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キルギス雑記〜ノールーズ〜

くっとぅくたいむめねん・のーるーず・まいらむ

今日は、ノールーズ・マイランですね。
イスラム教の新年で、本格イスラムでは絶対にないキルギスでも、年間を通して一番大きなお祭りです。
各家庭で羊をソイするので、羊の大量虐殺日でもあります。

なぜ、羊がこの日に大量に殺されることになったのか?!
それは、イスラム経典の中にこんな話があるからです。

(羊の話)
昔、神に生贄を差し出していた時代のこと
ある、男の子がこの生贄に決まった
この男の子は父親と2人で慎ましく生活していた
そして、父は敬虔なイスラム教徒だった
もちろん、息子を生贄に出すのは心が痛い
しかし、神への生贄である
当日の朝、父は広場に息子を連れて行き
息子の首を切り落とすため、斧を振り上げた
そして……
目をつぶって振り下ろした
確かな手ごたえがあった
うっすらと目を開けると、息子のいた場所に羊が倒れていた
息子は無事だった
敬虔な子の父親のために
神の御慈悲で、息子は助けられた

この出来事から先、息子を救ったとされる羊は大切にされ、生贄には羊が供されるようになったそうです。
そんなわけで、現代では各家庭で羊を供するので、毎年この日には大量の羊が虐殺され続けているわけです。
人の命を救ったのに、可哀そうなヒツジ……

それから、この日には“スムリョック”という溶かしたキャラメルくらいの硬さと色の決して美味しくはない“何か”を食します。

(スムリョックの話)
昔、母ひとりが支える貧しい家庭があった
ノールーズの3日前、ついに食べ物が底を尽きた
母は、お腹を空かせた子どもたちのために何か食べさせてあげたかったが
家にはもう本当に何もなかった
母は、外を歩き、道端の草や何かの実を拾い集め
水を汲んできて庭の大なべにかけた
何とか食べられるものになるように
拾ったものを一ずつ鍋に入れながら
願った
子どもたちに、お腹いっぱい食べさせたい
「石を入れると嵩増しになるのではないか?」
石も鍋に入れた
そして、3日3晩混ぜ続けると
茶色いドロドロした何かが出来上がった
一口食べてみると、これが甘くておいしい
お腹も膨れる
ノールーズのその日、できあがったこれを
母は子どもたちに食べさせることができた
これも、神からのプレゼントである

私は、任国キルギスや任国外のウズベク旅行中にこの“スムリョック”を食べさせてもらいました。
今では、いろいろな作り方や材料があるようで、家庭によってその味は様々です。
だいたい12時間以上は混ぜ続けなければならないそうで(そして、どれもそんなに美味しいものではないので)本当に年に1回、ノールーズにしか作りません。
ちなみに、混ぜるときに願をかけるといいと言われているので一度混ぜてみたかったのですが(ウズベクでは大学のイベントに1日間に合わなかった)
「作ってるところを見たい!」
と言っていた私の話を覚えていてくれたキルギスの村の先生が混ぜさせてくれたのは良い思い出です。

ちなみに、殻を割る前の胡桃が入っていました。
石は42個?入っているそうです。
底に沈んでて見えなかったけど。
※ 石はどんなに煮ても食べれるようになりません。

今年も、みんなの願いがかないますように♪♪

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