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ライフ・アフター・ベス

Life After Bath (2014)

 元町映画館さんの記事を読んでの鑑賞。
 面白かったです。ご紹介ありがとうございます!

 ジェフ・バエナの初監督作となるゾンビ・コメディ。出演は「チャイルド・プレイ」(2019)のオーブリー・プラザ、「ディーン、君がいた瞬間」でジェームズ・ディーンを演じたデイン・デハーン、「カジュアリティーズ」のジョン・C・ライリーほか。私がデハーンを初めて見たのは「メタリカ・スルー・ザ・ネヴァー」だったと思います。
 死んだはずの彼女(プラザ)が墓から甦り、最初はマトモだったのがだんだんと…というお話。タイトルはLife after death(死後の世界)のもじりですかね。アイアン・メイデンの最初のライブアルバムは「Live After Death」。

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 ゾンビを絡めているとは言え基本路線はラブコメなので、きゅんとさせたり、あら~若いのねとニヤつかせたりするシーンが多々あります。ちょっと変わった彼女を何とかしようと努力したけど手に余り、悲しいサヨナラをして新しい彼女とやり直し…みたいなお話に無理くりながら変換できなくもないのですが、「ん? ちょっと待てや」と思わせる『引っ掛かり』がそこらここらに。

 まず『1人でハイキングに行ったら、蛇に噛まれて死んだ』というところからしてオカシイ。あり得なくはないけど、オカシイ。もちろんわざとでしょう。彼女が真相を知った途端、街を総出の大混乱が起きますが、ゾンビ騒ぎの原因と思われたハイチ人のメイドは結局無関係だし、キレた兄貴(マシュー・グレイ・ギュブラーが好演)は誰彼構わず撃ち殺すし、彼女のママは「お腹すいてるのね」と自分の指を食べさせてるし。オカシイ。

 挙句にデハーンが「マチュピチュに逃げよう」と提案した途端、いきなり事態が収束します。いや、絶対にオカシイんですけど、このテンポはすごく好き。その後、ともに生き延びた幼馴染(アナ・ケンドリック)に何事もなかったかのように「一緒にご飯どう?」とはにかみながら誘うデハーン。新たな恋を予感させるハッピーエンドと思いたいところですが、このラストもなーんか意味ありげなんだよなあ、今までが今までだけに。

 コメディではあるのですが、腹を抱えて笑うようなシーンはありません。古典的なギャグとしては、退職したメイドが無関係だとわかったあと、全裸の中年女性ゾンビが現れるところぐらいですかね。個人的に一番面白かったのは、オーブンを背負った彼女をハイキングに連れ出すときに兄貴に会い、行く行かないでもめるシーンです。あんまり仲が良くなかった兄弟が互いの愛情を再確認するいいシーンなのに、彼女が後ろにいるおかげですっごくオカシイ。や、彼女がいなくても兄弟の会話がすでにオカシイか。

 オカシなところがたくさんあり、けれどもそれらが闇雲に連発されるのではなく、現実感や合理性との絶妙な距離を保ちながらそこかしこに配置されているのが、本作の一番の魅力であると感じました。シュールなオカシさなので、十分な説明や種明かしがなくてもあまり不愉快じゃない。

 プラザ、ケンドリックとも、すごい美人と言うわけじゃないけど、かわいらしいですよね。タイプの違う2人ですが、自分が若かったらどちらともデートしてみたいなあ、と思わせる現実的な魅力があります。この2人、「スコット・ピルグリム vs 邪悪な元カレ軍団」「ウェディング・フィーバー/ゲスな男女のハワイ旅行」でも共演していますね。

 弟に捨てられ、「あれ高かったのに!」と兄貴が文句を言うシルバーのピストルはデザートイーグル。退役軍人でもない普通の市民ならリボルバーを持っていそうなところ、こんなストリートギャングご用達の大型拳銃を持っているのも、あり得なくないけどオカシイ。大口径の.50AEではなく、.357マグナムモデルかと思いますが、軽く調べてみると1,500~1,700ドルぐらい。うん、高いね。

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