逆算思考でつくるSaaS事業の手引き
これはTOWN Advent Calendar 2022の23日目のエントリーになります。
こんにちは、TOWN の別府です。
メリークリスマス!(はやっ)
アドベントカレンダーも終盤に差し掛かり、改めて皆さんの記事を読み返してみたのですが、みんな文才があって素晴らしいですね!
是非他の記事も読んでみてください(この記事読んでからね)。
はじめに
さっそく本題に入っていきます。
TOWNのバリューに「逆算思考」というものがあるのですが、この逆算思考の実践編が今回のテーマ。
SaaS 事業をつくりあげる過程において、逆算思考がどのように作用していくか掘り下げてみたいと思います。各所に散りばめられていますので、逆算思考が苦手と感じている方の一助になれば嬉しいです。
逆算思考とは?
最初にゴールを設定し、そのゴールから逆算して計画を練る、といった思考方法です。今を基準に行動に移す「積み上げ思考」と比べ、高いパフォーマンスを発揮しやすいのが特徴です。
詳しくは以下の書籍で解説されていますので気になる方はチェックしてみてください。
それでは逆算思考祭りスタート!
経営計画
まずはこれ。会社の将来像が「ビジョン」でそれを定量化し具体的に定めたものが「ゴール」です。会社のあるべき姿を、5年後の姿 → 3年後の姿 → 1年後の姿、のように未来から逆算して明確にしていきます。ゴールについては、企業価値 → 時価総額 + 有利子負債 → ・・ のように企業価値を因数分解したものから設定すると良いと思います。
注意点、逆算思考が上手くいかない場合、インプットが不足している可能性があります。はじめに内部環境、外部環境の両側面から、自社の環境分析をしっかり行なっておく必要があります。
事業計画
会社のゴールを元に、事業の「ビジョン」と「ゴール」を定めていきます。このゴール設定を基準に戦略や計画を策定していくのが、逆算思考と積み上げ思考の大きな違いです。
市場における事業のポジショニングが戦略策定の軸になってきます。つまりゴール地点の STP から逆算すると思考が纏まりやすいと思います。
成長性と確実性
ここで1つ重要なポイントがあるのですが、それは計画の「確実性」、すなわちその計画は本当に実現できるのか?確からしさを担保する必要があります。ゴールを設定して逆算思考で計画をたてる事により、事業の「成長性」は指し示すことができると思いますが、「確実性」がなければ未達になってしまう恐れがあります。
一方で、事業収益は様々な変数が入り組んでがつくられていくのですが、SaaS 事業の場合、The Model のように収益モデルの「型」があり、また、ストック型のビジネスモデルで収益予測しやすい事から、論理的に矛盾のない計画を立てやすいです。このメリットはしっかり乗っかっていきましょう。
そこで登場するのがKPIロジックツリーというツール。KPIロジックツリーを上手に活用することにより、逆算思考でも「確実性」を維持した実行計画をたてる事ができるようになります。
KPIロジックツリー
ここではゴールを売上で設定した例として、KPIロジックツリーを売上から因数分解してを作成していきます。SaaS 事業の場合、上位のロジックは大体↓のようになるではないでしょうか。後は事業に合わせて細分化していきます。
また、SaaS 事業の場合、先行投資から未来の利益をつくりやすいので、PL に落とし込む際には、以下のように経常利益から逆算したロジックを意識する事も重要です。
ロジックツリーができたら時間軸への落とし込み、ゴールとその期限から逆算して各KPIの数値を埋めていきます。いつまでにどの水準までKPIが到達しなければならないのか明確にして、全体の計画に無理がないか点検していきます。
・TAM / SAM / SOM に対して無理のない目標になっているか
・先人のモデルケースに対して逸脱してないか
・これまでの実績に対して成長速度は健全か
・ユニットエコノミクスは健全か
・など
積み上げ思考は良くない?
ここまで散々逆算思考の話をしてきたのですが、積み上げ思考もケースバイケースで取り入れても良いと思います。私の場合は、短期計画の精度を上げるために活用する事があります。各施策において、今度は積み上げ型で数値を組み上げていきます。例えば、「料金プランの改定」という施策であれば、ARPA だけでなく成約率や一過性の解約などの影響を分析し、最終的には LTV や MRR がどのように推移するのか把握できるようにします。次に、トップダウン(逆算思考)とボトムアップ(積み上げ思考)の数値推移のギャップを埋めるべく、計画を改善していきます。新しい施策を盛り込んだり、強めの先行投資を行うなど、試行錯誤を繰り返し計画の精度を上げていきましょう。
ロードマップ
SaaS 事業においては、プロダクト自体の進化も成長の鍵を握っていますが、ロードマップを策定する際にも逆算思考が非常に大切になってきます。積み上げ思考でロードマップを策定すると、目の前にある開発リソース、スキルから「今できる事」にフォーカスしがちです。その結果、顧客が真に求める課題の解決が先送りになったり、一貫性のない積み重ねによりプロダクトが複雑化してしまう恐れがあります。
また、ロードマップを実現するために、いつまでにどのくらいの規模の開発体制が必要になるのか、採用やオンボーディングの期間も踏まえて逆算して定義していく必要があります。
予実管理
KPI が期待通り進捗しなかった場合に、日々のふりかえりで戦略や戦術のどこに問題があるか速やかに分析し、アップデートしていく事が大切です。そのために、ゴールから行動目標までのすべてのロジックを可視化し予実管理を徹底します。SaaS 事業の場合、集計すべきメトリクスが多いので、記入だけで多くの時間をとられてしまう可能性があります。BI ツールなどを駆使して、極力自動集計するようにしていきましょう。
行動目標
1日の行動目標が定められている場合、1日のうちに完遂するように、逆算して時間配分していきます。自ずと重要な仕事にフォーカスできるようになっていきます。
まとめ
逆算思考のポイントを纏めると以下のような感じでしょうか。
また、会社のゴールから1日の行動目標までの流れ、実は逆算思考でロジックが繋がっている事気づきましたでしょうか?
このように1日の行動が会社のゴールにどのように寄与していくのかイメージできるようになったら、日々のパフォーマンスも向上しやすいと思います。
ぜひ、ご自身の目標と照らし合わせてチェックしてみてください。
これで逆算思考マスターですね!