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デッド11 復活ナチゾンビ軍団

Trench 11 (2017)

 レオ・シャーマン監督の戦争/ホラー映画。第一次世界大戦中のフランス、ドイツ軍が実験を行っていたと思われる巨大地下壕に英米加混成部隊が潜入、証拠隠滅を謀るドイツ軍も地下壕に到着すると……というストーリー。主演のロッシフ・サザーランドはドナルドの息子で、キーファーの異母弟。お父さんよりも、お母さんのフランシーヌ・ラセットのほうに似てますね。

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 まずは看板に偽りあり。第一次大戦末期なのでナチスじゃありません。『ゾンビ』の正体はアンデッドではなく、脳に虫が寄生して凶暴化したドイツ兵で、頭を撃たなくても普通に死にます。他人にも感染しますが、味方の誰が感染しているか? みたいなスリルはないです。感染者に襲われる恐怖感もどちらかと言えば淡白で、地下壕を巡る連合軍対ドイツ軍の攻防がメイン。「ナバロンの要塞」や「荒鷲の要塞」のスケールをうんと小さくして、スパイ要素からオブ・ザ・デッド要素に入れ替えた感じでしょうか。

 格付け的にはB級に留まりますが、映画自体は意外と面白く、戦争アクション要素もホラー要素も(もっと言えば戦争批判もある)欲張らないで程々に仕上げているので、とにかく明快で全体のテンポがいいです。食い足りなさを覚える人もいるかもしれませんが、あれこれ盛り込んで何が何だか判らなくなるよりは断然いいと私は思います。序盤の照明は手元明かりだけ、ドイツ軍部隊が到着すると構内の照明がオンされ、地下壕の概要が重苦しく明らかにされるのもいい感じです。グロ・残虐描写もそこそこあります。

 登場人物のキャラクターが明確なのもいいですね。連合軍側は歴戦の工兵(掘削人)の主人公、部下思いで熱血漢の米軍大尉、野心家で傲慢な英軍少佐、冷静な軍医。ドイツ軍側は、正論を吐いているようでいてやっぱり狂っている科学者(ロベルト・シュタットローバーが好演、ステレオタイプなナチ風キャラ)と、硬骨漢で人間味のある大尉(カナダ人のショーン・ベンソンがこれまた好演)。それぞれの立場と役割、容姿、性格がはっきりしているので、物語を見失う心配はありません。主人公の恋人(「静かなる叫び」の カリーヌ・ヴァナッス)は正直言って不要ですが、美人さんなのでヨシ。

 スキンヘッドの米兵を襲う感染ドイツ兵が「シャイザー、シャイザー」と言っており、スキン兵が「シャイザーって何?」と周囲に尋ねるシーンがありますが、あれたぶん「Scheiße(シャイセ=クソッタレ)」ですよね。

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