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詩:旋律の先

わたしが駅前の雑踏でまぎれ込むように
その音楽も無数の音のなかにまぎれている
耳を触っていくその旋律は
ちぎれたビーズのブレスレットみたいに
少しばかりの輝きをたたえながらぱらりぱらりと散らばっている
転がりゆくビーズの行く先を目で追うように
わたしの耳はその旋律をたどる
ひとつずつ糸に通して連ねるように
しかしそれはもう元の輝きを失っている

奏でられる旋律は屈折した美しさを放ち
異国を思わせながらも深い郷愁を呼び起こさせる
彼女の顔
瞳の色
ページをめくる指先
細い記憶の溝を通って細部が眼前に現れる

すべては闇に戻るの
と彼女は言う
私たちはどうして行き交えないのだろう
そのもどかしさに似た気持ちを抱きながら
旋律を眺める
そこに輝きを見出そうといつまでもいつまでも飽き足らずに眺める
やがて糸はちぎれて
ぱらりぱらりと
途方もなく遠くまで転がっていくのだった

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