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転落の始まり。終わりの始まり。

通帳に残高5000000。嬉しかった。
だけどクレカの返済が120万あったので
まず、それを綺麗にしようと思った。
残りは380万。まだ大丈夫。
この時の自分に言ってやりたい。
今すぐその金で引っ越せと。まともなマンションに引っ越せと。
でも、もちろんそんな事思いつくはずもなく
飲み食いと彼女と旅行に消えた。
あっと言う間だった。
当時、傷病保険が月16万もらえていたのだから
それで生活すれば良かったのに。
今だったらアフィリエイトでも何でもやって
増やしていただろうに。
ただ、ただ、浪費して終わった。
どうしようもない愚か者だった。
会社も辞めて退職金40万もらったが、それも
どこかへ消えた。飲み食いかいらないものを
購入したのだろう。バカだ。
そして金が足りなくなり、生活もできなくなり
再びクレカのキャッシングに手を出した。
5万、10万と借金が増えていく。
医者からもう働けると診断され、職探しを
するものの、自分にできそうなもの、楽そうなものばかり探していたので、仕事が見つかる事はなかった。
かろうじて見つかったバイトも長く続かない。
出会い系サイトのサクラ、印刷会社の校正、派遣のデータ入力、ギャル男系メンズ服のネットショップ、テレビ番組の制作スタッフ。その頃クラブイベントで映像を流す仕事もポツポツやっていたが、ギャラは小遣い程度でとても生活できなかった。
いよいよクレカのキャッシングも限度額に達し、1円も引き出せなくなった。今思えば、無職無収入の人間に、何故100万のキャッシング枠を与えたのか。地獄への招待状である。
そして、頻繁に母親への金の無心の電話をする様になる。一万でいいから、一万でいいからと、何度も。
父親の建設会社もとっくに倒産し、兄の収入に頼っている状況で金をせびり、その兄がリストラで工場をクビになった後も、兄の退職金を食い潰していたのである。
今こうして綴りながら、こいつ死ね、と思う。お前のせいで家族が苦しんでるんだよ。早く消えろ、と思う。
極めつけは、父からの電話で、母が消費者金融に行って金を借りようとしていた事だ。自分を助けたいがお金がなく、どうしようもなく、消費者金融へ行ったと。結果断られたそうだ。
母親がみすぼらしい袋で消費者金融のカウンターに座っている姿が浮かび、号泣した。泣いて泣いて泣いた。申し訳なくて、情けなくて。
ここで心を入れ替えて、生きる為にどんな仕事でもやる!わけではなく、性根が腐っているので相変わらず自分にできそうな仕事しか探さなかった。野垂れ死ねば良かったのに、ギリギリの所で仕事が見つかった。メンズファッションのネットショップスタッフである。
もう、この時には自己破産しようと決めていた。
連日の督促電話に疲れていたのだ。自業自得だが。この頃は「自己破産で人生リセット!」の様な、自己破産おすすめ⭐︎みたいな肯定的なCMや広告がタレ流されており、父の会社倒産で母が自己破産していたから相談していたのだ。
母親の勧めもあり、広告で見た法律事務所に破産手続きの依頼をしていた。
当時付き合っていた彼女には、コツコツ毎月返済する様に口酸っぱく言われていたが、耳が腐っていたので聞こえなかった。やがて地方裁判所へ出向き、簡単な質疑応答を経て、晴れて自己破産が成立した。借金額は120万。たった120万の為に。目の前の苦しみから逃れたい為に。楽な方を選び続けた末路が自己破産だった。
結局、彼女には自分から別れを告げた。
これからは一人で生きて行こう。破産する様な後ろ暗い人間は、一人で生きて、一人で死のう。結婚や、子を残す事もせず、ただ生きて、死のう。そう思った。
今思うと、自ら命を絶たなくて良かったと思う。いや、死ぬ程の根性など持ち合わせていなかったが。でも、生きてたからこうして、自分の恥ずべき過去を綴っているのだから。

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