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うまく説明できないけど、ただ好きなんだ

このしばらく、バッハのモテット「Jesu, meine Freude」を練習している。代表的なドイツ・コラールであり、作曲はヨハン・ゼバスティアン・バッハ、いわゆる「大バッハ」「音楽の父」と呼ばれるバッハの曲である。曲番号はモテットBWV227。

「Jesu, meine Freude」は、日本語訳をすると「イエス、わが喜び」(Wikipediaより)。歌詞はキリストへの強烈な愛を語っている。作詞者の個人的な色合いも強いらしく、ルター派の教会では歌うことが阻まれることもあったらしい。

歌詞の内容やモテットの構成にはあまり詳しくないので、ここで書き散らすとボロが出そう。控えます。

このモテットは全部で11曲の構成。11曲の中で、わたしが一番好きな曲は8番「So aber Christus in euch ist」だ。この曲はアルト、テノール、バスの3パートが歌う。わたしはソプラノであり、歌う出番はない。けれど、この曲が強烈に好きなのだ!

歌詞はドイツ語、わたしにはすっと意味の入ってくる言語ではない。歌のために歌詞を読むことで精一杯。発音も自信がない。なので、この8番が好きになった理由は曲の内容というより、メロディーラインや和音の構成、流れ。簡単に言ってしまえば、聴いた感じが好き!ってこと。

このモテットは有名なので、YouTube検索すれば山ほど動画が出てくる。いろいろ聴き比べていると、なんとおもしろいのだろう。同じ曲を歌っていると思えない、とは言葉が過ぎるが、個性が表れている。曲の解釈の違い、歌詞に込める思いの強さの違い、技術面の違い、アルトを女性・男性どちらが歌っているかの違い、などなど。

これは比較的若いひとたち(?)が歌っていて、個人的にわたしたちのいまの練習の感じと、技術的な差はあれど、似ている。8分の12拍子のまるくたゆたう感じと、アルトの女性的なやさしさ。中間部に差し掛かるとアルトとテノールが16分音符で細やかな動きをするのだが、躍動的過ぎずあくまでやわらかい印象を保ったまま進めているように聴こえる。
最後の3度の和音が好き。

(12分12秒ごろから)
これはアルトを男性が歌っている。作曲された時代であればこのように男性が演奏することが多かったのだろう。澄みきっていてきれいだけれど、やはり女性の声とは違う。

そして、こちら…!

(11分56秒ごろから)
このアルトを見て! なんて感情豊かというか、もう最初に見つけたときから釘付けになった。このアルトに。歌っているというより、音楽をつかって歌詞を全身で表現している感じ。バッハが乗り移っているんじゃないだろうか(褒めてる)。そして、テノールとの対比。このテノールは口を開けなくても口腔内を広く開けられる歌い方をしているのかな。身体も必要以上に揺らさない、動かさない。
曲の作り方も、最初からとても躍動感があるように感じる。テンポはあまり変わらないはずなのに。ちなみに、タイトルの和訳は「もしキリストがあなたがたのうちにおられるなら、からだは罪のゆえに死んでいても、霊が、義のゆえに生きています」。
次の曲、9番もソプラノⅠ、Ⅱ、テノールの三人との対比が顕著で、ほれぼれと聴き続けてしまう。この力強さの中に女性的なやさしさが垣間見れるアルト、本当に好き。生で聴く機会ないかなあ。

聴いているとアルトパートが歌いたくなってくる。自分のパートもそこそこに、このアルトばりに感情移入して自宅で練習したり。

何のオチもなく、ただ「好き! 聴いて!」の紹介記事でした。ごきげんよう。


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