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UXデザイン大事と連呼するだけの人が信用できない。理想と現実

各種ビジネス系のイベントでUXデザインの大切さやデザイン経営の話をしてくださる登壇者が増えたおかげで、変化を嫌う方々の耳にもUXデザインという言葉が浸透し、ユーザーの声に耳を傾けるべきだとかそういう意見を聞く事が増えた。

デジタルプロダクトを作る側の人間としては、ここ数年で頑張って主張してくださった方々にとても感謝している。

UXが〜と言いながら、自分の意見を論破する事に必死な人達

技術にしか興味がなかったエンジニアや、数字ドリブンの戦略担当者の口からもUXという言葉が飛び出すようなった。いい時代になったと思いつつも、相手によっては気をつけて話を聞く必要がある。

チームのメンバーには、〇〇さんがUXと言った時は広義リサーチ含めたUXの意味で、〇〇さんはUIのインタラクションの話だから勘違いしないように、など、毎回、同席したメンバーに解説することもある。

UXという便利な言葉のおかげで、ユーザーの意見を隠蓑に、個人の意図を存分に入れた意見を言う強い人が出てきたのも事実だ。

毎回その議論を交通整理して、論点を合わせ、決定に持っていくという仕事をかなりの時間を要するようになってきた。

個人的には時間がかかりすぎて失敗したな、なんて思っている会議の後ほど、なぜか感謝されることが多い。

普段言えないあるべき論の意見を言えて、自尊心が高まるためか、中にはいい議論だった。と、その議論を楽しんでいる人もいるようで、

この非効率さに、モヤモヤしたりなんかもする。関係者が少なければこんなの1時間で実装できるんだけどなーなんて思ったり…。

アウトプットが抽象的かつ政治的になってきたデザイナーはどうすべきか

私の仕事は年を追うごとに、抽象的なデザイン概念をステークホルダーに伝えて判断材料を整理&提案し、お客様にどう見せるか?を判断するのが主な仕事になってきた。

Photoshopやsketchでデザインを量産したり、Adobeのような高級ツールが使えない会社の時でも、紙とペンやExcelを駆使してワイヤーフレームを作りプレゼンしていた時代が懐かしい。

ビジュアルデザインするだけではダメだと知ってからは、作る前にお客様のところにヒアリングやインタビューに行って、リサーチをまとめたり、エンジニアとどうしたら実現可能かを相談し、結果が全てと言われれば、本を読み分析ツールを駆使して利益貢献を証明するための成果報告まで行った。

企画が通らなくて落ち込んだ日も、様々な工夫をして、やっと企画が通った時の喜びも、徹夜しながらデザインを完成させ、やっとローンチできた日の喜びもどんな時もこの仕事で良かったと思いながら頑張ってきた。

受け身で仕事するのが嫌で、事業会社で仕事をする事に拘って、責任も持たせてもらえるようになった。

ユーザー中心設計ってそういう事じゃないんだけど…

この歳になってあらためて気づいた事がある。
いくらユーザー中心のアプローチで提案してもほとんどの企業ではそう簡単にら通らないという事に。GAFAがこうしてます!と言う方がむしろ承認してもらえる事が多い。

ユーザーストーリーを一緒に語りながら、経営判断をくだせるような人は日本の大規模組織の中には、そうそういないと思う。ユーザー中心でデザイナーが権限を持って判断できるのは大きな投資が入ったアメリカ企業の一部だけではないだろうか?

ほとんどの企業は経済原理のもとに判断しなければ体力がなくなって会社はつぶれてしまう。

昔の私はUXデザインをベースにサービスやプロダクトの設計をすれば盲目的に儲かると信じていた。でも現実は違う。使いにくくても必要なものは売れる。希少価値の高いモノは値段が上がる。使いにくくても。

正直言うと、もっと早く知りたかった。UX大事とかいう人ほど、あまり信用できない事に。昨今のビジネスにおいては、UXは往々にして都合よく意見をいうための議論ツールとしてしか見られていないのが現状だと思う。(もちろんアカデミックの世界では別)

カスタマージャーニーやリサーチ結果には文句を言わなかった人たちも、ビジュアルデザインになると途端に言う事が変わる。見た目の話なので誰でも意見を言いやすいし、好き嫌いで判断しがちだからだ。大規模のプロダクト開発では、ひとつの機能に大勢が関わりすぎて、まとまらないのは日常茶飯事だ。部署の既得権益を守るために、たった一つのTwitterのコメントをピックアップしてUXを盾にプロダクトの優先順位を覆しにくる偉い人も多い。

もちろん、いや、それは…
たくさんのフォロワーを抱える人の意見はもちろん正しいし、一理ある。あぁ、今日もまた今までユーザーの話をしてこなかった人に、なぜこうなったのか、現状を説明する必要があるのか…。


私は、所謂デザイナー的なアウトプットを出さずに、何年もたってしまった。最近はUXデザインの力を純粋に信じているメンバーもいる中で、彼らが考えたデザイン通すためにはどうしたらいいか?ばかり考えている政治家になってしまった。

一体何をやってるんだろう…。

その判断でいいのか?
木を見て森を見ず。

いや、それ初期の企画段階で言いましたよね、やっと気付きました?え?いや、あの時首を横に振ったのはあなたでしたよね…?え?覚えてない?そ、そうですか、そうですよね…と、毎回気苦労する。

分かる、分かります。そこのあなたもそうですよね。いい加減疲れてきましたよね。
ユーザー中心とか言いながら、ビジネス要件が優先されて、技術要件で機能が削られる。

UXデザイナーだけが集まるイベントで必ず話題になる、UX的アプローチでデザインができないのは、組織に問題があるから。というUXデザイナーあるある。その苦悩は私はもう本当によく分かります。

でも、もう、辞めたい。こんな同じ悩みばかり繰り返すのを。

やりたい仕事の進め方ができない。新しい考え方やツールの良さを上司や経営陣が理解しない。私の知る限り、この問題は少なくとも自分が働き始めた15年以上前からどの職種でも普遍的で変わらない問題でもある。

つい最近、というかまさに今も、私は組織の判断とユーザー要望のせめぎ合いの中で苦しんでる。どうしようできない。涙目だ。決定は覆せないし、改善提案も出せない。Twitterやお問い合わせフォーム、レビューの吐き捨てるような言葉を見るたびにへこむ。苦しい。ユーザビリティ向上だけではどうにもならない。

自分の仕事が誰の幸せにもならない事を分かっていながら続けるのは本当に辛い。

組織のせいにしがちなデザイナー

プロダクトの責任の一部を追っているデザイナーが、なぜ、やりたいように出来なくて組織のせいにしたくなるのか?

それは利害関係者が多いなどの原因でユーザーに影響を与える経営判断の決定プロセスに入れていないからである。

本質的にUXデザイン的なアプローチでアイデアを実行まで持って行きたければ、偉い人と話ができなければいけない。経営者の判断を覆すように進言できるくらい相手の言葉に合わせて説得するなどのスキルが必要になる。

そしてそのスキルをほとんどのデザイナーが有していない、そしてそのようなポジションにいないのが原因だと思う。

はっきり言いたい。
表面的にはUXが大事だという上司や経営者は信用できない。というか、UXデザインという言葉を連呼する人と仕事しない方がよい。だいたい最後はUXって儲かるの?とか言い始める。

どんな人に、何をどのように届けたいのか?というストーリーを語れる人の元で働く方がよっぽど幸せだ。

UXという言葉を連呼する人たちとは、自分が経営知識をつけて対等な議論ができるようなポジションに行かない限り、自分のやりたい仕事を実行に持っていくのは無理だ。

デザイナーが組織のせいにして無駄な時間を過ごし続けるのは本当に無駄な事だし時間がもったいないと思う。もし自分がそうだと気付いたらなら、今すぐUXデザイナー中心で構成されている会社に行くのが良いと思う。

自分の意志を捨てて作業者になるか、会社組織で折衷案の狭間で生きていくか、起業やアーティストととして独立するなどして経営者を目指すか、物言う投資家になるか、今のところはこのくらいの道しか思いつかない。

簡単には辞めれないなら、せめて仲間を見つけよう

作業者であっても、折衷案の達人であっても、少しくらいはやりたい事に向かっていると感じられて、幸せに仕事ができる方法がある。

ここ数年、死んだ魚の目をしながら仕事をしている私でも、1週間に一度くらいは息を吹き替えすことがある。それは同じ職種のチームメンバーや、UXデザインを学んだMBAホルダー、ユーザーと接しているカスタマーサポート、クリエイターに近いマーケターと、インターフェースにこだわるエンジニア、デザイナー贔屓のプロダクトマネージャーと話している時だ。

意思疎通ができそうな相手かどうかを確認する方法は一つ。WhoとWhatとWhyの前提条件をセットした上で、方法論や改善案をいくつか提案できるかどうか?がポイントだと思う。

簡単に言うと、非定型の考える仕事に対して、思考停止していないか?の確認だけすれば良い。〇〇部長が言ったから、これ以外無理、などという言葉を発する人とはなるべく距離を置いた方がよい。

ただし、ポジション上言わないといけない事もあるので、3度くらいやりとりして判断する必要はあると思うが、少なくとも先程のやり方で仲間を見つけておけば、組織の中で苦しんだとしても緩和される。

ユーザーの目的意識を合わせた上で、行動の話ができるかどうか?感情論ではなく、ロジックで話ができるか?を確認するのは簡単ではないが、執行権限のある人とこのような話ができるような立場であれば、少しは悩みが緩和されるし、難しい複雑な組織だったとしたも、まだもう少し頑張っても良いとはおもう。

組織にいると、どこかで壁にぶつかる。けれども理解者が周りにいるだけで、状況は少しずつ変わる。仲間に相談して、提案して一緒に問題解決できる方に光が見えれば今すぐ辞める必要はないと思う。

もし、仲間を見つけられないなら、昇進して権力をもつか、今すぐ転職をおすすめしたい。起業も視野いれてもいいし、個人事業主で仕事を請け負うのもありかもしれない。

と自分に言い聞かせて、これ以上は起きてられないので、今日は眠りにつこうと思う。でもユーザー気持ちを考えると寝れない事もあるのだけど…。

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