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【第2話】きみ、アルバイトをする暇があるなら小説を書きたまえ!

ネイビークライシス誕生秘話

僕は若かりし日に『護衛艦』と呼ばれる鼠色のお船に乗っておりました。
大砲やミサイルでハリネズミのように威嚇した戦闘艦です。艦橋も大きくトップヘビーのフネでしたね。艦名は「やまゆき」と言います。

呉市在住の僕は駅前一等地のアパートで爽やかな朝日とともに世界最高傑作機PC-88VAで一気に小説を書き上げました。一気に書き上げないと昼に桟橋へ迎えにくる『内火艇』に間に合わないからです。
僕の護衛艦はドックから出て沖合いに仮泊中。一週間かけて洋上での慣熟訓練を行う予定でした。つまり、この機会を逃せば次にパソコンへ触れるのは一週間後なのです。

1時間後に同期が来ました。
「まだ早いだろ」
文句を言う僕に「大丈夫だ、俺はビデオを見ているから」と執筆中の僕を気遣ってくれました。
3時間後に先輩が来ました。
「忙しいんです」
文句を言う僕に「大丈夫だ、俺はマンガを読んでいるから」と鬼気迫る形相の僕から遠ざかるように本棚を漁り始めました。
5時間後に上官が来ました。
「よっしゃぁぁぁぁッ、完成した。PC-VANへ投稿じゃぁぁぁぁぁぁッ!」
奇声をあげる僕に「大丈夫か。フネへ戻る前に病院で検査するか」と気遣ってくれました。
「ご心配無用です。僕の人生で最高の傑作が誕生しました」

35年前に書かれ、その後数回の修正を重ねながらより完璧に仕上がった本作は今でも僕の最高傑作です。

……問題は、この作品を超えるものが生み出せない。あの頃の自分(甲斐しげる)に勝てない。

猫海士ゲルは甲斐しげるに勝ちたい!

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