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サビカス以外にキャリアカウンセリングのナラティブアプローチが知られていないことが残念だ

 日本のキャリアコンサルティングの教科書だとシャイン(1928生)、クランボルツ(1928生)、シュロスバーグ(1929生)、ハンセン(1929生)、ブリッジズ(1933生)、ホール(1940生)の後に、いきなりナラティブアプローチのサビカス(1947生)が出てきますが、ちょっと唐突な印象があります。そしてその前後のナラティブアプローチを用いる理論家や技法があんまり出てこない。
 これは新しい理論家について日本での評価が定まっていないとか試験に出てこないとかいろいろな理由があるのだと思いますが、とても残念に思っています。

 例えばソシオダイナミック・カウンセリングのヴァンス・ピーヴィー(1929生)は①ライフロール(父とか夫とか大学教員とか)ごとのライフストーリーを聴取し、②それらのライフロールをそれぞれにかけているエネルギーの大きさでマッピングさせ、③人生物語の章立てをさせてその章に名前をつけさせ、④クライエントの特徴や長所を明確化し、⑤ライフスペースマッピング(現状の人生のマッピング)を行わせます。スーパーのキャリア理論を意識しているようにも見えます。

 例えばノーマン・ガイスバーズ(1932生)はこれまで好きだった職業・教育・余暇などを聴取するライフキャリアアセスメント(LCA)を行い、他にもキャリアジェノグラムやカードソート、標準化されたテストなどを使います(ナラティブアプローチだけでない「折衷派」ですね)。
 キャリアカウンセリングのナラティブアプローチを名乗るラリー・コクラン(1944生)は、人生を上下行する曲線で描かせるライフラインを使い、人生物語を章立てして章に名前をつけさせ(ピーヴィーと同一の手法)、成功体験をリスト化させ、家族の特徴と自分との違いを明確化し(ガイスバーズのキャリアジェノグラムに類似)、ロールモデルを問い、早期記憶を聴取します。

 ノーマン・アムンドソン(1948生)は興味、価値、スキル、性格を聞き、さらに重要な他者、教育的背景、仕事や余暇の経験、労働市場でどう振る舞ってきたかを聞きます。
 皆さんそれぞれ類似した質問やワークを使いながら、自分なりにクライエントをつかめる方法を試行錯誤しているわけです。
 他にもサビカス以降の若い?世代ではマクマホンとパットンがキャリア理論にシステム理論を導入し、紙の真ん中に書いた「私」に影響を与えた人や社会、環境を書き出させます。プライアーとブライトはカオス理論をキャリア理論に応用し、マインドマップ、カードソートなどを活用します。バーネットとエヴァンスはデザイン思考をキャリア理論に応用し、行動記録から人生のコンパスを見つけ、マインドマップ、冒険プラン、ライフデザインインタビューなどの技法を用いています。

 「未来の一日」「授賞式」「私の墓標」など未来を具体的にイメージさせる技法もあります。ツリー・オブ・ライフのように自分の背景(地面)と自分自身のこれまでの成長(木の幹)、成果(木の葉や実)を連続的に書かせるものもあります。日本でも「人生すごろく 金の糸」とかありますし、カードソートも今は複数種のものが出ていますね。
 いろいろな技法があるのに、使われていないのはもったいないことです。また、たぶん現場では何だかんだ言って結構使われているのだと思いますが、その効果や課題について情報共有・意見交換されないのはもったいないと思っています。

 

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