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御用聞きの「ねこの手通信」Vol.1

ねこの手では創業から今まで、毎月ねこの手通信を発行しております。
ご依頼者に対応しながら感じたこと、事例などを関係各所に共有しております。
FBにも備忘録のように活動を書いておりますが、「ねこの手通信」は、こんなことが頼めるんだとか、現場の生の事情、現状、こんなお困りごとがあるのだと知っていただくために作成して配布しております。



訪問美容

元気な時は、ご近所の美容室に毎月通って、パーマをかけてカットしてというご依頼者。
居宅介護事業者のケアマネージャーさんからのご紹介で伺ってきました。
東京に住む娘さんとご本人、ケアマネージャーと私で顔合わせして、料金を含めた説明を事前に済ませておいたので、当日は妻(美容師)と2人で訪問です。

ご利用者は最初、昨年末に心臓の病が見つかって入院した話などを淡々とされておりましたが、その表情は少し暗い。
一緒に暮らす息子さんに、以前のように髪を綺麗にしておいたほうが良いよと言われたとのことで、ご用命をいただきました。

カットを進めるうちに、会話も弾んで、長かった髪もさっぱりとカットし、産毛トリマーでお顔を綺麗にすると、ご依頼者の口から「たまには娘が台所で髪を洗ってくれるの」と言うので、それであればシャンプーもしましょうか?ということになり、シャンプーいたしました。
洗髪してブローすると、どんどん表情が明るくなり、鏡でご自身を確認してもらうと、満面の笑みです!

カットする前とした後では、表情がまったく違います!
これには本当に驚きました。やっぱり何歳になっても女性ですね(笑)
息子が帰ってきたら、びっくりするわねぇ。と嬉しそう。
帰り道に妻と二人で「喜んでくれて良かったね」と達成感を感じた仕事になりました。

生活改善

居宅介護事業者のケアマネジャー様よりご相談。
ご依頼者は団地にお一人住まいの認知症の方。定期的にお片付けや細々できないことを対応して欲しいというご依頼内容でした。

我が家の母親も認知症で特養に入所しておりますが、在宅で面倒を見ていた時は、それはそれは大変でした…。
それがご家族がいなくてお一人暮らしだと、どんな感じだろうと思っていました。

認知症の方には、怒らせないように、本人の意思を尊重して、その人らしく生活できるよう接することと、母親の担当ケアマネージャーからご教示いただき、なるべく平常心で強くあたらないように接するようにしていました。

でも家族だとこれがなかなか難しいんですよ。
自分の母親だと…。

そんな経験が頭をよぎりますが、初回、ケアマネージャーと同行してご挨拶させていただき、支払いに関しては、お金を社協で管理していただいているとのことでしたので、月末精算で対応することにしました。

自治会や管理事務所にもご挨拶させていただき、団地のルールも確認して実働をスタートさせました。
1日目は溜まっていた新聞紙の処分。団地のリサイクル置き場にすべて運び、雨が降っても大丈夫なように大きめのゴミ袋にて覆いました。
次回は点いていない電球が3か所もあったので、すべて交換いたします。こんな感じでスタートしましたが、毎回30分で少しづつ改善していければと思います。

孤独死

ねこの手を起業して半年くらいたった時のお話。
孤独死の現実に向き合うことになりました。
前職の時に、この「孤独死」対策として、UR団地の「見守り」事業に関わせていただきました。

この仕事の始めるきっかけの一つであることは間違いありません。
でもこの「孤独死」が今一つピンときていなかったのも事実です。
「孤独死」って、あるんだろうなぁ…と、その程度でした。
それでも「孤独死」というキーワードに真剣に向き合って、社内でできることを真摯に取り組んできたつもりです。

そして今回、ねこの手を起業し、とある団地に住む単身高齢者(男性)の訪問理容に行ったのですが、理容を施術した翌日に、ご依頼者が「孤独死」しました。

訪問理容に伺った時は、美容師である妻と、理容師である担い手と、私の3人で伺い、色んな会話で盛り上がりました。
「新井さん。このロッキングチェア、ちょっとギシギシいうから、試しに座ってよ。異常がなければ、俺も座るから」なんて、冗談交じりに楽しそうにしていたのに。

施術翌日、担当する後見人から連絡があり、朝に亡くなっていたことを知らせれました。
デーサービスのお迎えに伺うと応答がなく、後見人に連絡があり鍵を持って訪問すると亡くなられていたと…

どうやら最後に会話して接した外部の人間は、ねこの手の我々らしいです。

驚愕の事実。驚き以外の言葉が見つかりません。昨日まで楽しそうに話していた方が、孤独死していた…。

葬儀(火葬)に伺ってきました。
火葬に立ち会ったのは、私と後継人のご夫婦。訪問診療していた主治医の事務方の4人。
後継人、曰く、息子さんがいらっしゃるようですが、火葬には参列せず。
この家族模様だから、後見人を付けたのでしょうが…

ご本人の部屋に残されていた、ご本人の趣味のモノが少しだけ棺の中に納められ、旅立たれました。

孤独死は淋しいものです。
家族の絆。親子の絆。近隣との関わり。見直したい。

病院へ行きましょう!

創業当時からゴミ出しやお買い物を支援してきたMさん。
地域包括支援センターからのご紹介で対応してきました。
すでに6か月以上のお付き合い。

当初は、あまり歩けなくなってきたので、ゴミ出しやお買い物をお願いしたいとのことでしたが、ここ1か月ほど前から、家の中でもあまり動かなくなった様子が、手に取るようにわかってきました。

少し、もの忘れや思考に対する集中力も欠け、金銭の管理もできなくなっているようでした。
ただMさん。根っからの病院嫌い。歩けなくなってきている原因すらわからない。
病院へ行って無いので、医師の意見書も無くて介護保険も適用になっていない…
さすがに最近の状況を鑑みると、病院へ連れて行かなきゃと思うようになり、Mさんを説得いたしました。
「ねこの手さんが一緒に行ってくれるなら、病院へ行ってみるよ」と言ってくださいました!まず一つ前進。

翌日、地域包括支援センターのご担当者に病院へ行くことを決意してくれたことを共有し、介護保険の申請書を持参して2人で再度訪問してきましたが、そこには驚きの光景が…。

階段、床が排尿と排便ですごいことになっております。おそらく動けなくてトイレが間に合わなかったのでしょう。
2人で床の汚れを拭き掃除してから、再度、病院へ連れて行く日程を決ました。

病院へ行く当日、私が迎えにいくと、朝から入っていたヘルパーさんが右往左往しております。部屋に入ってみると、Mさんが寝ている布団、床、畳が排便ですごく汚れていて、その中で寝ている状況でした。ヘルパーさんが「ねこの手さんが迎えにくるから、洋服を着てください」と1時間以上説得するもまったく言うことを聞いてくれませんと…

地域包括支援センターのご担当者に連絡し、救急車を呼ぶことを決意しました。
救急車到着前には地域包括支援センターのご担当者とも合流して、救急車に乗せることができましたが、救急隊員から「どなたか付き添ってください」と要請があり、私が付き添うことになりました。

なにわともあれ、当初の目的であった病院へ連れてくることができ、しばらく入院という運びになりましたが、近県で暮らす弟さんとも連絡が付き、翌日には入院手続きも完了しました。

この入院騒動から1年が経ちました。
歩けなくなった原因は水頭症とわかりましたが、ご本人は手術を頑なに拒んで、現在は介護老人保健施設(老健)で暮らしています。

空き家となった主なき家は、近県で暮らす弟さんが管理しておりますが、来るだけで3時間以上かかってしまう。
弟さんからのご依頼で、郵便物を弟さんに送る。家の周りの草刈りや片付けを今でも定期的に依頼されております。

おそらくご本人がこの家に戻ってくることは難しい気がします。