初という確証はない。

 デミルスポルはホームの試合に1万人以上来場するレベルのクラブである。その1万人が僕のことを認知しているわけではない。僕のXをフォローしているトルコ人が100程度である。

 以上のことから考えると僕を「最初の日本人サポーター」とみているデミルスポルサポは悲観的に見て150~200人ぐらいな気がする。実際のところはどうか分からない。仮に何千人ものデミルスポルサポが知っているとなってもそれはそれでどうしていいか手に負えないわけだが。

(2)「謎の日本人」の本当の扱い

 X上に突如現れた謎の日本人サポーター。彼の存在を知ったデミルスポルサポたちは正直どう思っているのだろうか。これも分からない。

 歓迎されているのは本当だろう。ジョークがあんまり通じない奴とはおそらく思われている。それは仕方がない。君らのジョークがまあまあキツくてニュアンスを読み取るのに迷うのだ。変なトルコ語を使っていると思われている。これもあり得るだろう。翻訳アプリの通りに書いてるから実際のニュアンスと合っているのか自信はない。

 いろいろ考えてると実は珍獣のような扱いで笑われている可能性もあるわけだ。でも、そんなこと考えたところでしょうもない話である。X上ではみんなして歓迎してるしクラブのこともみんな親切に教えてくれる。それで充分ではないか。

 日本には日本を訪れていたり住んでいる外国人に関するテレビ番組などがある。それを見た我々日本人の受け止め方は、日本に来てくれた歓迎の気持ち、日本を好きになってくれた喜びの気持ちだけではないはずだ。どこか心の底には物珍しい人として見せ物のように眺めてしまっている自分に気がつかないだろうか。

 そう考えると僕がある程度見せ物のような見られ方をされていても、万国共通の人間の性として受け入れられるのだ。

 今のところ騙されて金銭面などで損をするリスクもない。もっとも、僕にユニフォームをプレゼントする話が一部のサポからちらっと持ち上がっているらしい。しれっとサイズも聞かれた。もし本当にこの話が動くならばちょっと考えなくちゃいけないかもしれない。彼らのノリならば、おそらく本当に札幌までユニが届きそうな予感もするが。

(3)裏取りの難しさ

 僕が得たデミルスポルやトルコサッカーの情報の多くは知り合ったデミルスポルサポに頼っている。すなわち僕の見方も現地のデミルスポルサポ視点に依拠したものになりやすい。

 彼らの中には審判の判定について「イスタンブールを勝たせて、俺たちを上位にいかせないようにしている」といったことを毎試合投稿している者もいる。ではこの言い分がどこまで客観的に正当なのかどう確認できるのか。まさかデミルスポルサポに「本当は公平だろ?」と聞くわけにはいくまい。

 審判の話はあくまで一例だが、僕のキャパシティでは得られた情報の裏取りに漏れが多々あるのは事実だ。もし僕がジャーナリストだったりトルコサッカー事情を日本人に伝えるために人生を捧げている人なら、トルコ語の資料を探しては読み解いてより確度の高い情報として彼らの証言を受け止めようとするだろう。だがそこまでの余裕と根気がない現状では、裏取りの漏れをなけなしの思考力などでカバーしてある程度納得感のある結論を自分なりに出すことになる。

 したがって本編では、自信をもって裏取りできたといえないものは少し補足することで明確な真実とは断定しないようにした。しかしデミルスポルサポたちがそのように証言したということは事実である。真実かは分からないが、彼らはそういう視点で考えていることは知っていただきたい。

9.参考資料

(1)ポッドキャスト「本棚とピッチのあいだ」

 僕自身が配信しているポッドキャストである。今回の記事は、ここでしゃべったことをたたき台にした箇所も多い。そこでトルコに関する回のみを列挙した。

(2)アダナ・デミルスポルのSNSと試合ハイライト

◎公式X
https://twitter.com/AdsKulubu

◎公式Instagram
https://www.instagram.com/adskulubu/

◎beIN SPORTS Türkiye
 リーグの全試合のハイライトが試合後アップされる。

(3)文献など

◎つじーを「最初の日本人サポーター」と書いたデミルスポルサポのXの投稿

◎1ケタ順位狙うため今季は「攻めながら守る」…三上大勝代表取締役GMのコンサ便り(スポーツ報知)(2024/2/24)
 三上GMの「2番目に好きなクラブになってもらおう」宣言は、この記事が出典だ。

◎間寧『エルドアンが変えたトルコ』
 エルドアン大統領、2016年クーデター未遂について学ぶために読んだ。読み物として非常に面白い。トルコの専門家としてエルドアンを冷静に観察している印象を受ける。

◎松富かおり『エルドアンのトルコ』
 2016年クーデター未遂に関して詳しく書かれている。エルドアンに対してかなり懐疑的かつ批判的な目線を持って観察している印象を受けた。

◎今井宏平『トルコ現代史』
 トルコ建国からの政治の流れはこの一冊でコンパクトにつかめる。これを事前に読んでいなかったらエルドアンに関する本を読んでもあまり理解できずに終わっただろう。

◎『地球の歩き方 イスタンブールとトルコの大地 2019~2020』
 手軽に手に入り、トルコの地理が最もよくわかる本を考えると結局『地球の歩き方』にいきつく。トルコ人とやり取りしたり、トルコのサッカーを調べる際には辞書のごとく使用している。

◎小笠原弘幸『ケマル・アタテュルク』
 建国記念日や誕生日には、トルコのすべてのサッカークラブがこの男を顕彰する投稿をする。トルコを知るには絶対外せない人物1位の評伝。

◎清義明『サッカーと愛国』
 アダナ・デミルスポルは一切出てこないが、トルコのサポーターについての記述がある。ガラタサライ、フェネルバフチェ、ベシクタシュのウルトラスがタッグを組んで反政府デモに援軍として参戦するくだりはちょっといい。

◎吉村大樹『トルコ語のしくみ《新版》』
 日本語で読める一番やさしいトルコ語入門書。言葉を覚えるというよりは、どんな言語か触れてみようという感じなのでニュアンスを知りたい自分には今のところ適している。

本の購入費に使わせていただきます。読書で得た知識や気づきをまたnoteに還元していきます!サポートよろしくお願いいたします。